ふたりのために、ふたりでリスクを取る
今月から新しい会社で働き始めた。業界も生活スタイルも組織のカルチャーも大きく変わった。夫がいなければこの転職には踏み切れなかった。
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転職を考え始めたのは去年の7月ごろ。コンサルティングファームで製造業向けの事業再生を担当していたので、大手メーカーの経営企画や事業企画で探すのが筋かなーと考えていた。
仕事が忙しくて転職活動と並走するのが難しかったので、一旦退職してからゆっくり探そうと思っていた。そんなときに、大手エージェントから、ある会社の求人が届いた。教育・福祉系のベンチャー企業で、以前から存在は知っており、強い興味があった。
とにかく一旦話を聞いてみようと思い、すぐに書類を出したら、複数回の面談を経て、予想外に内定が出た。
内定をもらってから悩み始めた。製造業とは全く異なる業界に行くことで、これまでのキャリアが生かせないのではないか。今の上司にはどう伝えよう。組織の文化も変わるので、適応できるのか心配。
特に気にしていたのは、年収が下がること。
これは業界の給与水準が異なるので仕方のないことだし、自社の名誉のためにいえば、決して仕事内容に対して理不尽な額ではない。そもそも、今までだって、消費する体力や精神力に見合ったリターンだったのかは微妙である。それでも、自分でも本当にしょうもないと思うけど、これまでは給与額や貯蓄額、昇給が続いている事実によって、いまの生活への納得感や自尊心を維持していた。
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夫は、内定を一緒に喜んでくれて、強く背中を押してくれた。わたしはこれがとても嬉しくて、自分の選択に自信と希望を持つことができた。
彼の後押しが力になったのは、ふたつ理由がある。
まずは、彼がわたしのバックグラウンドや価値観、強み弱みを誰よりもよく知った上で、客観的に判断してくれたことで、説得力があったから。
もうひとつは、夫として、一緒に収入減のリスクを取ってくれる相手だったから。独身時代ではなく、結婚していたからこそ、強いパワーを持ったと思っている。
夫に金銭面で助けてもらうということをダイレクトに意味してはいない。もともと同棲時代から、収入バランスに関係なく共益費は完全折半にしている。もしもうまくいかなくても、養ってもらえばいいやという短絡的な話ではない。
結婚とは、今後の人生を一緒にデザインし、課題を乗り越えていくチームを組成することだと思う。そのためには、お互いのリソース(時間・お金・スキル)を開示・共有して、どこにどう使うか一緒に考えていく必要がある。具体的には、家事分担はどうするか、どこに住むか、賃貸なのか持ち家か、子どもはどうするか…。
わたしがどんな仕事を選んで、どんな生活スタイルでどれくらい稼ぐか。わたしの意思は尊重されてたとしても、わたしひとりの問題ではない。彼の人生にダイレクトに影響を与えるものなのだ。
その前提のもと、リスクも承知の上で、それでもわたし自身およびふたりの理想の人生に近づく選択だと信じて、夫がコミットしてくれたのが嬉しかったのだ。
以前、現代の結婚制度に対する違和感について書いた。
一方で、結婚という手段が、ふたりという単位で未来を考える契機になり、それがわたしの人生をより自由に豊かにしてくれている。夫と結婚してよかったと、いまのわたしは言い切れる。
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