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『むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』によせて

 石川善樹さんは好きな著者です。(予防医学研究者さんです)。石川善樹さんのおかげで研究者さんが大好きになりました。

 『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』とか、『フルライフ』とか、『問い続ける力』とか、好きな本をあげたらきりがないほどです。

石川善樹さんは、エンターテイナーのような研究者さんだと思います。思ってもみない角度から現れて、いつもあたらしい考えを授けてくれます。

 どこが良いかというと、まず題材。どう書いたか、という以前に何を書いたか、ということだけで私はこの著者に惹かれずにはいられません。

 石川さんは「人がよりよく生きるとは何か。」、またウェルビーイングをテーマに研究を行っています。ウェルビーイングとは「よい状態」「満たされている状態」「持続的な幸福」といった概念です。

繰り返し見る石川善樹さん著書5選

📗どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた
 幸せに生きるための指南書。「論理的なのにぶっ飛んでいる」というAmazonレビューに大きく頷きます。幅広い年齢層、幅広いターゲット層に衝撃を与えそうな、いろんな意味で衝撃を受ける本です。

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📗『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法
 人生100年時代の“健康力"のカギを握るのは「つながり」。「つながりと死亡率の関係」を見ると、恐ろしい気持ちになります。「誰かのためにエネルギーを使うことは幸せ」という研究は、思い当たることが沢山あります。

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📗『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略
 イノベーティブな結果を出すための仕事術と、よりよく生きるためのライフハック。特に、ビジネスパーソン、クリエイティブに関わる人にオススメです。「経営者、父、長男など私の人生のあらゆる側面に良い影響を与える本でした。コスパから考えると安すぎますね。」というAmazonレビュアーのコメントに納得です。

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📗『問い続ける力
 超一流たちは、どんなことを考えているのか?(たとえば時代、社会、文化、アート、性、経済、人間とAI…)。いつ開いても、あたらしい発見があります。『創造=新しさ×価値』という定義が今日刺さったところです。

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📗『感情は、すぐに脳をジャックする
 感情とは何か?心理学者ロバート・プルチック博士の「感情の輪」をながめ自己を深く知ることは楽しいです。コルク代表・編集者の佐渡島庸平さん、漫画家の羽賀翔一さん、そして石川善樹さんの三者三様なエピソードが面白く、何より感情を交えた話が上手くてうなります。

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 『健康学習のすすめ(理論編)』という本から出発した石川善樹さんは、「つながり」が最高の健康法という真面目な本を経て、「女性にとって頼りになる」という熱意のもとダイエット研究に励み、数学や脳科学、社会科学の知識を取り入れた最新科学が教えるダイエット本を出しています。

 ビジネスパーソンのための指南書マインドフルネスの本を作ったり、『幸せの重心』というワタベヒツジさん描く漫画の主人公になったり、これまでひたすら石川善樹さん的に「人類の英知に貢献したい」「みんな仲良くしよう」「ウェルビーイングを広めよう」という高い志を掲げているのを、とても恰好良いと思うのです。

 私は石川善樹さんの考えに触れることで以前よりずっと考える人になれたから、「人類の英知に貢献したい」という石川さんの野望はいつしか果たされると思っています。


主観的ウェルビーイング計画

 石川善樹さんのお話では、2030年までにポストSDGsのグローバル・アジェンダ(世界のすべての人が取り組むべき課題)に主観的ウェルビーイングをおくとのこと。

 ただし、ウェルビーイングは物理的な実態ではなく人間が作り出した想像上の概念なので、「どこまでもいっても謎でしかない」そう。

 謎である、というところも私は個人的にぐっときます。これは何、とすべて分かってしまうのは、ときにいかがわしいことだとも思います。



『幸せの重心』 とウェルビーイング

 漫画『幸せの重心/ワタベヒツジさん×石川善樹さん』は、石川善樹さん(ウサギ)の人柄が忍ばれます。ヨシキウサギとカメタナカの物語は、ゆるゆると無防備に続きます(現在76話)。

 物語の主人公の一人、卑屈なカメタナカのおかげでどの話もそこらじゅう曇天。なので、とても安心です。遅刻エピソードは親近感を抱かずにはいられません。体調を崩して〆切に間に合わないとき、圧倒的な鎮静作用があったことを思い出します。

『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』 によせて

 この本は、日本文化(昔話、神話、和歌、アイドル文化)に潜む「ウェルビーイング」を紹介しています。

『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』前書き

 最初は日本昔ばなしの印象が強くて「クリエイターのための本だ」と感じました。けれど、イノベーションを考えるビジネスパーソンが行き詰まったときのヒントが隠されている気持ちになるかもしれないし、ビジネスパーソンにとってこの本自体がウェルビーイングにつながるかもしれないし、もちろんどんな人でも楽しめる・・そんな本です。

 大衆ウケする石川さんのお話とお人柄は、研究者とタレント的活動を合わせた今のお仕事がまさに天職なのかなあという気がします。ニッポン放送アナウンサー 吉田尚記さんのコメントも楽しいです。

 ちなみに、幸せという感覚は、Well-beingとWell-doingのバランスがとれている状態と仰っていたのですが
石川善樹さんによる「ウェルドゥーイングとウェルビーイングの定義」はこちら↓

Well-doingは、会社で役割と責任を果たしているという感覚。
Well-beingは、1人の人間として認められているという感覚。

Well-doingは、「職場には、自分の成長をサポートしてくれる仲間がいるかどうか?」。
Well-beingは、「職場の同僚は、自分のことを1人の人間として認めてくれているかどうか?」。

Well-doingは、役割や責任を果たすことが重要。
Well-beingは、そのままの君でいいということ。

Well-doingは、昨日の自分との比較。
Well-beingは、自分を自分として認められるので比較は必要ない。

「これだけ聞けば“社員のWell-being/doing”が分かる」2つの質問』より


Well-doingとWell-beingのバランスを取ることが、よい人生じゃないのという仮説

 あんまりWell-beingな空気を出しているので、私は石川さんをWell-beingな人だと思って勝手に親しみを抱いていたのだけど、実は基本的にはWell-doingが好きらしいです。バリューを出さないと生きている意味がない、と考えるそう。

 「(自分は)欠点が多い人間」とか、「(自分は)無能」とか、「(自分は)信頼できない」とか、絶望している記述がたくさんあるのだけど、「こんな自分と一生一緒にいなきゃダメなのか」と書き添えられていておどろきます。どんなに恵まれているように見えても、人は本質的におなじようなことを思うのかしら。

 私が石川さんの本をエンターテイナー的に思うのは一つにはたしかに、ぶっ飛んでいるせいです。純粋で正直で、あまりの赤裸々さにときどき困惑します。ハーバード卒の学者さんらしからない、でもエンターテイナー的にはひどく重要なものたちです。

 そんな石川さんが「本当にバリューを出すためには何が大事なのか?」とWell-doingを追求していった結果、Well-being=(いい意味での自分らしさ)の重要性に気が付いた、と書かれています。

 では、自分らしいという感覚は、いかにして生まれるか?逆説的だけれども「自分」という感覚を忘れることで、結果として「自分」という感覚が得られる。

フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略

 フルライフ(充実した人生)とは、自分を高めるWell-doingと、自分を忘れるWell-beingのバランスを取ることである、というのです。


「幸せ」とは何か

 「『幸せ』は心理学的には3種類あると言われています。それは『快楽』と『意味』と『没頭』なんです」、と石川さんは言います。そして、何かを「やる」というプロセス自体がすでに報酬(快楽)だったりする。

 没頭すること自体が報酬・・・。確かに、情熱が持てることや好きなことに没頭しているあいだ「楽しい」と自覚することがあります。それでいえば、過去を振り返って良かったと思えることもたくさんあります。

 人生としてのウェルビーイングを見るならば、「過去を振り返ったときに良かったなと思えて、この先の未来を見据えたときに楽しそうだなと思える」、というのが、社会科学の研究者が考えるウェルビーイングです。
 (1日というミニマムな単位で見たとき、長いスパンでみたとき、ともに
)共通するのは「未来を想像したときのワクワクする心」です。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』より

 本を読んで、クリエイティブな刺激をもらって今、未来にワクワクする気持ちです。


物語のチカラとは何か

 平凡な日常が続いていくゼロ地点は、馴染み深く安心できる場所です。け
れどもほんの少しだけ、何かが起きる未来への期待が欲しい
。そんな心理に応える装置としての側面も、昔話にはあったのでしょう。
 いつも洗濯している川の向こうから、大きな桃が流れてくるかもしれない。
 亀を助けたら竜宮城へ連れて行ってもらえるかもしれない。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』より

 「変化のない日常にほんの少し夢想を詰め込む」という一側面が物語にはある。

 先日、動画シナリオを作っていて、まさに「物語を作ることは夢想かもしれない」という気持ちになりました。

 石川さんが昨年末、twitterでシェアしてくださった「わたしの名はオオタフクコ 〜小さな幸せを、地球の幸せに。〜」↓

小さな幸せを、地球の幸せに。/オタフクソース株式会社

 すぐにはよく分からなかったのですが、企業メッセージと物語をこんな風に結びつけるのもよいなあ、と思います。

 たぶん、こういったストーリーは「余分」なことと関係があるのです。余分だからこそ美しかったり。余分だからこそ幸福だったり。

 漫画『幸せの重心』は余分とは違って、複雑なことがなにもない楽しさを提供してくれます。

 ヨシキウサギは、いつもご機嫌。けれど卑屈なカメ タナカは、にこりともしないで終わる回もあります。ある意味、弱さをまるごと肯定する日本昔ばなしのようでもあります。

 本来なら「ビジネスと結びついた価値あるストーリーを!」みたいなことを考えがちだと思うのですが、そんなの無くてもよいよ的なリラックスムードのヨシキウサギとカメタナカの物語。

 石川善樹さんにとってWell-doingとWell-beingのバランスを取っているのかもしれないし、ときに誰かのWell-beingに貢献しているのかもしれません。私にとって、ヨシキウサギの遅刻エピソードがそうだったように。

 私が思う物語の良さとは、主人公の住んでいる場所が自分の中にある、と気づいたときの喜びのようなものです。

 物語は他者の目を通して、日常から少し離れた目線で問いかけたり、自分が大切にしてきた価値観を呼び起こしてくれます。そこにある他者の感情の揺れに触れることによって、物語の登場人物や記憶の中の誰かと信頼関係を高めることができる・・・かもしれません。

 特に今はコロナ禍→リモート化で、つながりの確認がしにくくなって目の前のことに必死にならなければならないから、こころとこころを結びつける機能のあるストーリーようなものは今まで以上に必要とされるのかなあ、と思います。


ウェルビーイングへの道とは何か

 人は周囲の人やものとの繋がりによって生きています。たまたま生まれた縁によって人生がガラリと変わり、そこから運命が展開していく。日本の文化に触れながら育ってきた私たちは、そうした因縁を肌感覚ですでに知っているはずです。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』より

 ウェルビーイングは、あまり因果で考えない方がいいのではないか?と私は考えています。それよりも、因縁といいますか、たまたま出会った縁をきっかけにしてどう「展開」していくか、という発想でいた方が日本人には適しているように思えるのです。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』より

 たまたま出会った縁も、インターネットをきっかけに展開していくことができる時代かもしれません。あなたはどうですか?

 日本の昔話や落語の人気噺を見て特徴的だと思うのが、「金持ちになりました、めでたしめでたし」で終わる話が西洋に比べると少ないことです。あるにはあるのですが、それよりはほのぼのした不思議な話の方が日本では圧倒的に多い。

むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』より

 「ほのぼのした不思議な話」というのは、きっと日本人の本質的な欲求にかなう喜びなのだと思います。

 私は『むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました』の途方もないダイナミックなテーマが、「ご飯、お風呂、布団があればよいじゃん」「難があってもよいじゃん」「たまに心満たされればよいじゃん」、みたいに地味にまとまっているのが好きです。ちゃんと世界が整えられています。

(まとまっている、というのは誤解を生むかもしれませんが・・・。「ウェルビーイングや幸せのかたちが本来、一人ひとりそれぞれに異なるもの」ですし・・・)

 本をお持ちの方は、最後の方に書かれている「自分よりも大切なものを見つけてください」というメッセージを思い出して欲しいです。共に悩み、共に「ああおもしろかった」と思える以上に、望むことなどあるでしょうか。


追記:私が石川善樹さんを初めて見た動画の感想はこちらです。
久しぶりに見て、そんなに石川善樹さんに感動したんだ、とびっくりして、涙が出ました!!!!!!


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