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仕事の選択と幸せについて。

仕事量が私たちの能力を超えて増えた場合、唯一の根本的な解決策は、仕事量を制限することだ。
- ピーター・M・センゲ『学習する組織』p165

新人だった私は、与えられた仕事を”たとえ能力以上の負荷がかかったとしても”とにかく根性で乗り切るというマッチョ思考の持ち主でした。

生産性を上げるためにビジネス書を読み漁り、小手先のテクニックを多用し、そして毎日残業して仕事を片付けていきました。

その結果、確かに成長速度は早まったかもしれませんし、上司から気に入られるようになっていたかとは思います。

ただし、私は私の生活全てを仕事に全振りするための大きな代償を支払っていました。それは健康です。

2〜3年同じように働いていると、明らかに集中力も記憶力も、そしてモチベーションも消え失せていくことが実感できました。私はスーパーな人間ではないため、あっという間に体力も気力も無くなっていってしまったのです。

この経験から、私はこれから仕事を選択することにしました。その第一歩として、残業時間をコントロールしやすい会社に転職しました。

仕事を選択するというのは中々辛いことだと思います。やりたいのに手を挙げることができなくなってしまったり、昇進機会を手放す可能性だってあります。

しかし残業続きの生活は、それ以上に辛く、不幸な毎日でした。友人や家族との時間も減り、大切な人たちとのコミュニケーションが楽しめなくなっていました。それはたとえ良い給料が貰えるとしても、私の理想には程遠い生活です。

「仕事の選択」が幸せな生活をもたらす

システム思考やデザイン思考で取り上げられるツールの一つに「因果関係ループ図」というものがあります。多くの要素が複雑に絡み合っている状況を、原因と結果という視点で分析する手法です。

因果にはある要素が強まると別の要素を増やすというプラスの関係(ポジティブ・フィードバック)と、ある要素が弱まることで別の要素を弱めるというマイナスの関係(ネガティブ・フィードバック)とがあります。

私自身の個人の仕事量と健康の関係を表すと、以下のようになります。

仕事の選択

私の場合は仕事量が適切で時間に余裕のある毎日を送れるようになると、健康的な生活習慣を身に付けることができるようになります。

それは適切な時間の睡眠、健康的な食事、ストレッチやお風呂に時間を掛ける、などがあります。

そのような余裕ある健康的な生活が送れると、徐々に仕事や人生におけるモチベーションが非常に高まっていくことが実感できます。すると読書量やスキルアップに対する時間も増えて、生産性が高まり、徐々に仕事に対する成長速度も高まっていきます。

すると、自ずと仕事量が増えていきます。これがポジティブ・フィードバックです。

ここで気をつけなくてはいけないこと、それが「仕事の選択」です。

ループを構成する要素の中で、最も重要な要素、鍵となる要素を「レバレッジ・ポイント」と呼びます。このループ図のレバレッジ・ポイントは、「仕事の選択」です。

仕事をきちんと選別し、優先順位をつけて、制限する。これができないと、一転してネガティブ・フィードバックに突入することになります。

残業などで自身に負荷が掛かり、十分な睡眠時間を確保することが困難になっていきます。すると、あっという間に生産性は元通り、それどころか悪化してしまいます。

当然ながらそのような毎日を過ごすと健康に深刻なダメージを与え、最終的には心身共に使い物にならなくなってしまいます。

このネガティブなループから抜け出す方法は1つしかありません。仕事を選択することです。

問題をすり替えないこと

ここで犯してしまいがちなミスがありまして、根本的な解決策ではなく対症療法的な解決策を選択してしまうことです。

この問題の根本的な解決策は「仕事の選択」にあります。しかし当時の私も、まんまと対症療法的な解決策を選択してしまいました。

それはビジネススキルを利用したスピードアップだったり、早起きや外食を繰り返して生活スタイルを変えることでした。早起きは一見良い生活習慣ですが、ネガティブ・フィードバック状態ではむしろ健康を害することになります。

これより酷いやり方を実践してしまう人も中にはいるかと思います。たとえば飲酒や喫煙、性風俗の利用、麻薬などを利用することによる「ストレス解消」です。これらは一時的にはあなたの気持ちを満たすかもしれませんが、ネガティブ・フィードバックから抜け出すことはもちろん不可能ですし、むしろ悪化させてしまいます。

問題をすり替えて根本的な解決策を実行しないのは、あなたをより不幸にしてしまうのです。

士業やコンサル、フリーランサーなどは仕事の調整がしやすい分、対症療法的な解決策に逃げてしまう人が多いかもしれません。

近年は働き方改革のもとで職場環境が良くなってきているサラリーマンも、職種や組織風土などで大きな影響を受けやすいと思います。業務上残業が当たり前という人も多いでしょう。

とはいえ「仕事の選択」から逃げ続けると余計に負荷が掛かってしまいます。よくよくお気をつけ頂ければ幸いです。

◆参考書籍


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