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【部活運営】〜生徒の自主性に任せた部活動運営〜

【はじめに】
 最近教育現場で悪役にされがちな部活動ですが、私は「部活動を通して生徒は大きく成長できる」と考えています。
 今回は、そんな私が日々どのような部活指導をしているかについて書きたいと思います。

1.部活動の意義

 部活の運営方法について書く前に、少しだけ部活動に対する私見を述べさせてください。

 最近の教育現場では、部活動が悪者にされがちです。殊にTwitter上では、部活動を批判するツイートが散見されます。

 かくいう私も、

 部活がなければどれだけ早く帰ることができるだろうな〜

と思うことが多々あります。
 勤務時間外の指導は当たり前で、教員のボランティア精神のもとに成り立っているものだと言っても過言ではないでしょう。
 しかし、部活指導に精を出さないでいると、周り(同僚や生徒、保護者)から白い目で見られるのもまた事実です。

 これだけ見ると、部活指導はまさに諸悪の根源のように感じられます。

 しかし、私は部活動は完全な悪ではないと思っています。部活動だからこそ育める能力や資質もありますし、生徒にとってプラスになることが山ほどあります。

 もちろん、勤務時間外の指導を助長しているわけではありませんし、やりたくもないのに教員が自分の時間を犠牲にしてまでやらなければならないという現状はどうにかしなければなりません。

 ただし、あくまでそれは部活動の在り方の問題であって、部活動そのものをなくす動きには私は反対です。

 私は高校生のときに野球をやっていましたが、あの3年間で本当に多くのことを学びましたし、人間的にも本当に大きく成長できました。(その分多くの時間を失ったのも事実ですが笑)

 そんな高校時代の経験もあり、私は「部活動を通して生徒は大きく成長できる」と考えています。

2.部活動で育成すべき能力

 そもそも部活動では、どのような能力を育成すべきなのでしょうか。

 「勝利至上主義」という言葉があります。運動部の場合、「競技」ですので、そこには「勝者」と「敗者」が存在します。

 当たり前の話ですが、どの部活動も「勝つ」ことを目指すでしょう。「負ける」ことを目指して練習するわけがありません。

 ですから、「勝つこと」が目標になる部活動も少なくないでしょう。甲子園出場や、県大会優勝など、勝つことが最終目標であるチームは多いと思います。

 もちろん、「競技」ですので、勝つことが目標であるのは当たり前でしょう。ただし、勝つことだけにフォーカスして、勝つため「だけ」の指導をしていればそれでよいのでしょうか?

 生徒にとっては、「勝つ」という競技上の目標があれば、練習にも取り組みやすくなるでしょう。より具体的な、●●高校に勝つ、県ベスト4に入るといった目標があれば、練習メニューについても吟味できるようになるかもしれません。

 ですから、生徒に示す(生徒に考えさせる)目標は「県ベスト4」などの競技上の目標でよいと思います。

 しかし、我々教員も、勝つことだけにフォーカスしてしまってよいのでしょうか。

 文部科学省が平成30年に告示した学習指導要領 総則編を見てみましょう。そこにはこうあります。

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 特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること

 これを見ればわかるように、ただ勝つことだけを目指して技能向上に努めていればいいわけではありません

 部活動は「教育」の一環です

 ほとんどの生徒はその競技のプロになることはできません。高校を卒業したらいずれは社会人になります。例えば野球が上手いからといって、社会人として活躍できるわけではありません。

 そのため、部活動を通して、学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成をする必要があるわけです。少なくとも我々教員は、これを意識して部活動指導にあたらなければなりません。

 とにかく勝つことだけを意識して、練習時間を増やし、練習メニューも顧問が決めて、顧問の言うがままに練習しているだけでは、学習指導要領に示されているような能力・資質の育成は望めません。

 ただ顧問がレールを敷いてその上を歩かせるのではなく、生徒が主体となって部活動を運営し、その上で「勝利」も目指していく。そうすることで、部活動を引退した後も、部活動で培った能力は将来必ず役に立つと私は考えます。

3.生徒に任せた主体的な部活動運営

 顧問が全てを決めるのではなく、生徒が主体となって様々なことを決めていくのが理想です。

 私が勤務校で副顧問をしている男子ソフトボール部では、目標はもちろん、日々の練習メニューから、練習時間、活動日まですべて生徒が決めています

 主体的に物事を決めていくことで、どうしたら成長できるのか考えたり、対立する意見の中で合意形成して物事を決定していく過程を学んだりすることができます

 もちろん、顧問である私の方が生徒たちよりも知識がありますし、引き出しもあります。私が考えたメニューをやり続けた方が、技術の向上が見込めるでしょう。

 しかし、私は生徒たちに「ソフトボールだけが上手くなってほしい」と思っているわけではありません。

 部活動を通して、社会に出てから役に立つ考え方やスキルを身につけてほしい。だからこそ、生徒たちに全て決めてもらっています。

 ただし、問題もあります。
 生徒たち自身で話し合ってメニューや練習時間を決めるため、度々口喧嘩が起こったり、雰囲気が悪くなったりします...(笑)

 また、生徒たちが「楽をしたい」と考えると、練習の雰囲気も「自分たちに甘い」ものになりがちで、そうなった時にはこちらから声をかけなければなりません。

 問題が起こった時は助言をしますが、助言は最小限にとどめるよう心がけています。あくまで最終的には自分たちで解決してほしいからです。

 この考え方は授業の時も同じだな、と私は思っています。

 生徒主体で授業を進めて、必要があれば助言する。しかし、助言は最小限にとどめ、自分で解決させるようにする。

 授業も部活動も、このようなプロセスを常に踏めるように私は努力しています。適切な助言をするためには、教員である私が生徒をよく観察し、理解していなければなりません。

 生徒に任せるといっても、放任ではいけません。主体的に取り組む生徒たちをよく見て、彼らが何を考え、どのような問題を抱えているのかを瞬時に判断し、解決への後押しをしなければなりません。

 このようにして部活動を運営していけば、生徒たちは多くのことに気づき、人間的に大きく成長できると思います。

 今後も、生徒たちは様々な壁にぶつかると思いますが、そこを自分たちの力で切り拓いってほしい。生徒たちとともに、私自身も成長していきたいです。

【おわりに】
 今回は、部活動に対する私見と、私が顧問をしているソフトボール部の運営方法について書きました。

 最近何かと悪者にされがちな部活動ですが、部活動を通して生徒たちは大きく成長できます。

 授業だけでなく、部活動でも生徒たちに主体的に考えさせ、自力で問題を解決させることで、生徒たちは多くのことを学ぶことができるでしょう。

 ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました☺️

【参考リンク】

運動部活動の現状について

運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン

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