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MBAに通って抱いた違和感: ちょっとガッカリしたこと

私は昨年(2023年)から米国のビジネススクールに通っており、日本で普通に働いているだけではできなかった様々な経験をしており、やはり米国MBAに来てよかったとは思っていますが、全てに満足しているわけではなく、ガッカリした点もいくらか存在します。MBAでの学びや経験については当noteや他の方の記事にも多く記載されていますので、今回は私が抱いた違和感について書きたいと思います。主観的な内容になってしまいますが、お付き合いいただけると幸いです。

1. アカデミックを頑張る環境ではない

教授や授業内容は素晴らしい
私は、MBAに来る多くの学生のバックグラウンド(金融、コンサルなど)とは異なるバックグラウンドでビジネススクールに来たこともあり、ファイナンスを中心としたアカデミックに重きを置いてMBA生活を過ごそうと思っていました。実際、M7の一角でもあるビジネススクールに通っていることもあり、授業のレベルは高く、教授陣も一流の研究者やビジネスパーソンから構成されているため、授業内容には非常に満足しています。私もビジネススクールに通う以前と比較して、格段にファイナンスを中心とした様々な知識やスキルは身についたように感じます。

アカデミックは二の次にされる環境
となると、問題ははっきり言って生徒側にあると感じます。学校からも「まずアカデミックを最優先に、その後にキャリアだ」と言われており、最初のタームはみんな授業にやる気を出すのですが、1ヵ月もたつとインターンや転職活動、キャリアのためのネットワーキングを重視しだし、授業は二の次、三の次にされてしまいます。ほとんどの生徒がMBAをレバレッジにしてキャリアアップを目指しているため、「アカデミックなんてやってられるか」という空気になるのは分かります。
しかし、多くの課題が複数人のグループで行う設定になっていることもあり、生徒側にやる気がないと深い学びを達成できないというのが実情です。課題はどの授業でもそれなりに重いものが課され、授業の半分以上の学びは課題をやることにより得られるといっても過言ではありません。ひどい場合には、課題をまったくやらないフリーライダーまで出てきます。そのため、そうした困った人たちにも対応する必要があり、ストレスが溜まるときもあります。
なお、こうしたチームワークに関する体験談は以下のnoteに記載しているので、興味がある方は読んでいただけると幸いです。

アカデミックを頑張る人が損をする環境
また、これは私の通うビジネススクールの問題でもありますが、
・チーム課題はチームで一律の評価がなされることがほとんど
・課題提出や授業出席をしていれば単位を落とすことはない
・好成績者に特にインセンティブがない
といったシステム上の課題が存在します。成績上位の数%はDean's Listとして名簿に掲載されますが、特に何かが貰えるわけではありません。就職活動においてもあまり有利にはならないと聞きます。その上で、なんだかんだで適当に過ごしていても単位は来るため卒業はできます。従って、課題も一部のアカデミックを頑張る学生に任せられがちです。やる気を出さない生徒にタスクを振っても締め切り直前まで全く音沙汰がなかったり、成果物の質が低くなってしまうため、結局はできる人がやってしまった方が効率的なのです。私も何度もグループ課題を一人で行った経験が多々あります。そのため、アカデミックを頑張る生徒に対し無駄な負担がいくもほとんど報われない、という構造上の欠陥が出来上がってしまいます。

そもそも優秀ではない学生が一定数いる
正直にいうと、あまり優秀ではない学生がかなり多くいるのが実情です。「優秀」というのにも様々な定義がありますが、ここではアカデミックでいう「基礎学力」と「問題解決能力」です。もちろんネットワーキング、コミュニケーション、交渉力などにおいて優秀な学生は非常に多いです。ただ、アカデミックにおいてはそれほど優秀じゃないな・・・とどうしても感じてしまいます。
「基礎学力」においては特に数的センスがある学生が少ないです。私がビジネススクールでメインに受講しているファイナンスや会計においては数的センスが必須で、投資銀行やその他金融業界から来ている生徒も多いのですが、彼らを含めても正確にモデリングやバリュエーションを行える生徒はほとんどいない印象です。ファイナンスのバックグラウンドがなく、そうした分野にド素人の私でも1学期間学べば大体のことはできるようになるほど授業内容は優れているのですが、ちょっともったいないです。そうした学生と一緒に作業をすることで、自信満々に彼らがモデリングを出してきても結局は私が全部直す羽目になる、ということもありました。
「問題解決能力」については、プロジェクトや発表課題において、解決方針やまとめ方を見いだせない生徒が多い印象です。例えば、企業のバリュエーションにおいては、業界分析から始まって、企業の戦略分析、財務分析、将来予想、株式評価の順に行うのが定石(授業でもそのように言われています)なのですが、こうした方針を見出せなかったり、作業段階でも論理の飛躍が随所に見られるような無茶苦茶な成果物が出てくる場合もあります。そのため、方針決定から成果物の確認まで、全段階において私が面倒を見なければならないこともありました。

私がアカデミックで成功すべく取った勉強法については、以下にまとめています。

2. 生徒のノリが若い

これは私の通うビジネススクールだけの問題かもしれませんが、全体的に生徒のノリが若くついていけないことがあります。生徒の平均年齢は20代後半で、20代後半から30代前半がボリュームゾーンです。私もこのボリュームゾーンの中心くらいにいるのですが、同年代の学生のノリが若くちょっと困ることもあります。
まず後先を考えない生徒が多いです。ネットワーキング、ソーシャル、パーティ、プライベートの用事、就職活動などの予定を自身が対応できないほどtたくさん入れてしまい、結果つぶれてしまって、他の人に課題やプロジェクトで迷惑をかけてしまう人が結構多いです。
また、(私は家族帯同で来ているのですが、)独身で来ている学生が多数を占めていることから、恋愛関係もかなり多く見受けられ、某恋愛リアリティショーよりもよっぽどビジネススクールの中を映し出した方がリアルではないかというほどです。友人との飲み会でもそういった話題が多々出ます。私が余りそういったことに興味がないので、憂鬱になることもあります。

3. 日本人のなれ合いがめんどくさい

毎年、多くの日本人が海外MBAを受験し、そしてビジネススクールに通っています。私は受験時、そして入学後の両方において、ちょっと日本人のなれ合いにめんどくささを感じています。もちろん、日本人がいることで助かっている面も多々あることは申し添えておきます。

MBA受験時の仲間づくりに抱く違和感
「MBA受験には一緒に勉強する仲間が必要だ」「MBA受験は情報戦だから他の受験生とのつながりが大切だ」という意見が巷にはあふれており、実際そういったつながりを持つなとは言いませんが(もちろん、MBAに行った後も交流を持つ仲間を作る意味では重要だと思います)、無理して作る必要はないと思います。私は、知り合いにそういった受験生ネットワークに入ることを知人に勧められましたが、一切入りませんでしたし、それでも志望校に合格しました。
まず、TOEFL、IELTS、GMATなどのMBA受験に必要な試験勉強については然るべき塾や教材を活用して1人で行うことが効率的だと思います。「一緒に受かりましょう!」などとSNSで交流している方もいますが、所詮はライバルで(なんで一緒に受かりたいか正直分からない…)、自分だけ受かればよいのですから、一人でやればいいと思います。
また情報戦の意味でも、ビジネススクールのホームページや日本人サイト、塾の情報を活用し、然るべきタイミングで在校生や卒業生、アドミッションの方にアプローチすれば、必要な情報は十分に得られます。
また、受験生ネットワークに入ることで、「●●が面接に呼ばれた」「××は既に受かった」などという噂話も多く耳に入ってくるため、合格発表を松美として精神的にも辛い思いをするリスクがあると思います。
そのため、やみくもに受験仲間をつくるのではなく、まずは自身がMBA合格のため、その後の自身のキャリアに何が必要なのかを考え、必要であれば受験生にアプローチするのがよいかもしれません。

日本人同士の閉鎖的な環境
複数人日本人が在籍するビジネススクールでは日本人コミュニティがかなりの確率で出来上がります。この日本人コミュニティは、異国での生活、授業の受け方、ネットワーキングの仕方などにおいて非常に助かるのですが、どうしても閉鎖的な環境になってしまいます。つまり、自身の言動がすぐに広まってしまったりすることがあり、ちょっと息苦しさを感じることもあります。家族同士の付き合いも濃密になり、私が家族に言ってなかったことが(とくにやましいことではないですが)、友人と友人の奥様を通じて私の妻の耳に届く、なんてことも日常茶飯事です。
最初の方は日本人コミュニティでの飲み会などの会に参加していましたが、私も私の妻もそれほど日本人コミュニティには興味がなく、あまり中身もないことが多いので、現在は距離を置くことにしています。わざわざ米国まで来て日本流の飲み会はしたくないなあ、という感じです。

4. MBAの世界を全てだと感じてしまう

日本での仕事を離れビジネススクールでの生活に1年以上身を置くと、どうしてもMBAで日々接する世界が中心であると考えてしまうようになります。具体的には、MBAに来ている学生のバックグラウンドや卒業後の主な進路である、金融(投資銀行・PEなど)、コンサル、テック、ベンチャーなどに関わる話を日々聞きます。しかし、私はそういったバックグラウンドではなく、また日本ではほとんどMBA採用を行っている企業も先述の分野の企業以外にはないため、帰国後の会社生活との乖離がかなり大きいです。MBAで学んだことを帰国後の会社でのビジネスに活かしたいとは思っているため、そのギャップを埋めるべく日々思案中です。


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