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これからは「家族農業」でいこう(1/3)『家族農業が世界を変える』全3巻完結!


「家族農業」なんて時代遅れ? そんなことはありません。食と農をめぐる考え方は、食料危機や気候変動を背景にここ10年ほどで大きく変化しています。小規模で地域コミュニティに根ざす「家族農業」は、環境をまもり、危機にも柔軟に対応できると国際的にその潜在力が見直されています。

 食と農の未来を考えるシリーズ・『家族農業が世界を変える』関根佳恵(監修・著)全3巻1巻「貧困・飢餓をなくす」2巻「環境・エネルギー問題を解決する」3巻「多様性ある社会をつくる」)ではオールカラーの豊富な写真とイラストで、わかりやすく最新知識を学ぶことができます。小学5年生以上の漢字にはルビがついていますので、小中学校での調べ学習にも最適です。

 2022年3月に全巻完結したこのシリーズ。著者の関根佳恵さんに、出版にいたるまでのエピソードを書いていただきました(全3回)。

『家族農業が世界を変える』の出版によせて(全3回)

関根佳恵(愛知学院大学准教授)

 このたび、農と食に関するシリーズ(全3巻)を出版することができました。応援してくださったみなさまに感謝しつつ、出版に至るまでの3つのエピソードをお届けいたします。

第1回 私の生い立ちとこれまでの研究

高知県の里山で育つ

 私は神奈川県に生まれ、幼いときに高知県の中山間地域に家族と移住しました。山、川、田畑という景色に囲まれた里山で育ち、勉強はあまりしませんでしたが、日が暮れるまで外で赤トンボやドジョウなどを捕まえて遊んでいました。第3巻「多様性ある社会をつくる」のコラムで、塩見直紀さんが言及している「センス・オブ・ワンダー」を毎日のように感じながら過ごせたことは、一生の宝だと思います。もともと食べることや料理が好きだった私は、自然と農業に関心を持つようになりました。

 小学生のときに、家族と1年間フランスで暮らし、現地のインターナショナル・クラスに通うことになりましたが、このときの経験が、後の留学や国連での仕事につながっている気がします。帰国後、高校生の頃には、当時すでに国際的に取りざたされていた飢餓・貧困、環境問題を解決するには、どうしたらいいのだろうと考えるようになりました。

 自分なりの答えとして、自給自足のオーガニック・レストランを経営したいと思うようになり、大学では迷わず農学部を選びました。農場実習では有機農業に挑戦したり、田植えをしたり、牛小屋の掃除をしたりして過ごしたことを懐かしく思い出します。

南フランスに留学

 大学で学ぶうちに、地球規模の問題を解決するには、社会の仕組みから変える必要があるのではないかと思うようになり、進路を変更して、大学院で農業経済学を学ぶことにしました。様々な研究テーマに関心を持っていましたが、資本主義社会の中で農業が直面している問題を深く掘り下げたいと思い、多国籍アグリビジネス(農業関連の多国籍企業)の調査研究を日本、フランス、フィリピンで行いました。

南イタリアで小規模・家族農業を調査(2018年)

 大学院に在籍していた頃、南フランスの国立農学研究所(INRA、現INRAE)に3年間、留学する機会にも恵まれました。この頃に出会ったフランスの友人シルヴァンにも、第3巻に登場してもらっています。帰国したときには様々な場面で「逆カルチャーショック」を感じ、日本と欧州の社会、政治、価値観などは違っていることに気が付きました。国際的な視点から今の日本が置かれている状況を俯瞰する視点は、この頃に養われたように思います。

国連のハイレベルパネル報告書執筆に参加

国連のハイレベルパネル報告書を執筆したみなさんと 左から3番目が著者

 日本の大学で教鞭をとるようになってから、国際学会での出会いを機に、国連食料保障委員会の専門家ハイレベルパネルの小規模農業に関する報告書の執筆陣に加わることになりました。今思えば、小規模・家族農業の研究や市民社会運動に携わるきっかけになった出来事でした。

 現在は、国連「家族農業の10年」(2019~2028年)の啓発活動をする市民団体「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の常務理事として、有志の仲間とともに日本の農林漁業や食、農山漁村のあり方、ひいては社会のあり方を持続可能な方向に転換するための活動を、研究活動と並行して行っています。

「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」の設立記念フォーラム(2019年)        右から2人目が著者

 このシリーズの出版を通じて、小規模・家族農林漁業の価値を見直す人の輪が、さらに広がることを願っています。

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