神山 直樹

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神山 直樹

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。幅広い資産クラスの市場分析・予測を行い、投資情報や運用戦略などを発信しています。「神山直樹が語るマーケットと投資」は http://www.nikkoam.com/products/column でご覧いただけます。

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  • 投資ってなんだ!?

    投資の目的を「引退後の潤いのある生活」としましょう。マーケットの知識や相場観などは不要です。潤いのある生活のために、毎年3%、20年で60%の資産増を目指すのです。最初から「まとまった資金」はなくてよく、毎年の積み重ねであとから「まとまった資金にしていく」のです。これが、現役・退職世代の投資未経験者に本当に知ってほしいことです

  • 初めての投資Q&A

    これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。

最近の記事

米ドル円の為替レート、今後どう動くか

円安はどうして続いているの?円安が進行する理由はさまざまな説明があり、時期によってその要因も変わっているとも言えます。それゆえ予想がとても難しいです。さらに、為替レートは株式と違って人間の努力と工夫で成長してくような背景もありません。上記を前提に、難しいなりに円安の理由を説明してみます。 2020年終わりに103円台であった米ドル円が、2022年には150円の円安になりました。いまや150円台後半が定着したように見えます。振り返ると、円安が目立ってきたのはなんといってもコ

    • 日経平均の乱高下は続くか?

      短期的に日経平均株価は上下動が激しくなると見ています。 今年初めからの日経平均の上昇には、大きく3つの期待がありました。まず半導体関連への期待の膨らみ、次にアメリカのインフレの克服と金利低下の期待、そして日本の賃金上昇期待です。 3月ごろにこれらの期待が高まり日経平均は4万円を超えました。その後、期待の実現を待つ状態になり37,000円台まで低下したのですが、改めて、半導体関連銘柄の決算が良いこと、アメリカのインフレの落ち着きを示す経済指標発表が続いたこと、日本の賃金上昇

      • 賃金上昇率は低下傾向、FRBの利下げは?

        アメリカの賃金上昇率は低下傾向を続け、米連邦準備理事会(FRB)は9月までに利下げに入る公算が高まっています。 7月5日に発表された6月の米雇用統計では、平均時給の伸び率は3.9パーセントと4パーセント台を割り込みました。インフレが落ち着きそうだとFRBが自信を深める要因の一つとなります。 もちろんこれだけで十分とはいえません。インフレ率そのものの低下も含め、あといくつかデータを見たいと思っているところでしょう。ですから7月ではなく9月の利下げの可能性が高まったとみていま

        • 日銀短観に見る日本経済の好調

          7月1日に日銀が発表した、企業へのアンケート結果である6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、日本企業の設備投資計画は順調で、市場の予想通りとはいえ今後の成長への期待を高めるものとなりました。 まず一番注目される大企業製造業の業況判断は前回3月調査よりも改善しました。自動車業の一部で国の認証試験に関する不正問題があり生産が大幅に低下したのですが、半導体関連など他業種の改善もあり、業況判断は全体として好調を維持しました。 日本経済の立ち直りに重要な給与上昇と設備投資

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        記事

          さらに円安が進むのか?

          ドル円がじりじりとドル高円安方向に進んでいます。3月下旬までは1ドル=150円程度だったのに、いまや160円近辺までドル高になっています。日本政府・日銀の介入への警戒もあって急激な変化ではないのですが、ドルじり高と言えます。 奇妙なことに、日米の長期金利の差はこの期間、拡大するどころか縮小しています。米長期金利は一時上昇しましたが4.2パーセント程度に戻ってきています。いくつかの経済指標でインフレの継続リスクが緩やかに低下しているように見えるからです。 一方で、日本の長期

          さらに円安が進むのか?

          材料難の中、揺れ動く日本株

          6月17日に日経平均株価が700円以上、1.8パーセントほど下落するなど、市場が荒い動きになっています。 しかし、フランスの政治が理由で日本株が大きく揺らぐとは考えにくく、手掛かり材料が不足し、価格だけが大きく動いたにすぎないとみています。しかも、4月以来の取引レンジの下限は3万7000円程度ですので、それを割り込んだわけでもありません。 先週、米連邦準備理事会(FRB)は政策を変更しませんでした。また、日銀の国債買い入れの具体的な減額計画は7月の決定会合で決めるとされた

          材料難の中、揺れ動く日本株

          アメリカの賃金伸び率が下がらない、金利と株価は?

          アメリカの5月の賃金上昇率は4.1パーセントとなりました。インフレ率2パーセントが目標ですので、賃金上昇率は生産性改善を含めて3パーセント程度に収まることが望ましいのですが、4パーセント台から下がってきていません。 賃金上昇率が高いと、インフレを持続・再燃させる可能性が強いので米連邦準備理事会(FRB)の政策に影響を与えると考えられます。 FRBとしてはインフレ率が2パーセントに収まることを目指しているので、4パーセントの賃金上昇率ではインフレ再燃が心配され、利下げに踏み

          アメリカの賃金伸び率が下がらない、金利と株価は?

          円高でも日本株は上がる

          円安でなければ日本株が上がらないと多くの投資家が感じているようですが、今後本格的な日本株上昇は円高の中であっても進む可能性が十分あります。 円安で株が上がるという記憶が強まった理由は、アベノミクスの時の経験によるものでしょう(図表の②)。 アベノミクス開始直前まで円高と株安が続いており、アベノミクスが始まり黒田東彦前日銀総裁の過去に例を見ない大規模な金融緩和で大幅な円安となり、日経平均も同じペースで上昇しました。 ただし、これは日本経済のヒト・モノ・カネの「余剰」を「不

          円高でも日本株は上がる

          長期金利の上昇は日本株・経済にとって良くないのか

          長期金利が上昇しています。が、日本経済が立ち上がれない、歩き出せない原因になるとは思えません。 コロナ禍前からの約5年の間、株価と金利はどちらも上昇しています。長期金利がマイナスから1パーセント程度まで上昇する間に、日経平均株価は2万円程度から4万円程度に上昇したのです。このことだけでも金利上昇が株価の上昇に悪影響を与えたとは言えません。 金利上昇に伴う株価の下落は、「金利が上がると不安になりやすい、下がると安心しやすい」という市場心理に関係していて、短期的には起こり得ま

          長期金利の上昇は日本株・経済にとって良くないのか

          新NISAがはじまってもうすぐ半年、いつまで続けるもの?

          つみたて投資枠と成長投資枠、どう使い分けるといい? NISA制度が新しくなり、以前以上に投資に興味を持ってくださる人が増えて良いことだなと思っています。しかし、真面目な日本人がしばしば陥りやすい罠は、何か間違わないか、うまくやらないといけないのではないか、完璧な使い方(使い分け)、これを知らないと損する、のような情報を集めがちということではないでしょうか。 正直なところ、NISAの本質は、枠内の投資の儲け(売却益、配当・分配金)に税金がかからない、という点のみです。それ以上

          新NISAがはじまってもうすぐ半年、いつまで続けるもの?

          株式を資産に組み入れることの意味

          株を持つことはギャンブルなの? 株の歴史から解説 新NISAなどで投資に理解を持つ人が増えている反面、払い込んだお金が戻ってくるとは限らないという意味で、投資はギャンブルのようなもので、手を出して損してはいけないという考えも根強いと感じています。 株式投資(株式の投資信託やETFも含みます)は元本を保全することを目的とした投資ではないので、その意味で絶対に損しない、儲かるということはありません。ただし、ギャンブルとは違います。株式投資とギャンブルの違いを知って、そのうえで

          株式を資産に組み入れることの意味

          NYダウ4万ドル:金利より成長期待へ

          5月17日に米ダウ工業株30種平均(NYダウ)が史上初めて4万ドルに達しました。 インフレに関する指標がおだやかになり、金利低下が期待されはじめたことが材料とされました。短期的にはこのような市場の動きになるかもしれませんが、長期的には金利と株価の関係をさほど気にする必要はありません。 これまでのおよそ10年のNYダウとアメリカの長期金利の推移を見ると、長期金利が2%の時よりも4%を超える現在のほうがNYダウが高いので、金利が高いほど株価指数が低下すると見る必要はないことが

          NYダウ4万ドル:金利より成長期待へ

          円安に対する海外投資家の反応はさまざま

          海外投資家について、「円安で上がりやすい日本株を買うだろう」という考え方と、「円安ではドル建ての利益が低くなるので日本株を買わないだろう」という考え方があります。実は、海外投資家にはいろいろなタイプの投資家がいて、どちらかひとつにまとめるのは困難です。 例えば、先物市場で短期的なトレーディングを行う海外投資家は、2022年夏や、23年の春から夏頃まで大幅に日本株を買い越しました。ドル高円安が進み、日経平均株価が比較的大きく上昇した時期でした。 短期的な売買を好む海外投資家

          円安に対する海外投資家の反応はさまざま

          FOMCと米雇用統計後のドル円相場

          大型連休を挟んでドル円相場の動きが急でした。 5月初めの米連邦公開市場委員会(FOMC)、米雇用統計の発表を過ぎ、日本政府・日銀の為替介入の観測もあって、一方的なドル高が一段落し、一時151円台の円高となりました。 今後、アメリカの利下げと日本の利上げはたいへん緩やかに進むとみており、市場参加者のドル高心理が低下していくと考えます。 ドル高修正理由は3つあります。まず、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がさらなる政策金利の引き上げの可能性が低いと発言したことで、ドル

          FOMCと米雇用統計後のドル円相場

          為替市場には不思議な円安あり

          4月10日に1ドル=151円台だったドル円が、4月29日には海外市場で一時160円をつけるドル高円安になり、その後156円程度に戻るなど大きく動きました。日本政府・日銀が円買い介入した可能性も取りざたされています。 いまのところ市場参加者は円安の圧力が高いと感じていますが、4月中旬以来、経済統計については円安になる理由は少ないです。アメリカではインフレ率の低下が思ったより緩やかとはいえ3%を割れており、5%以上の金利を長く続ける理由に乏しいでしょう。米連邦準備理事会(FRB

          為替市場には不思議な円安あり

          日経平均の調整は半導体が要因

          日経平均株価が1カ月程度調整しています。これは、主に半導体関連の株価調整が原因とみています。 地政学リスクによる心理的な影響も多少はあると思いますが、4月に入ってから原油価格は下落しており、中東の地政学リスクが原油価格を上昇させアメリカの景気を悪化させるようにはみえません。 一方で、昨年末以来の日経平均の上下動は、アメリカの半導体関連銘柄の指数であるSOX指数と似た動きをしています。特に4月に入っての調整はタイミングが似ています。 昨年末から、日経平均は原油価格上昇を気

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