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内気な女子高生、職員室で歌う

殷、周、東周、春秋戦国…。複雑きわまりない中国の歴代王朝。その覚え方として、「アルプス一万尺」のメロディーに乗せて暗記するという方法がある。

高校生の頃、世界史の先生がこの覚え方を教えてくれた。おかげで試験の時はすごく役立った。

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問題だったのは、生徒が一人ずつ職員室に行き、先生の前で「アルプス一万尺~中国王朝バージョン~」を歌うという、恥ずかし過ぎるテストがあったことだ。

私は職員室で一人、陽気に歌を歌えるようなキャラではない。授業中に発表するだけでも緊張するタチなのに、職員室で!!たった一人で!!

「いんしゅうとうしゅうしゅんじゅうせんごく…」

と歌うなんて、無理でしょう!!!

と思っていたのだが、このテストは全員強制だった。

やるしかない。そう腹をくくった私は、一発合格するために歌を練習して覚えた。

テストの日、意を決して職員室に入った。他の先生が聞いていないことを全力で祈りながら、ボソボソと「アルプス一万尺~中国王朝バージョン~」を歌い、無事に一発で合格を果たしたのである。

歌のテストは何ひとつ楽しくない思い出だが、私はこの世界史の先生が好きだった。

授業ではいつも、先生が編集した『世界ふしぎ発見!』のビデオを見ながら、世界史を分かりやすく解説してくれた。

先生が結婚する時は学校全体がお祝いムード一色になった。結婚相手は他校に異動した英語の先生。二人とも生徒から人気があり、みんなで自分のことのようにはしゃいだ。

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私が通っていた高校は、素敵な先生が多かった。

部活の後、顧問の先生とランチに行ったり、担任の先生が失恋話をしてくれたり、先生との思い出は多い。ひとことで言えば、生徒と本音で向き合ってくれる先生が多かったのだ。

学校生活では、友達の存在が何より大きいと思う人が多いかもしれない。それは確かにその通りなのだけれど、先生の存在もとても大きい。先生から教わったことが、その後の人生を左右することもある。

先生と出会うのは学校だけではない。習い事、塾、フリースクールなど、色々なところで先生との出会いがある。

あれから時が過ぎ、私は大人になり、子どもが生まれた。自分の子どもにも、素敵な先生とたくさん出会い、色々な話をして、自分なりの未来をつかんでいって欲しいと願う。


※「アルプス一万尺~中国王朝バージョン~」はこちらを参考に。



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忘れられない先生

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