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退職は逃げではない。

~正社員を辞める~

2019年、12月。

心が限界を感じていた。

処方に基づいて薬を調剤し、飲み合わせや投与量など確認した上で患者さんへ間違いのないように渡す

これが一般的な薬剤師の仕事のひとつだが、私はそんなことよりもひとりひとりと向き合い、コミュニケーションを取り、減薬サポートや健康相談で役立てることがなにより嬉しかった。

しかし薬局で”薬剤師”という立場で仕事をしている以上、”医師”の治療を妨げる行為や言動は許されない。

減薬サポートは少なからず治療の妨げに繋がってしまう。

そんな私の仕事スタイルをよく思わない上司から、あからさまな嫌がらせも受けるようになっていた。

他の上司に相談するも「一応年上だからね、言うことは聞かないとだめだよ」の一言。

このとき私の頭にとっさに浮かんだのは

年上だから言うことを聞く???????え??アホらしいわ。

これ以上ここで仕事をしていたら自分がおかしくなる。自分の居場所はここじゃない。

それまで見て見ぬふりをして蓋をしていた心の奥底で感じていたいくつもの違和感が、ボコボコと音を立て溢れてきているのが分かった。

そしてついに・・・その日はやって来た。

いつも通り出勤の準備をしていたら、口から心臓が飛び出てきそうなほどの動悸(胸のドキドキ)が。

身につけていたfitbitを見ると、心拍数190を示していた。(健康な成人の平常時の心拍数は60~100/分)

あ、もう辞めよ。

この日、上司に年内いっぱいで退職することを伝え、退職した。

~正社員から派遣へ~

2020年、1月。

これまで頑張った自分にご褒美をあげたかった。

やっぱり温泉かな!と、ちょっと奮発して個室露天風呂付きの温泉宿をチョイス。

いつ行こうかなぁ~と考え、世間が仕事始めの1/6から1泊することにした。

そう、私は社会と逆行しがち(したがる)な人間なのだ。

憂鬱そうな表情をしながら出勤するサラリーマンたちを横目に、ワクワクしながら電車に乗り、揺られること数時間。

雪積もる町並みを見ながら、ようやく宿に到着。

チェックインを済ませ、足早に部屋へ向かい、待ちに待った個室露天風呂へ…

「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!!!!!!!!」

身体の奥底に溜まっていたそれまでのストレスや疲れと、雪積もる寒さの中で浸かる温かい温泉の気持ちよさが交じった、大きなため息だった。

「さぁ、これからどうしようかな~他の薬局に転職してもまた同じことの繰り返しだもんな~正社員も向いてないしな~」

温泉に浸かりながら、ぼんやりと考える…

そうだ!海外行こう!!

行きたい国がたくさんあった。

マルタ島・カナダ・ニュージーランド・ウィーン・プラハetc…挙げ始めるとキリがない。

28歳、ワーホリビザもギリギリ使える!ラストチャンス!行くしかない!!お金貯めよう!

ここから私は、海外渡航のお金を貯めるため、正社員ではなく派遣薬剤師として新たな生活をスタートさせた。

この1ヶ月後、人生を一変させるコロナウイルスが登場するなどつゆ知らずに…

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