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政治資金規正法改正:「自民党を正す」は「万年野党」の手法。野党に政権の座は来ない。


 
自民党派閥の政治資金問題を受けた政治資金規正法改正案が衆院本会議で可決されて、衆院を通過した。自民党は、野党の提案で取り入れられるものはできる限り取り入れたとして、参院も通過させて、今国会での成立を目指すと強調した。
 
しかし、野党側はこれに不満で、さらなる法案修正を求めるとしている。立憲民主党の泉健太代表は「国民が望む改革からほど遠い。政治改革として不合格だ」と発言した。国民民主党の玉木雄一郎代表はさらに過激で、法案を「ザル法だ。ザルのほうがもっとすくえる。多くのものが検討、検討また検討。具体的にはまだ何も決まっていない」と批判した。
 
「政治とカネ」の問題で、野党が攻勢を強めるのは結構なことだ。政治は闘いなのだから、「敵失」を突くのは東電の事だろう。
 
だが、そこにある種の「違和感」があるのは否めない。なんというか、わざわざダメな自民党を野党が「もっとしっかりしなさい!」と躾けてあげているように見えるのだ。
 
その結果、参院でさらなる修正が行われるかもしれない。最後は「野党案丸呑み」みたいな形になることだってありえる。
 
そして、岸田文雄首相が解散総選挙に打って出て、「自民党は変わりました!」と、ドヤ顔で訴えたら野党はどうするのか?「自民党をわれわれが変えました!」とでも主張するのだろうか。
 
その時、国民は「野党よくやった!」とは決して言わない。もちろん「自民党は蘇った、もう大丈夫だ!」とはならないが、野党に手柄には絶対にならないのだ。これでは、政権交代など夢のまた夢なのではないか。
 
私は、この「政治とカネ」の与野党の攻防をみていると、典型的な「55年体制的」だと思う。野党のやり方は「万年野党」の手法なのだ。
 
要は、自民党が政権政党であり、自らは野党であることを大前提として、自分らの主張を自民党の政策に取り入れさせる。そして、支持者に対して、「我々の利益を守りました」と訴える。
 
あるいは、「自民党の政策を我々が変えた」と主張するのだが、結局支持者は野党を評価するのではなく、「それなら、自民党に直接訴えたほうが早い」となる。次第に自民津尾の支持に変わっていく。
 
これで「万年野党」と「自民党の長期政権」が続くわけだが、今回の「政治とカネ」もまったく同じだと思うのだ。
 
 英国の保守党・労働党は、これと同じような問題が起こったら、日本の野党と違う行動をとる。相手の法律を滅茶苦茶に批判するのは日本以上だが、それよりも相手よりより厳しい党内の規則を作り、実行する。そして、「マニフェスト(選挙での政権公約)」に入れて、選挙に勝てば法律を変えると訴える。
 
 選挙の前に、相手側の法律をよりよいものに変えることに協力し、相手に塩を送るようなことはしないのだ。要は、英国は単純小選挙区制・二大政党制で「政権交代のある民主主義」なのでこういうことができる。
 
 振り返って、日本の野党が政権を獲りたいならば、自民党にグダグダな政治資金規正法改正案を、そのまま出させればいいではないかと思うのだ。そして、それを変えさせようとして、結局自民党が変わりましたとするよりも、いかに自民党がダメか、国民に嫌と言うほど見せつけたらどうか?
 
 なにより大事なことは、野党はまず自分たちが、自民党よりカネに綺麗で、裏金などは一切なく、真面目に日本を導いていく集団なのだということを示すことではないか?
 
 そして、「自分たちが政権を獲得し、ダメな自民党が政権の座から去れば、政治とカネの問題は終わる」と訴える。要は、「政権交代すれば変わる」ということが大事なのだ。政権交代なしには変わらない。自民党を退場させなければ政治は変わらないのだと強調することが重要ではないかと思えるのだ。
 
 もう、ザル法なら、そのまま通させてやったらいいではないか。その代わり、政治とカネについて自らの身をきれいにすること。そして、なによりも大事なことは、自分たちが政権を獲った時の構想を作ることだ。
 
「万年野党」という居心地のいいポジションに甘えている場合ではない。野党の間で、つまらないいがみ合いをやっている場合ではないのではないと思うのだが。
 
 
 
 
 
 


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