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愛に当てられて困惑@ルーヴル美術館展 愛を描く

超絶久しぶりにオットと美術館デート。サントリーや出光もすすめてみたんだけど、ルーヴルがいいんですって。

正直に申しますと、フラゴナールとかブーシェって苦手なんです。というかロココが苦手。なんでしょうね、綿菓子みたいなあまーい色彩だとか、戯れる男女とか、男性目線な描写とか。鑑賞する機会はけっこうあるけれど、掘ってみようとはなかなか思えない。しかし、これを機会に理解が深まればもう少し好きになれるかな、なんて期待を抱いてさらっとだけどギリシア・ローマ神話の予習もして出かけました。

作品は16世紀から19世紀半ばのおよそ300年間に描かれたもので、中心となるのは18世紀後半。第一章で神話の世界、第二章はキリスト教主題、第三章には風俗画、そして第四章でロマン主義。作品の撮影が可能なのが第四章で、フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》、クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》、アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》といった大きく魅力的な作品たちでフイナーレを飾ります。ここは喜んで撮影しちゃいました。作品に当てられた照明がすごく良くて、プシュケの無垢な表情や肌、アポロンとキュパリッソスの艶やかにして壮健な若者らしい肌あいが際立っています。

フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》
1789年 油彩/カンヴァス ルーヴル美術館
クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》
1821年 油彩/カンヴァス ルーブル美術館

さて、作品群のステキさについてはあえて語りません。フラゴナールやブーシェはやっぱり苦手。ささーっと流しておしまいです。

それより。この「愛」でくくった作品群、絵画としての美しさや章立てに合わせて主題を鑑賞するといったこと以上の奥深さをなんとか把握しようと試みたのですが、出直すしかなさそうです。トホホ。
芸術の舞台がイタリアからフランスへと渡った辺りのヨーロッパ諸国の情勢について俯瞰できる歴史観を持ち合わせていなくて、それがゆえに鑑賞しながらうっすらパニックです。

一つには、象徴(シンボル)と寓意(アレゴリー)についての知識が乏しくしかもその知識さえも曖昧であること。「この場合は何を意味している?」と考えるばかりで頭の引き出しが空っぽすぎ。

もう一つは、なぜ愛を集めたこの企画展の作品群の制作年代が18世紀中心であるのか、という点について自分の言葉で説明できないこと。そして、当時のフランスの画家たちと諸外国の画家たちとの描き方の差異の理解が乏しくて、この頃のフランス絵画の特徴をいまひとつ飲み込めていないのだ、と気づいた。「ロココ、こんな感じね。」でスルーしていたツケでしょうか。

しかし、自分から踏み込んでいないのが原因だとしても、日本の展覧会や美術史の概説書なんかで各時代の名作紹介が判で押したようなものであることの弊害ではないだろうか?と言ってみたい。ロココに対するイメージが固定化しがちに思う。ロココに限らずだけれども。本国のルーヴル美術館へ行くと、その辺りも名作がいい意味で埋もれがちになって相対化できるのだけど。

この「判で押したような」問題については常々考えているのだけど、いかんせん観者の方がいつまでも受動的鑑賞態度であるのは否めないし、美術という教科の地位の低さというか取扱いはどんどん粗末になっているし、一部を除いて芸術は趣味の領域・嗜好の問題ということに収束されてしまう感が強い。そうかといってファスト教養としての芸術理解、なんて私にはのれないのである。あ、いかん、脱線。

というわけで、2周目しようか図録を購入しようか検討中。ここ数日は家にあるギリシア・ローマ神話の本を再読中です。この企画展から広げるとしたら、いつかいつかと目の端で気になりつつ延ばしていた神話の世界へ踏み入ることと、フランスの王立絵画彫刻アカデミーの系譜を追ってみること。芸術学の講義でやった「デッサンと色彩」論争の流れやラファエッロを規範としたアカデミーがどのように発展していったのかということも眺めなおす必要がありそうだ。

・・・脱線の脱線にならないようにしなくちゃだ。研究したい範囲から500年くらい隔ったってるじゃないの?

踏み込みすぎに注意だけど、神話理解は必須なので、とくに気になった点について次回noteに記したいと思います。一つは、愛について「エロス」と「アモル」の概念に含まれるものの同異って何だろう?ということと(まとめられるのか?)、もう一つは、犬と鹿の象徴についての疑問を調べてみること。それから、いくつかの文献を読んでみること。深掘りとして読んでみたいのは、ルドルフ・ウィトカウアーの『アレゴリーとシンボル』とヴィンケルマン『ギリシア芸術模倣論』の2冊。ギリシア神話については呉茂一『新装版ギリシア神話』がのちのち使えそうなので蔵書に追加しました。

それでは、また。

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