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雨樋のない軒先からぽたり、ぽたりと、雨粒が落ち続けるのを見つめている。こたつの中から見つ…
2色のガーベラを両手で抱えて帰路につく。空が花びらと同じ色に染まってきていて、わたしの頬…
駅を出ると、ひとけのないロータリーがあった。 数分前に見た地図を頭のなかで復元して北西に…
耳鳴りがするとき、自分に耳がついていたことを思い出す。 右耳には高音の、ソプラノリコーダ…
久しぶりに外出した日、久しぶりに雨が降った。紺色の地にペールトーンの長方形が印刷された傘…
私はアーム。主人(あるじ)の右腕的存在。ある日、主人が怪我をした。「このほうが体重が乗る…
指について書きたくなった。 私の指はその10本で多くの仕事をする。 朝、けたたましく鳴る携帯のアラームを止める。3つしかないいずれかのボタンを押せばいい。スヌーズ機能もオフにする。この時は画面を操作しなければならない。 カーテンを開ける。寝巻きを脱ぐ。シャツを着る時は右手から、ズボンを履く時は左から。ボタンはやっぱり左側にあるといい。めがねのブリッジをつまむ。洗面台の脇に置く。髪をとかす。束ねる。冷たい水を迎え入れて顔を洗う。10本全ての指をぴたりとくっつける。もっとも