神山 直樹
投資の目的を「引退後の潤いのある生活」としましょう。マーケットの知識や相場観などは不要です。潤いのある生活のために、毎年3%、20年で60%の資産増を目指すのです。最初から「まとまった資金」はなくてよく、毎年の積み重ねであとから「まとまった資金にしていく」のです。これが、現役・退職世代の投資未経験者に本当に知ってほしいことです
これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。
日経平均株価が1カ月程度調整しています。これは、主に半導体関連の株価調整が原因とみています。 地政学リスクによる心理的な影響も多少はあると思いますが、4月に入ってから原油価格は下落しており、中東の地政学リスクが原油価格を上昇させアメリカの景気を悪化させるようにはみえません。 一方で、昨年末以来の日経平均の上下動は、アメリカの半導体関連銘柄の指数であるSOX指数と似た動きをしています。特に4月に入っての調整はタイミングが似ています。 昨年末から、日経平均は原油価格上昇を気
イスラエルとハマスの紛争がイランのイスラエル攻撃に繋がり、中東の地政学リスクは明らかに高くなっています。原油価格は、中国の需要停滞などからそれほど上昇してきませんでしたが、紛争拡大懸念から一時的な原油高も起こる可能性があります。また、輸出企業の販売数量が減る恐れもあるでしょう。 ただし、メインシナリオは変わらないと見ています。 まず、日本の輸出企業の輸出数量は揺れるとしても、イスラエルとイランの現時点の紛争のみであれば大きなリスクとは言えません。日本への最大のリスクはイラ
4月5日に発表された3月の米雇用統計は、雇用者数増加は予想より多かったのですが、前年同月比の賃金上昇率は低下しました。 つまり、働く人が増えたことで、求人は満たされて雇用者数が増えたのですが、賃金を上げる必要はなくなりつつあるのだと見ることができます。これはインフレ率の落ち着きを示唆するものと考えます。 結果として、米連邦準備理事会(FRB)が早めに利下げを始めなければならないほど弱い経済ではないこともわかりました。アメリカの長期金利は上昇、ドル円相場もドル高方向に動きま
米ドルが強いまま、しばらく150円台を維持しそうです。アメリカ経済が予想以上に強く、インフレ率が低下しても急いで政策金利を引き下げる必要はなさそうだからです。6月ごろに利下げが予想されますが、信用不安も小さく、雇用も順調なので、その後の利下げは当面必要ないかもしれません。 一方、日銀は予想通り政策金利をマイナスからゼロに引き上げました。しかし、まだゼロですからアメリカから日本に資金を移しても預金での金利収入はほとんどないでしょう。金利差で円を買う理由に乏しい状態が続きます。
いまクララが車いすから立ち上がる時が来ています。「アルプスの少女ハイジ」の友達であるクララは、長らく病気だったがすでに立ち上がる程度に回復している日本経済のたとえです。クララはペーターに車いすを壊されたことをきっかけに立ち上がることができました。 日本は労働市場が不況でも調整できない体質なので、一度経済が悪化すると長い間ヒト・モノ・カネの余剰が続いてしまいます。しかし、輸出の好調やコロナ禍からの回復で病気が癒えてきています。 そして、いま、待ち望んでいた設備投資が大きく増
当面、米ドル円相場と日経平均株価がぶれやすい状況だとみています。 まず、報道などから日銀が3月19日にもマイナス金利をゼロ金利に変更するとの期待が高まりました。理由の一つが、まもなくまとまる春闘のベースアップ率が高くなりそうとの予想です。 大企業正規社員の給与上昇の背景には、経営者のこれからの事業拡大への自信があるはずです。日銀は、それゆえ給与上昇が持続的であると判断して、マイナス金利をまずゼロ金利にする可能性が高まっています。3月19日でないとしても、4月26日までには
日経平均株価が3月4日終値で4万円を超える水準に到達しました。この水準だけでなく、到達する速さに驚いています。 このところの上昇の理由は、米国の半導体関連などテクノロジー関連企業の好業績があり、その好影響を受けると期待される日本企業の株式が買われています。 また、4日公表の法人企業統計で2023年10-12月期の設備投資が想定以上に強かったことも良い驚きでした。企業の設備投資の積極化は、賃金上昇の持続に重要です。これまで投資意欲が弱くて残念だったのですが、強さが見えてきま
2月中旬からドル円相場が150円程度で推移しています。 理由のひとつが米連邦準備理事会(FRB)の利下げが遠のいたことです。1月の賃金上昇率が高まったことや高官発言などから、利下げは6月開始、3カ月に1度0.25%ずつというゆっくりしたペースを予想します。 アメリカのインフレ率は3%台前半まで低下しており、5.5%の金利はかなり高いと感じます。FRBはインフレ再燃となることを大変恐れており、現状に合わせて金利を早々に引き下げることに臆病になっているようです。高金利でも経済
日経平均株価が急上昇し、バブル期の1989年につけた最高値を抜く勢いです。日本経済が「余剰から不足へ」大きな転換点となる可能性がある、との私の考えに変わりはありませんが、このところの市場で上昇の理由とされるものはこの転換とは関係が薄いので、今後ブレが大きくなりやすいと予想します。 上昇の理由を4つ挙げて考えます。 アメリカの物価上昇率が高止まりし金利高が続くと、バリュー株優位で日本株が好まれるとされます。しかし、インフレ率はすでに3%台前半で、5%以上ある政策金利が引き下
2023年12月の日本の賃金は前年同月比1.6%と、最近では高い上昇率となりました。今のところ物価上昇率を追い抜くほどの勢いとは言えませんが、良い方向に向かっています。 賃金は、まず人手不足により上昇しました。輸出企業はリーマンショック後、生産量を下げて人を余らせていましたが、現状はリーマンショック前の水準を超える生産が必要で、人手不足です。国内ではコロナ禍からの回復が続き、飲食や観光関連などサービス業でも人手不足です。これまでのところアルバイトなどの時給の上昇がみられます
2月2日に発表された1月の米雇用統計では、雇用者数だけでなく賃金上昇率も市場予想を上回りました。1月の雇用統計はいろいろな調整が行われ、天候にも左右されるので信頼性がやや低いのですが、それでも高めに出たことは確かです。 特に賃金上昇率が4%台で高めを維持したことで、インフレ継続・再燃のリスクが続くため、市場が予想していた3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げは難しそうです。これまで市場予想より遅く4〜6月に利下げが始まると予想してきたのですが、4月(5月1日)とい
日銀が発表した2023年12月の実質輸出は、2002年以来最高の水準でした。大事なことは、リーマンショック直前のピークであった2008年3月の水準を5パーセント以上上回っていることです。 為替の影響を除く輸出の数量がピークを越えたということは、日本の輸出は、過去ピークにおいて生産した量を上回る生産をしていることになります。つまりこれまで以上にヒト・モノ・カネが必要になってきているのです。ドル高円安になって輸出額が増えても、輸出する数量、例えば箱の数が少ないままではヒト・モノ
Jリートは金利の上昇に弱いのか?Jリート(日本の不動産投資信託)は、多くの場合オフィスビルなどの資産の半分程度は、負債を使って保有しています。ですので、金利上昇は借り入れコストの上昇になります。しかし、だから金利上昇に弱いというのは単純すぎる気がします。金利が上がる理由は通常インフレが予想されるからです。インフレであれば賃料が上がるのでコストを負担しても、分配金を減らさないで済みます。 金利は市場参加者がインフレと見ればすぐに上昇しますが、賃料は契約更新まで変わらないこと
アメリカは昨年12月から、また日本は年初から、株価が好調です。 まず、アメリカは金利低下が材料視されているようですが、実際には金利敏感銘柄よりも、半導体などテクノロジー関連の上昇がけん引しています。もちろん金利低下はグロース銘柄への投資家心理の支えになっているとは言えますが、それ以上に、半導体関連銘柄の世界的な利益回復や回復の予想が大きな理由となっているとみています。 さらに、日本でも半導体関連銘柄への注目が強まっており、指数上昇に貢献しています。 日銀が金利引き上げを
日経平均株価は1月15日終値で3万5901円となり、昨年末から2438円上昇しました。日本株には強気の見方をしていますが、この上昇は理由が主に円安と金利安などと説明されているので、長続きしないと心配しています。 昨年から日本株に強気の見方をしている理由は、輸出好調とコロナ禍からの正常化で、日本経済のヒト・モノ・カネが「余剰から不足へ」と構造を変え、賃金上昇、設備投資増加、金利上昇の体質に変わるとみるからでした。これは円高を伴うとみています。 ところが、年初からの日本の株高
2023年に神山の印象に残った3大金融・経済ニュース 今年は日本で印象的なことがいくつかありました。 1. 中国からの観光客が増えないのにインバウンド消費が回復したこと 日本のインバウンド消費(外国人観光客の使うお金)は、中国からの観光客がさほど増えないにもかかわらず回復しています。コロナ禍前より為替レートが円安であることが一番の理由でしょう。裏返せば、140円を超える円安水準は、本来の購買力の比較から見ると円安すぎるのだと思いました。 2. 日銀植田総裁が「チ