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結婚式の業務フローを改善してみた

わたしたちの結婚式のテーマは「ゲストオリエンテッド」だ。結婚式を挙げた時点でお互い30歳を超えていたので、友人や会社同僚の結婚式への参列経験が10回以上あった。そのなかで感じてきたモヤモヤを解消するような結婚式にしたかった。

参列経験のなかで特に強く思っていたのが、出欠確認とご祝儀支払いの業務フローが非効率すぎるということだ。ゲストとして億劫に感じることに加えて、新郎新婦側にかかっている負担の大きさを想像して恐縮するようなプロセスも多い。わたしは本業でBPR推進や業務効率化を担当している。自分の仕事だったら、このフローを放置するのは耐えられない。

もちろん伝統や儀礼を重んじるのが日本人の良さであり、結婚式というセレモニーにおいてとにかく効率化すればいいわけではない、それは理解している。ただし自分の披露宴には、親族や会社の上司は招かず、年齢層の近い気心の知れた友人に絞ることを決めていた。既存のプロセスに捉われずにチャレンジできる環境である。絶対にめちゃくちゃ綺麗なフローにしてやることを心に誓い、結果として、ほどよくシステム化して新郎新婦・ゲスト双方の負担を減らす業務フローが作れたと思うので、同じようなジレンマを抱える方、これから結婚式準備を始める方に向けて紹介したい。

出欠確認フロー:Before

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まずは(かなりズボラな)わたしたちが参列者として経験してきた、出欠確認あるある。

はじめに友達からLINEで「結婚式を〇月〇日に挙げるんだけど、都合どうかな?」と連絡が来る。「参加するよー!」と回答すると「じゃあ招待状送るから住所教えて!」と聞かれ住所をLINEで答える。

当日が近づいてくると招待状が郵便で送られてくるので、返信はがきの期限を確認する。返信が面倒ゆえにここでしばらく放置してしまうことが多い。一度だけそのまま出し忘れたことすらある(ごめんなさい)。すでに出席の意思は伝えているんだから、なぜもう一度回答する必要があるんだろう?と開き直ったりする。なぜ面倒くさいかって、尊敬語を謙譲語に修正する謎の「日本人の常識テスト」プロセスが発生するからである。

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「御」と「様」を全部二重線で消す。「御出席」は「慶んで出席させていただきます」に書き換える。ここでちょっと間違えたからって誰かに後ろ指さされるわけではないが、念のため毎回見本画像をググる。

そして住所記入欄があるので、すでに一度伝えている住所をまた伝える

ついでに普段ポストに郵便を投函する機会がないので、出勤ついでに投函しようにも、駅前のポストの位置が思い出せない。はじめは「一応、大安の消印のほうがいいかな?」と考えるが、気付くと期日ギリギリでそれどころではない。

新郎新婦側への負担も相当なものだ。式を挙げる立場になって驚いたが、ペーパーアイテムは高い。招待状の場合、印刷代にさらに往復の切手代がかかり、1通あたり平均700円かかる。ゲスト数十人分の回収状況を都度チェックして、返信がない人を個別にフォローするのも一苦労だ。

出欠確認フロー:After

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この業務フローの最終ゴールは出席者リストを作成すること、すなわち「参加人数」と「出席者の名前」を把握することである。住所を把握する必要はない。なのに従来のプロセスでは、住所情報を2回も参列者に求めている。

住所を回収するのは招待状を送るためだ。LINEで意向を確認した上で、改めて招待状で正式回答を求めるのは、参列者の出席へのコミットメントを高める効果がある。問題は郵便というツールを使うことだ。ここを変えることにした。

具体的には、招待状の代わりにLINE公式アカウントを、返信はがきの代わりにGoogleフォームを使用した。

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あまり知られていないが、LINE公式アカウントは無料で作れる。自分たちの結婚式専用のアカウントを作って、ゲストに「友だち追加」してもらう。すると出欠を正式回答するためのGoogleフォームが、チャットボットから自動送信される。LINEで友人に直接GoogleフォームのURLを伝えるのではなく、公式アカウント登録を促してそこからフォームURLが送られる仕組みにしたことがポイントだ。この公式アカウントは直前リマインドや後日の写真共有などにも活用したのだが、参加者全員かならずLINE登録されている状況を作れた。

Googleフォームの素晴らしさは、回答がスプレッドシートに一覧化される点にある。これで出席者リストがほぼ自動で作成される。「渡邉」か「渡邊」かみたいな名前表記の人為ミスもゼロになる。

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ご祝儀支払いフロー:Before

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こちらも(かなりズボラな)わたしたちの顧客体験エピソードから。

新札の一万円札を3枚用意して、ご祝儀袋に入れて、ふくさに包む。事前に準備しておけばいいのだが、準備がギリギリすぎてテンパったことが何度もある

まず新札が用意できない。ただの言い訳だが、平日昼間に銀行に行くのは、普通のサラリーマンにはハードルが高い。やむなく当日の朝に「土日 新札 交換」でググる。同類の人たち(=ズボラ)は全員、渋谷のみずほ銀行に新札専用ATMがあることをすでに把握している。とはいえ思い立った時には残り時間が少なく、渋谷駅のダンジョンを突破する余裕はない。式場のフロントで新札交換に応じてくれる可能性があることもリサーチ済みだが、到着してからの賭けになる。やむなく最寄りのATMで20万円引き出して、いちばんシワのない3枚をピックアップして、残りをATMに戻す。

そういうときはご祝儀袋も用意できていないので、仕方なくコンビニで買う。筆ペンも買う。そして封筒に名前や金額を書きたいのだが、だいたい手ごろなテーブルが見つからないので、会場についてから壁で書いたりする。大抵ここにも住所記入欄があり、「いったい何回住所を伝えればいいんだ…!」と思う。

すでに結婚式を挙げた友人たちによると、苦労して手に入れたご祝儀袋は、閉宴後に家族総出で開封され、すぐに捨てられるそうだ。結婚式費用は大抵当日中に支払う必要があり、集めたご祝儀は即座に支払いに充当されるためだ。新札かどうかも、可愛い袋に入れてくれたかどうかも見ていない。

ご祝儀支払いフロー:After

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自分たちのゲストには、自分と同じ轍をどうしても踏んでほしくなかった。なので現金そのままで払ってもらうようにした。参加者に対してはLINE公式アカウントにて、新札やご祝儀袋を用意してもらう必要はないことを直前に念押しした。

さらに言えば、ATMにも行かないで済むようにしたかったので、PayPayでも払えるようにした。PayPay支払いを受け付ける準備はすごく簡単で、受取用のQRコードを掲示しておけばいい。ほかの電子決済サービスと異なり、手数料も一切かからない。但し、受取る金額を指定しておく必要がある。ご祝儀は通例的な目安金額があるといえども、ゲストお祝いの気持ちを表すもので、主催者側が金額を指定するようなものではないと考えたので、ご祝儀制ではなく25,000円の会費制にした。ちなみに当日は、参加者の30%くらいがPayPayで支払ってくれた。

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ご祝儀袋を廃止したことには副産物もあった。袋に入っていないので、受付でそのまま金額の集計ができる。閉宴後のヘトヘトの状態で一気に紙幣を数えるという作業が発生しなかったのはありがたかった。

結婚式に効率化は必要か?

わたしは結婚式に参列するのが大好きだ。招いてもらうのは光栄だし、幸せな瞬間に立ち会えるのは嬉しい。

これまで参列してきた結婚式や、従来のやり方を否定するつもりはない。手間のかかったオシャレな招待状が届いたらテンションは上がる。ちゃんと余裕があるときは、可愛いご祝儀袋を雑貨屋さんで選ぶのだって楽しい。

わたしたちは、自分たちが結婚式を挙げる意味や目的をじっくり考えた。招くゲストの顔も思い浮かべた。結果、自分たちのパーティーにおいては、お互いに手間をかけることで当日の期待感を高めることよりも、ゲストの費用・時間コストを下げることがホスピタリティだと考えた。当日の2時間を最高のものにすることだけでなく、事前準備をストレスなく楽しむことも重視した。

親族や会社の上司が参列するのであれば、LINE公式アカウントもGoogleフォームもPayPayも使わなかっただろう。「何のために、誰のために、どんな場にしたいのか?」が必ず先にある。効率化はその手段の一つに過ぎない。

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