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2020年のベスト本 『ステイ・スモール』

なんのために働いているのか。いまやっている仕事になんの意味があるのか。ただ仕事をまわしてお金を生みだしているだけではないのか。そこに何か根元的な意義はあるのか。朝はやくから夜遅くまで働いて家では寝るだけ。こんな生活でいいのだろうか。

くめです。明けましておめでとうございます。

久しぶりの更新になってしまいましたが、過ぎ去ってしまった2020年の振り返りとして、ベスト本を紹介したいと思います。ステイホームのおかげもあって昨年度は120冊もの本と出会いましたが、その中で最も良かった1冊が、タイトルにある『ステイ・スモール』です。

原題は『Company of One: Why Staying Small Is the Next Big Thing for Business』。

この"Company of One"が本書のテーマであり、その定義は「規模の拡大に疑問を投げかけるビジネス」です。

日本語での副題は「会社は小さいほどうまくいく」とありますが、会社に限った話ではありません。サラリーマンでも個人事業主でも通用するお話です。

ビジネスの世界ではしばしば人間としての常識が非常識になる。究極的な目的はお金を稼いで利益をさらに増やすことと、会社の規模を大きくすること。顧客をたくさん獲得できるのなら、ダイレクトメールやスパムメールをどんどん送ればいい。売れるのであれば、商品やサービスに意味や有用性など必ずしもなくてもかまわない。なんなら人をだましたっていい。たくさん売り、規模を大きくして、もっとお金を稼ぐために、昼夜を問わず一生懸命働くのがあたりまえだ。

私自身、大企業に身を置いて仕事をしてきた経験がありますが、確かに非常識な点がたくさんあったと思います。雇用維持のためには止むを得ず、という点もあるかと思います。だからといって利益第一のビジネスは、やはり多くの人々を苦しめることになるかと考えます。

「仕方ないこと」「これがお金を稼ぐということ」と、我慢する選択肢もあります。いつしか非常識が常識に変わってしまうこともあり得るでしょう。しかし、少なくとも私はヤダなと思うのです。

では、どうすべきでしょうか。

まずは、自分はどう生きたいのか。どう働きたいか。誰を助けたいか。私にとってビジネスの目的とは何か。こうした根源的な問いの答えを言語化することで、ようやくスタート地点に立つことができます。

自分の生き方と目的に忠実でありながらもビジネスを成功させて、よく生きるのに十分なお金を確保すること、つまり「ビジネスが自分の目的と完全に一致して」いる状態を目指すこと、それがカンパニー・オブ・ワンの思想だ。

そして、そこに個性が生まれてきます。答えは人それぞれになるからです。別に大志を抱かずとも、自分らしい答えが出ればそれで良いのです。

私はというと、営業職として働いたことで、いろんなお客さんとの出会いを経験しました。

そして幸運なことに、心の底から助けたいと思えるお客さんに出会うことができました。一方で価値観も相性も合わず、助けたいとは思わないお客さんにも会いました。

私は超わがままで、「人の役に立ちたい」とは思いますが、「助けたいと思う人を助けたい」「一緒に仕事したいと思える人を自分で選択したい」などと考えていたりします。それが叶ったら、どれだけ嬉しいでしょうか。その方々に感謝されて、お金を稼げて、生きがいを感じられたら、どれだけ嬉しいでしょうか。

そんな人生が良いなと思います。そんな人生にしたいと思います。

カリスマ性や社交性があって押し出しの強い人でなく、「思慮深く、内省的で、落ち着いた人物」であってもいい。完璧に準備を整えてから事業をはじめる必要はなく、まずはいまあるものとスキルでできることからはじめればいい。未来の大きな利益よりも目の前の小さな利益を確保すべきだ。自分の弱点や癖を隠すのではなく、個性を前面に押し出してそれを売りにすべきだ。新規の顧客を獲得するよりも、いまいる顧客をよろこばせることに力を注ぐほうがいい。情報を隠す必要はなく、すべて広く共有すべきだ。ものを売ることを考えるのではなく、人を手助けすることに集中すればいい。

そして、自分にとっての理想の人生を築くための方法が、本書に記されているわけです。まっとうなビジネスをして、まっとうに生きようという筆者の思いが、こちらにも伝わってきました。

難易度は高いと思います。万人に向いているやり方でもありません。それでも理想の生き方が明示され、それが本書の示す理念に一致するものであるなら、前に進んでいけるかもしれません。

ちなみに引用文は全て訳者のあとがきです。これが非常に分かりやすく要約されている文章で、今まで読んだあとがきの中で、一番良いあとがきでした。なので今回たくさん引用させて頂いた次第です。まずはあとがきを読んでみてご判断されても良いかと思います。それくらい、素晴らしい出来です。

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