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旅の報いは旅そのもの ~志と自己成長について~

高度な自己マスタリーに達した人にとって、学びに終わりはない。決してどこかに「到達」することはないのだ。
高度な自己マスタリーに達した人は、自分の無知を、自分の力不足を、自分の成長させるべき領域を痛感しているものだ。同時に十分に自信もある。矛盾しているだろうか?「旅の報いは旅そのもの」と思えない人にとっては矛盾に聞こえるだろう。
- ピーター・M・センゲ『学習する組織』p197

「自己マスタリー」とはあまり聞き慣れた言葉ではありませんが、「個人が自己の将来像と現状との落差を見すえ、積極的に学ぶようになる過程のこと」を言います。

マスタリー(mastery)は英語で「熟達」や「習熟」を意味するものですから、その過程を表す言葉として捉えておけば良いのかと思います。

さてセンゲ曰く、自己マスタリーは所有物ではなくプロセスであり、終わりのないものだそうです。つまり熟達に達することは無く、成長に終わりはないということです。

イチローや稲盛和夫など偉人の言動に耳を傾けてみれば、その意味もなんとなく分かるかと思います。人はいつまでも成長できるということです。

反対に熟達やプロフェッショナルにゴールがあり、所有物であるという意識を持っていると、現実と理想の乖離に苦しんでしまうことでしょう。いつまでもゴールに辿り着けず、やがて自信や気力を無くしてしまうからです。

資格や学位、地位や利益の獲得を目的としてしまうと、苦しむことになるかと思います。私もそんなことで苦しんだ経験がありました。

旅の報いは旅そのもの

個人の成長や志といったやや意識の高い視点を取り外したとしても、この「旅の報いは旅そのもの」という言葉には共感できる人が多いかと思います。

旅行は計画してる時から楽しいですし、恋愛はお付き合いや結婚する前から楽しいものです。心が軽くなり、うきうきした気持ちになることが実感できると思います。

ただし付き合うこと、結婚することをゴールにしてしまうと、その先はどうなってしまうでしょうか。きっと苦しむと思います。

個人の成長にしても同じです。「ああ、今の自分は成長してるな」「頑張っているな」と感じられるときはとても楽しいですし、未来が明るく感じられるはずです。

結果に執着するのではなく、プロセスにも価値を置くこと。未来を見据えながらも、過程を楽しむこと。そうすることで自己肯定感も湧いてきますし、毎日が楽しくなっていきます。

その状態を維持できるようになれば、それはまさに自己マスタリーというディシプリン(センゲ曰く、習得するべき理論および技術の総体)となるのでしょう。

志をもって生きる

自己マスタリーというディシプリンは、継続的に私たちの個人のビジョンを明確にし、それを深めることであり、エネルギーを集中させること、忍耐力を身につけること、そして、現実を客観的に見ることである。
- ピーター・M・センゲ『学習する組織』p40

自己マスタリーがプロセスに主眼を置いたものとはいえ、目的、つまり志や個人のビジョンがないと、そもそも自己マスタリーとは言えないことにも注意する必要があります。

自己マスタリーというディシプリンは、まず私たちにとって本当に大切なことを明確にし、自分の最高の志に仕える人生を生きることである。
- ピーター・M・センゲ『学習する組織』p40

ビジョンのない人生より、ビジョンのある人生の方がワクワクするかと思います。これを達成したい!成し遂げたい!という気持ちが、自身のエネルギーを引き出すからです。

もちろん簡単に見つかるものではないでしょうが、経験と内省を意識的に繰り返すことで、徐々に自分の人生というものが見えてくるものです。近年は志やビジョンについての専門書もあるくらいですから、気になった人はそれらを読んでみるのも良いでしょう。

志という点に注目すると、数多くの古典が主張していますし、万年を通じて培われている大切な概念なのだと思います。私がお勧めしたいのは「易経」、「論語と算盤」です。

以下は大変読みやすい(易経に関しては子供向けの書籍です)ので、ぜひ目を通してみてください。

◆参考書籍


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