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kanaecogo / yorunokoe ばらばらの人格もぜんぶわたしってことで (名前変更 190421→210222→231222)

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マガジン

  • 週週

    日記の一部(たいていは一週間分)を取り出して公開してみる試み

  • 日日

    とりとめもない文章。「自分」の話ではあるけれど、「わたし」の話ではないような。(記事のタイトルは全て仮のものです)

  • メキシコ感情録

    メキシコでの感情の記録。 3年に1度くらい更新できるといいな。

  • アメリカ生活録

    アメリカ滞在の記録(レコード)。

  • ベルリン生活記

    ベルリン生活での思考、感情、景色、ほか、の記録。

最近の記事

ヨキ

それは、まるでわたしの身体を宙に浮かせて、わたしの体重をゼロにして、止まっているのに動いているような気分にさせた。 それは、湖の上をすべるように進んだ。湖面を見つめていたわたしたちは最初、空の色が反射しているのだと思った。けれども白い靄のようなものが水の表面ではなく空中に、立体的に発生している。湖から湯気が上がっているみたいだと感じ、しかし、すぐに鼻先を赤くしている空気の冷たさを思い出して雲と言い換え、しかし、それが上空にないことから霧と言い換えて落ち着いた。 それを、太

    • やさしさ

      今月から読みはじめた本がある。永井玲衣さんの二冊目の著書『世界の適切な保存』を、一日一題読み進めている。昨日(11月8日)は9つめ(エッセイの項目を数える単位は存在するだろうか)の「間違える」という題。 彼女の人のことばに触れるたび、わたしが何を考えて何を思い、それがどんなことばで話され、どのようにかして伝えられるよう努力され、結果としてどのように伝わっても(伝わらなくても)、大丈夫であると思える。誰かに分られなくても、自分さえ分からなくても、そのときわたしがそうであったと

      • 三十歳、月読み(三)

        2月18日(月)  起きたかった時間よりも30分くらい遅れて目を覚ました。朝7:30、stand.fm で哲学をするということについて話した。「哲学」という言葉を見たり聞いたりするたび——たとえば長く付き合いのある友人が大学で哲学科と呼ばれるところに在籍していたことを思い出したり、電車の中吊りに「哲学」の文字を見つけたりするたび——わたしは、恐らくはほとんどの人と同じように、まず「てつがく、」と思って、あるいは声に洩れ出て、つぎに「それって...」と何かを問おうとして何も訊

        • 三十歳、月読み(二)

          2月12日(月)  宣言通りにstand.fmにて収録。1月8日ごろから読んでいる本『水中の哲学者たち』(永井玲衣著)をフックに、最近の気づきを話す。どんなことばを用いて話したのかまるで覚えていないが、「どんな問いからも哲学が始まりうる」ということ、「『他者』とは『他者』のままでいたいと思っている」ということ、「相手と自分の関係性を考慮せずにただ“問う”ことを可能にする“哲学をする”という行為が自分にとてもフィットしている」ということなどを話した。  その後、慌ただしく準備

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          2本
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          7本

        記事

          中国杭州 - 文字を歩く

          2024年3月1日から3月4日、「ニーハオ」と「シエシエ」の中国語知識だけで杭州 (こうしゅう、Hangzhou) を訪れた。上海のおとなり。気温は東京よりもややあったかめ。 渡航の大きな目的は①友人訪問と②「西湖」という大きな湖の周辺を歩くこと。しかしながら、合間の街歩きが想像よりもずっと楽しく感ぜられ、その楽しさの理由が文字——店の看板やロゴ、交通案内など——にあると分かったので、記憶が新鮮なうちにまとめておきたい(何年後か、何十年後かに中国語を話す自分がこれを見たら、

          中国杭州 - 文字を歩く

          三十歳、月読み(一)

          2月5日(月)  朝、起きる直前まで見ていた夢にザ・ルーズドックスのメンバー4人が出てきた。吹奏楽のコンサート会場になりそうなホールで、ケンジさんが私を認識してこちらに近づいてくる。宏樹さんは私の隣のシートにかけていて、右斜め後ろを振り返ると一平さんもいる。ふわりと時間が経過して彼らはステージに。いつもの上手(かみて)にリーダーの姿もみつけた。夢なので都合がいい、と夢のなかで思った。演奏中に一平さんと目があって微笑まれ、手で合図をされる。キネマ倶楽部でのそのときのように。あ

          三十歳、月読み(一)

          飛行記 - 窓の外

          わたしを乗せた飛行機がハネダを出発した。東京湾の水面や埋立地に落ちた飛行機の影が、そのかたちを怪しむようになぞっている。 ナリタが畑のパッチワークなら、ハネダはコンテナレゴの縮尺模型だなと思う。 この眼下の景色を初めて見るような気がしている。ナリタを使うことが多かったからか、ハネダを使うときは西ばかり目指していたからか、あるいは窓際の席に座るチャンスがなかったのか、思い出せない。海と陸地の直線的な境界を目で追っていると、前方から「ディズニーランドがあるね」と聞こえて、驚い

          飛行記 - 窓の外

          弾奏L

          雨樋のない軒先からぽたり、ぽたりと、雨粒が落ち続けるのを見つめている。こたつの中から見つめている。空は一面ライトグレーの雲に覆われて、拡散した光が居間を十分に明るくした。軒先に視線を戻す。屋根に当たった雨が流れてきているというよりも、屋根のふちでしずくが自動的に生成されているように思われた。 わたしの居るところからは雨の線が見えなかった。また視力が落ちたかなと思う。代わりに、屋根裏に反響する雨音に耳をそばだてて、まだ止んでいないのをしっとりと確かめる。かさぶたができた時の、

          暮色O

          2色のガーベラを両手で抱えて帰路につく。空が花びらと同じ色に染まってきていて、わたしの頬もあなたから見ればそうだったかもしれない。風が冷たいのに顔が火照っているのを感じた。手に力を入れすぎないようにして、しずかに、素直に、微動だにしない3本の花の束を握る。ときどき覗き込んでみる。薄くて白い、これといった飾り気のない包装紙が太陽の光を透かして、花びらの色を一層濃くしている。自分の顔の、目尻が下がり、口角が上がっているのを感じる。空気を鼻から吸って香りに近づこうとしても、鼻腔がキ

          メキシコ感情録

          2023年7月1日から7月7日、6泊7日でメキシコシティに滞在した。渡航の2週間前に不注意でNikonのカメラをこわしてしまい、iPhoneの撮影機能のみで過ごすことに。すでに忘れてしまっていることも多くあるけれど、今覚えていることをいつかも思い出せるように残してみる。 0日目 ・空港にて(両親と):「うれしい」 両親が空港まで見送りに来てくれた。外国への長めの滞在はこれで3度目だけれど、毎回搭乗ゲートまで来てくれる。うれしい。いつものようにハグをした(今回初めて父からハ

          メキシコ感情録

          2022年を終える

          4年目になる “年記” を今年は古民家の掘りごたつの中で書き始めた。 新しい場所で今年を終え、次の年を迎えにいく。現在、大晦日の14:19。 ※本投稿における「今年」とは「2022年」のことです。 月ごとのハイライト1月グループ展出展。アメリカ(ニュージャージー)へ 2月|Billy Joel を見る 3月|Billy Joel が見る(私を) 4月|帰国。ワーホリを断念する 5月|国内で移動生活を始める 6月|都内を中心に回る 7月|帰省。ライブ出演。移動生活を継続して

          2022年を終える

          焦点S

          駅を出ると、ひとけのないロータリーがあった。 数分前に見た地図を頭のなかで復元して北西に進む。 粗いコンクリートの上でスーツケースががらがらと音を立てる。 「湯」と書かれた建物を過ぎ、曲がり角でもう一度地図を確認する。 白や薄鼠や灰鼠といった静かなトーンの家が続く。 バックパックは重くなったような気がする。 日除けがないのが惜しい暑さだったが、あと2分も歩けば今回の滞在先に到着することになっていた。 ただ足を進めた。 どこからか音楽が聞こえてきた。 駅の反対側に見

          記録(3/20 - 3/30)

          心を開く 入り浸っている楽器屋に、Clay (クレイ) という寡黙な男性がいる。ゆるめのシャツかトレーナーに履き慣れたジーパンという出立ちで、くるりとカールした白髪混じりの髪がいつも黒い太縁の眼鏡にかかっている。 その楽器屋には、Clayとは別にオーナーがいるらしかったが、Clayは店長のような立ち位置でお店をまわしているように見えた。客と話し、客の欲しているものを提示し、電話が鳴れば出て、客がいないときはギターを弾いていた。クランチのかかった赤いストラトを優雅に弾いていた

          記録(3/20 - 3/30)

          記録(3/18 - 3/19)

          このところ、〈ご褒美〉と称していろいろなものを自分に与えている気がする。コーヒー、チョコレート、アート、コンサートなどがそれにあたる。 今回は、ライブチケットとホテルを与えてニュージャージー州のレッドバンク (Red Bank) という港町を訪れたことを書きたい。 でも、一番残しておきたいことを先に全部書いてしまおう。 ビリー・ジョエルのライブをもう一度見るために、レッドバンクのコンサートホールを訪れた。200人規模の会場で、彼は私と目を合わせ、ハイタッチをし、最終的にはツ

          記録(3/18 - 3/19)

          記録(3/5 - 3/17)

          今はすでに3月24日になってしまっていて、日本行きのフライトまでちょうど1週間となった。この期間の記録をスキップすることも考えたけれど、現時点で覚えていることだけが残るのも面白いかもしれないと思えたので、キーボードの上に指を滑らせてみている。 完全数の年になった完全数の年になった。人類に可能な完全数の年はおそらく2度だけだと思うが、その2度目のほうを迎えた。うれしい。 外国で誕生日を迎えるのは初めてではかった。 大学の友人と2人で卒業旅行としてイタリアを訪れた際、チンクエ

          記録(3/5 - 3/17)

          記録(2/21 - 3/4)

          (Picture: Georges-Pierre SeuratPort-en-Bessin, Entrance to the Harbor)  2月が短い。深呼吸をしようと思い立つまでに2週間、肺の中を空っぽにするために息を吐き続けて1週間、そこから息の止まるような忙しさで1週間を過ごし、いよいよ息を深く吸い始めようとしたところで、2月が終わった。 ブルース・ジャム・バーへ友人に連れられ、ブルース・ジャムが見られるというバーに行った。 待ち合わせ場所から地下鉄に滑り込んで

          記録(2/21 - 3/4)