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上久保ゼミのクリティカルアナリティクス:「学校給食無償化の是非について~」

(2024年6月13日 4回生ゼミ)
学生の議論です。ご覧ください。

上久保のコメント

この問題は、圧倒的に立論側が厳しいので、立論者はよくがんばったと思う。

教育無償化にかかわる政策は、現在のほぼすべての政党が主張する政策となっている。その歴史的経緯、本質的なところを話しておきたい。

そもそも、義務教育を無償化する、特に給食を無償化するということは戦後の「貧困対策」だった。お弁当の大きさ、豪華さで貧富の差がわかるようなことがないよう、「貧困をみせない」という対策だった。

結局、GHQによって「自助」の考え方が打ち出されて、給食費は働いて払うべしということになり、独立後、自民党と社会党の激しい論争の後、妥協の産物として「義務教育費(学費)」が無償化される一方で、「給食費」は保護者が負担するとなった。

それが長らく続いたが、2017年頃から、前原誠司民進党代表(当時)により、消費増税による教育無償化という「All for All」政策が打ち出され、これを衆院選で安倍晋三首相の自民党が事実上奪って選挙公約にして勝利することで、「教育無償化」が政界の潮流となった。

今は、小学校から高校まで無償化が広がり、大阪府に至っては公立のみならず、私学まで無償化を打ち出した。今後、大学にも無償化の波は広がっていく状況だ。

なぜ「教育無償化」かといえば、それは現役世代、中間層、子育て世代、若者対策という狙いがある。

現在の日本の公的サービスのシステムでは、全員が一律サービスを受けられる普遍的なもの(ユニバーサルサービス)ではない。審査があるわけで、その結果、生活保護など貧困層と、高齢者のみがサービスを受けられて、重税感が最も強い現役世代、中間層、子育て世代、若者は払うだけで十分なサービスが受けられない。要は、働ける人は自助でやれということだ。

日本は、少子高齢化で公的サービスが肥大し、財政赤字に苦しんでいる。その解決には増税が必要と、基本的に与野党問わず多くの政治家は考えている。だが、現役世代は払うだけでなにももらえないという不満が強いため、増税への嫌悪感が、世界でも突出して高くなっている。

欧州では消費税率は基本的に20%台。日本はその半分なのだが、増税は本当に難しいのである。

その嫌悪感を薄めるために、ほぼすべての政党が一斉に打ち出したのが現役世代へのサービスが「教育無償化」ということだ。

無償化がどんどん進むと、次にくるのは「増税」だ。すでに、岸田文雄首相は打ち出し始めていて、それが低支持率の一因だ。

これは世界的トレンドで、特に新型コロナのパンデミック時に、国民を救済するためにほぼすべての政府が巨額の支援策を打ち出し「大きな政府」になった。そして、現在は「増税」を打ち出して財政再建に取り組み始めようとしている。

それに対する不満が、欧州に広がる「ポピュリズム」の台頭の一因でもある。

この歴史的経緯と今後の流れをよく理解することが必要だ。




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