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ここにいない誰かを想うこと

今日、地元で働く幼なじみの美容師に髪を切ってもらった。
片道1時間半かけて行く。

当然、実家の近くに行くことになるのだけれどいつも寄るとは限らない。
今日はその友達が、「たまには寄って行ったほうがいいよ」というので、母に電話してみた。

すると、昨日兄家族が遊びに来ていたらしいが、帰り際から母の具合が悪くなってしまったという。
寒気がして、吐き気がして、一度もどしてしまったらしい。
そのまましばらく様子を見てもらったらしいが、大丈夫そうだということで兄達は帰った。

今朝はゆっくり寝て、午後の1時過ぎだというのに水を2杯飲んだきりだという。
心配だが、声にも張りがあり、今はそんなに悪くないということは電話口から分かった。

「ランチにでも誘おうかと思ったんだけど」とわたし。
「車で迎えに行くから家で何か食べる?」と母。

駅から歩いて行くには20分弱かかるため、車が必須な田舎だ。

わたしは、正直なんとなく行きたくなかった。
心配だけど、夕方用時があるので行ってもすぐに帰らないといけないし、送り迎えしてもらうのも大変だろうし、また今度にしたかった。

母は、わたしの描いたストーリー通りにしてあげられないことに「ごめんね」と謝る。
「化粧も何もしてないし、来てもらってもいい顔できないから」という。

また具合悪くなったら電話してね、という事で話はまとまり、今日は会わないことになった。

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遠かろうが何だろうが、タクシーでも使って顔だけ見に行けばよかっただろうか。
今夜、万が一のことがあったらきっと一生後悔するだろう。
しかし、後悔するのはわたしだけじゃなく、母も同じだろう。

なんて格好つけた母と娘だろう。

今日の電話は、お互い、最近で一番"いい人同士"の会話だった。

こうやって、
困った時に頼らないでひとりで乗り越えようとする所や、「いいから今から行くから待ってて!」と言えない所、そっくりなんだよね。

格好悪いところを見せ合うべき場面で、繕い合う。

親子ってそんなもんだっけ?

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映画監督の西川美和さんのエッセイの中で、
「撮影中は、現場のスタッフなどに対して要求や不満ばかり抱くけれど、すべて終わり、離れた時に、とても愛しい存在だと噛みしめる」というような事が書いてあった。(解釈が間違っていたらごめんなさい)

とても共感できる。

でも、これは傷つきたくない人間の勝手な自己防衛であり、言い訳だと思っている。

離れてるから愛しいなんて、なんて都合がいいんだろう。

わたしと母は、都合のよい選択をした。

母はこんなこと考えていないのは分かっている。もはやそういう人として生きているから。

でも、わたしはそろそろ格好付ける生き方はやめてしまいたい。

また週末には母に子守をお願いしている。
東京まで来てくれる。

死を意識して生きているなんて言いながら、
まだまだ母は死なないだろうと信じたいわたしがいる。

#エッセイ #親子 #母娘 #家族 #生き方 #愛 #cakesコンテスト


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