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夫が死んだらどうやって生きよう? / 映画「ノマドランド」

夫が死んで1人になったら、私はどうやって生きていくのだろうか?


映画「ノマドランド」を見た後、私はしみじみと「老後の30年の生き方」を妄想していた。



企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。(公式サイトSTORYより)


ロードムービーのような「ノマドランド」は、アメリカの砂漠などを舞台にした、実話を元にした映画。

驚きなのが、メインキャスト2名以外は全て実際の車上生活者であり、本人が本人役としてそのまま出演していることだ。

調べると、かしこまった台本やセリフは少なく、車上生活そのものをそのまま写し、本人の思いや実際の出来事をそのままセリフとして話しているという。


経済不況により家をなくした多くの高齢者たちが、車上生活(ノマド)という生き方を選択せざるを得なかった2000年代後半から今まで。

主たる登場人物は60代、70代で、みなヴァンやキャンピングカーで季節労働をしながら、アメリカ各地を旅するように暮らしている。

広大な自然、マジックアワーや朝焼けの美しさの中で、人々の息遣いがそのまま感じられる映像がただただ美しい。


砂漠でのノマド向けイベントがあったり、ノマド同士でまた違うエリアで出会ったり、家に家族がいたりなどで、映画の中では「全くの孤独」というよりは、どこかに少しだけ拠り所がある、そんな人たちの話だった。(それらも実話に基づいている)

そんな中、月日が経つにつれて車上生活で夢を叶えながらそのまま亡くなる人もいたり、家族の元に戻って車上とは違う幸せを見つける者もいたり、家族はいるけれど車での生活をずっと続けている者もいたりと少しずつ変化が起きてくる。


人との出会いや別れを何度も繰り返しながら「生き方の選択」を自らしていく人々。

定年退職して、温かい家があり、庭があり、孫やペットがいて、クリスマスやお誕生日を家族で祝う・・・

それが本当に自分の求める「生き方」なのだろうか?と、見てる側にも突きつけられる。


60代。

あと20年後はもしかしたらあっという間かもしれない。

そのとき私は、どんなふうに働いているのだろう?

周りには誰がいるのだろうか?

何を感じて、何を信じて、何を大切にしているのだろうか?


私には子供がいない。

夫が死んだらこの家は私だけだなあと思うと、ふと、もっとコンパクトに、最低限の荷物だけで旅するように生きるという選択もあるのだなあと思った。


しかし主人公に対して家族が伝えた「誰もがみんなお前みたいに軽やかに生きれるわけではないのだ」という言葉に対して彼女は「軽やかなわけがない」という言い方をしていたのがとても印象的だった。

ノマドは気楽で自由で軽やかな生活では決してない。

明日の仕事があるのか、ガソリンや食料はきちんと手に入るのか、車が壊れたらどうするのか、トイレや食事も全部同じ空間で、冬は極寒で夏は酷暑、快適とは言い難い環境で生きていく、それがノマド。

それでも孤独を愛し、自然を愛し、家族とは違った人との交流を愛して、自分の力で生きていくことを選ぶ。

車上生活は「常識との決別、自分への決意」なんだなあと思った。


自分はノマドになれるか?というと想像がつかないけれど・・・。

「普通の幸せ」を疑問視して、常識に囚われず、自分だけが信じる生き方を見つけたいな。


この生き方が好きなのは、最後の「さよなら」がないんだ。
いつだって「また路上で会おう」と。(登場人物ボブの言葉)


ちなみに一緒に見た夫に「君が死んだら私も車上生活してみようかな」と軽率に言ってみたら、「カナコ氏は大丈夫!絶対に楽しく暮らせる!ちょっとお金に余裕のある人とかと再婚して楽しく暮らしてよ!僕はカナコ氏が死んだら多分死ぬけど・・・」と言っていた。

私が死んだら死ぬんや・・・!

まあ、いいか、また考えよう、2人で、ゆっくりと。


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