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冬の「名曲」

子どもの頃、この季節になると必ず「恋人がサンタクロース」がどこかしらでかかっていて、勿論当時から超・名曲、母が上機嫌で口ずさんでいた。

あれからいくつ冬がめぐり来たでしょう、名曲はいつまでも名曲のまま、昨日も今日もラジオから流れてきた。

おとなになって耳にするこの曲は、そのポップでキャッチーなメロディが、ただのハッピーメリークリスマス!ではなく、なんだろう心にしみてくる。

改めて噛み締める歌詞が素晴らしい。
「昔、となりの、おしゃれなおねえさんは」
頭からこれである。ここでもうヤラレル。

「あれからいくつ冬がめぐり来たでしょう」
冬が「めぐり来る」のだ。これは出てこない。
「今も彼女を思い出すけど」
お姉さんが、彼女に変換されている、見事。
「遠い街へと、サンタがつれていったきり」

もう心撃ち抜かれる、ずきゅん。「連れていったきり」で区切るセンス。すごい、凄すぎるぜユーミン!

邦楽の持つことばの美しさ、時の流れを感じる物語性。大スターに言うことではないが、舌を巻いてしまう。

その一方で、あくまで個人的にだが、歌詞に描かれている言葉が全てではない、と感じる名曲も。

わたしはB'zの「いつかのメリークリスマス」をこよなく愛している。しかし聴くのはこのシーズンだけ、と(勝手に)心に決めているので12月に入ると毎年慌てて選曲するのだが、割と近年まで、哀しみをはらむ曲だと気づかなかった。「色褪せた」言っとるのに。

心がジーンとする、幸せなクリスマスソングとして聴いていた。それは、「色褪せたいつかの」、つまり、かつては「鮮やかで煌めいていた」部分に歌詞がフォーカスされ、またそう感じさせるメロディだからなのではないか。そうだよ、「何もかもがきらめいて」いたクリスマスなのだから。

(ついでだが、椅子を買うってのも良い。なんで椅子なんよ、でもそこが良い。椅子かかえて電車乗る人なんて令和では稀有だろう、わたしなら楽天一択だ。)

クリスマスソングではないが、BUMP OF CHICKENの「スノースマイル」も中学生くらいから愛しているのに、これも最近まで「雪が降ってる曲」だと思っていた。わたしは何を聴いていたんだ。「落ち葉を蹴飛ばすなよ」言うとるやないかい。
それだけ、「まだキレイなままの雪の絨毯」というフレーズが強烈なのだ。あのメロディは、真っ白な世界を讃えている。

そんな訳で、わたしはずっっっと、曲に描かれている情景や心情を誤解していたのか?!愕然とした近年。
しかし、更に気がついた。そうじゃない、誤解じゃない、読み違えているわけではないのだ。正しくはそう、「考えるな、感じろ」。

「色褪せた」部分や「落ち葉だらけの道」を感じさせないメロディライン、それ以外の選び抜かれた美しい歌詞が、心に訴えかけてきた結果、わたしの心に浮かんだ情景。つまりはアーティストの手腕なのだ。それだからこそ名曲なのだ。

物悲しさや寂寥ではない、冬だからこその「温もり」が、曲を通してわたしの心に、きらめいた情景を浮かび上がらせるのだ!

冬の音楽って、だからほんと、すき。

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