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【読書感想】『戦国、まずい飯!』(著・黒澤はゆま)

戦国時代~江戸時代辺りの食文化は、個人的にたいへん興味のある分野です。
ということで読み始めた本書は、戦国時代の食に関するエピソードを紹介しながら、当時の食事に関する文献を調査し、可能な限り当時に近い形で再現して実食してみる、というなかなかにユニークな試みをしている歴史本です。

糠味噌汁や干し飯、武田信玄で有名なほうとう等、著者が当時の食文化を紐解きつつ、実食もします。
真田信之が放浪の際に食べたという道端に生えていた雑草(スギナ)まで食べているあたり、著者の歴史に対するほんのり狂気混じりの情熱が感じられて、個人的に好印象。
知識を述べるだけではなく、実際に我が身で体感(実食)してみるというアグレッシブな姿勢も素晴らしいです。
既に書名でネタバレしている通り、残念な結果になってしまう事が多いわけですが。

当然の事ながら、戦国時代と現代では味の価値観が違います。
例えば、戦国武将の食事献立を実際に再現する戦国レシピ解説本『武将メシ』(著者・永山久夫)によると、戦国時代の漬物等を当時のレシピで再現するとかなり塩辛いそうで。
これは、戦国時代の武将や兵士達は現代人とは比較にならないほどの運動量=毎日の発汗量がえげつない事になっていたので大量の塩分補給が必要だったから、という背景があるようです。
その辺りの食の背景を深堀りしていくと、現代人の舌で感じるところの「まずい!」の裏にも興味深い物語があるわけで、そこが面白いところだと感じます。

戦国時代という争いの絶えない不安定な時代で、そこが戦場であろうとも人は毎日飯を食べていかなければならず、そこに大いなる創意工夫や技術・食文化の蓄積が生まれたわけです。
その辺りを”著者による再現&実食”という切り口で学ぶことが出来る一冊でした。


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