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行動経済学の逆襲 要約⑬

 コロナ禍で、マスクの転売が問題視されていましたが、市場原理にのっとれば、需要の高いものの価格上昇は当たり前のことだといえます。
 果たして、どこまでが許容されてどこからが不当だと感じるのでしょうか? 今回は第14章「何を公正と感じるか」の要約です。

【全体の要約】
 経済理論では、需要の増加が価格の上昇を招くのは当然の結果だと捉えられるが、一般消費者は「不公正だ」と感じる。
 この「不公正感」は、普段の取引条件が悪化したときに感じるものであり、企業への不信感にもつながりかねない。

1.便乗値上げ 

 例えば次のような話を聞いてどう感じるでしょうか?

 金物屋は、これまで雪かき用のシャベルを15ドルで売っていました。大雪が降った日の翌朝、この店は、シャベルの値段を20ドルに引き上げました。

 経済理論にのっとれば、需要が高まったと気に値段があがるのは当然の結果だといえます。
 しかし、この行為について、「容認できる(公正だと思う)」と答えた割合は18%、「不公正だと思う」と答えた割合は82%でした。
 このような値上げは「便乗値上げ」とよばれ、人々は不公正だと考えることが分かりました。

2.公正感は保有効果と関係がある

 消費者にとって、何が「不公正感」を与えるのでしょうか?それは、自分たちが慣れ親しんでいる取引条件が悪化したときです。 
 例えば、通常価格からの割増や、賃金の低下、などには不公正感を感じてしまいます。
 
 なので、「普段は割引しているが、繁忙期は店頭表示価格」と「普段は店頭表示価格だが、繁忙期は割増料金」だと、同じことをしているのに後者の方が不公平感を感じられやすいのです。

3. 企業が「不公正」なふるまいをしてしまった事例

① ファーストシカゴ(銀行)
 アメリカのファーストシカゴという銀行は、導入したばかりのATMの利用率が伸びていないことを課題と考えていました。そこで、ATMでもできる取引を窓口で行う際には、3ドルの手数料を取ることにしたのです。
 
 すると、この施策に対して市民から猛反発を食らうことになります。実際に手数料を払った人はほとんどいなくなったそうです。
 ATMの利用率は高くなったかもしれませんが、企業の信頼はなくなってしまいました。

② ソニー
 2012年、ホイットニーヒューストンが亡くなった際、iTunesのホイットニー関連の作品の価格が値上げされました。ファンの怒りは当初Appleに向けられましたが、値上げの原因はソニーが卸値を上げていたことだと発覚し、ソニーに非難が集中しました。
 
 目先の利益を追いかけて、信用を失う長期のリスクに目を向けなかった例と言えます。

 
 このように、「不公正感」を与える取引は、一時的な利益に結びつくかもしれませんが、長い目で見ると企業への印象を悪くします。
 しかし一方で、ホテルなどでシーズン料金などの割増料金が存在しているのも事実であり、すでに一般に許容されている範囲内での割増料金を見極めることも、大事だといえます。

以上が第14章の要約になります。

次回予告
次回からは、第15章「不公正な人は罰したい」です。


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