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舞台を観劇する感覚を堪能できる漫画『マチネとソワレ』|漫画オススメまとめ#130

好きな漫画を勝手にレビューしている
「漫画オススメまとめ」
今回、紹介するのは『マチネとソワレ』です。

この漫画は僕とってクリーンヒットでした。

演劇×パラレルワールドの絶妙なマッチ

『マチネとソワレ』には、漫画の好きな要素がぎっしりと詰まっています。

演劇そのものの魅力を存分に引き出しつつ、非現実的なパラレルワールドの要素を見事に絡めていると思いました。

ここからは、設定やコマを紹介しながら、本作の面白さを共有したいと思います。

作品紹介

舞台。それは世界で唯一、「生きている」と実感できる場所。
限られた者にしか見えない景色が―――そこにある。

かけだし役者・三ツ谷誠が掴んだ最大のチャンス。
直後に訪れる、予想だにしない事象。

運命は―――二人の役者を主役に選んだ。

大須賀めぐみが挑む、自己顕示欲フルスロットルな演劇スターダム・サーガ!

ゲッサンWEB

兄の2号と呼ばれる主人公

はじめに、根底にある設定を紹介します。
三ツ谷兄弟についてです。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』1巻 第1話より

🔍三ツ谷兄弟とは
主人公の三ツ谷誠には兄がいます。この兄弟は、何よりも芝居が好きで、役者を続けてきました。

しかし、誠の努力も虚しく、世間や家族からもてはやされるのは、兄であり天才の三ツ谷御幸ばかりです。
そのうえ、御幸はある悲しい出来事がもとで、5年前に亡くなっていました。

主人公の三ツ谷誠は、偶然乗った水玉のタクシーで、パラレルワールドに到着します。
すると、元の世界では逝去した兄の御幸が、生きていました。

そのため、御幸に芝居で勝てなかったことを気に病んでいた誠は、この世界で「兄貴に勝ちたい」と宣言します。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』1巻 第1話より

芝居の勝負か、元の幸せか

しかし、15巻では違った表情を見せています。

それが「元の世界に戻れるかもしれない」となるシーンです。

「今ここで戻ったらどうなるんだろう?」
「でも、みんなの期待を裏切ることになるのではないか」

と、誠は悩みます。

この葛藤から決断に至るまでは、非常にリアルで、とても良いと感じました。

このように本作は、演劇とパラレルワールドの要素が絶妙にマッチし、本当に面白い作品に仕上がっていると思います。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』15巻 第82話より

少年歌劇シュミレーションゲーム
「ジャックジャンヌ」について


余談ですが、石田スイさんがキャラクターデザインなどに関わった「ジャックジャンヌ」というゲームがあります。
僕もプレイしましたが、絵が美しく、学園生活のなかでスターを目指すという設定が独特で、とても良いと思いました。

ゲームの中でスターを育成するというコンセプトは、「パワプロ」のようなスポーツゲームでも見かけますが、「ジャックジャンヌ」は舞台の話が中心です。
これはかなり新鮮で、心に響きました。


芝居の迫力が息づく物語

俳優と声優の違い『魔王 JUVENILE REMIX』

つづいて、印象的な演技の話を紹介します。
誠が声優にチャレンジするシーンです。

ここでは作者の過去作、『魔王 JUVENILE REMIX』が登場します。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』10巻 第54話より

魔王 JUVENILE REMIX』について

この作者の人間描写は非常に独特で、なかでも目元に不幸さを漂わせた表現が印象的でした。

『魔王 JUVENILE REMIX』では、主人公が最初に死んでしまったり、最後までライバルを倒せなかったりと、救いようのない展開が続きます。
全10巻のうち、結末では少しだけ世界が良くなったような雰囲気を残して終わりますが、あっという間に終わっちゃったという印象がありました。

社会的なテーマを持ちながらも、その独特なタッチで描かれたこの作品からは、読み終わったときの虚無感を強く感じたんです。

しかし、その作者が新たに描いた『マチネとソワレ』、これがまた違った魅力を持っていました。

正直、僕は過去作をPRするような手法が、あまり好きではありません。

IPの関係でそうなることは理解できますが、やはり少し違和感を感じてしまいます。

しかし、本作は違いました。

声優と俳優の対比から、演技の本質に迫る展開がとても秀逸です。
気づけば「面白いな」と思っていました。

大須賀めぐみさんの作品が好きな方は、『マチネとソワレ』も読んでみるべきだと思います。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』11巻 第60話より

役作りのために一万円札を便所紙にする狂気

ここで、なぜ本作に引き込まれるのかを、少し考えてみたいと思います。

思い返すと『マチネとソワレ』が話題になり始めたとき、まず目にしたのはXでした。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』1巻 第1話より

ポストの内容は、一万円万札でお尻を拭くというキャッチーなシーンです。

このシーンがSNSで広まり、多くの人が「なんだこの漫画は?」と興味を持った人も多いのではないでしょうか。
ただ、この作品の本質は、そうしたキャッチーさだけではありません。

『マチネとソワレ』はまるで、漫画のなかで毎回、一つの舞台を鑑賞しているような感覚を味わえる作品だと思います。


愛情の解釈が揺さぶられる「孤島の鬼」

最後に、本作の忘れられない芝居を二つ紹介します。

一つは、「孤島の鬼」です。

この芝居の山場では、男性二人が洞窟から脱出できない状況に追い込まれ、抑えていた感情が爆発します。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』9巻 第47話より

しかし、その感情が本当に愛情なのか
あるいは別の何かなのかは、

演じる人によって、解釈が全く異なりました。

この多様な解釈を、漫画のなかでわかりやすく描いているところが、素晴らしいと感じます。


2.5次元舞台の地雷キャラ「エドアルド」

もう一つは、「クラス・ブルーオーシャン」のエドアルド役です。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』5巻 第24話より

🔍エドアルドとは
・二次創作から人気に火がついたキャラクター
・原作漫画全10巻のうち3箇所だけ登場する
・フルネームとバックボーン不明
・メインエピソードなし

ここでは、キャラクター最優先の2.5次元舞台で、公式設定のない役を演じる難しさが描かれています。

その演技への取り組み方は、非常に面白いです。

演技プランが明らかになるにつれて、公演を楽しむ観客のように、何度もハッとしました。

正直、僕の表現力では充分に伝えきれないかもしれませんが、それでも作品全体のなかで特に印象的な部分です。

この話自体が、本当に好きだなと感じます。

出典:大須賀めぐみ/小学館『マチネとソワレ』7巻 第33話より

まとめ

『マチネとソワレ』は、ここ最近読んだ漫画のなかで、一番クリーンヒットした作品です。

素直に「これは良い漫画だな」と感じます。演劇やパラレルワールドものが好きな方には、特におすすめです。

読めば読むほど引き込まれる作品なので、ぜひ手に取ってみてください!

(ヘッダー画像引用元:ゲッサン編集部 @gessanofficial

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