ショートショート「付箋と魔法少女」
最近の文房具はデザイン性に優れているものが多い。私が目にする中ではダントツで付箋がそうである。キャラクターものや柄がプリントされたもの、どれも共通しているのが書き込むスペースがかなり少ないし粘着部分もかなり弱い。会社の後輩のミナちゃんは色んな付箋を使っている。
「これ、確認お願いしまーす。」
数枚の書類のうえにキャラクターが描かれた付箋が貼っており「確認お願いします」と書いてある。すでにその付箋の粘着部分はとれかかっているようだった。
口でいうなら付箋の意味ないじゃんというツッコミをすることは野暮であることを知っている。
「これ、最近人気の漫画のキャラクター?」
私はアニメや漫画の類には全く詳しくないのでそのキャラクターが何の漫画なのかは分からない。
「美菜子先輩、知らないんですか?今すっごく流行ってる漫画ですよぉ!魔法少女やっててそっち方面本当、全然詳しくないですよね。」
魔法少女だからと言ってアニメや漫画に詳しいわけではない。まぁ仲間ではそういうものに明るい子もいるけど、と言おうとしたところサイレンが鳴った。
「最近、本当多いですよねー。早く避難しなきゃ。
キリ悪いなぁ。」ミナちゃんがボヤきながらタンブラーを取り出して避難の準備をする。
私はトイレで変身を済ませ、会社の窓から飛び出した。筋トレをサボっているせいか身体が重い。
昔は筋トレやランニング、ボクシングも習っていたのに最近じゃこの体たらく。強くなってたくさんの人を助けたいと思っていた頃とは比べ物にならない運動量だ。もちろん悪い意味で。
そのくせネイルやメイク、ヘアスタイルは以前よりも意識が高い。SNSで劣化と言われて以来外見にはより気をつけている。昔よりも敵を討伐するのに時間がかかってしまう。
私もあの付箋と同じだ。機能性よりデザイン性。
強さより見た目の可愛いさや綺麗さ。
敵を倒して会社に戻ったのはすでに18時過ぎだった。デスクには先ほどの書類と追加でファイルが3冊。その上にはキャラクターものでもない、柄ものでもない業務用のピンクの無地の付箋でこう書いてあった。
「すいません!今日イベント最終日なので定時で帰ります!今度必ず埋め合わせさせてください! ミナ」
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