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第9期京都ライター塾第2回レポ記事~インタビュー原稿の書き方~

 あなたにはインタビューをしてみたいと思える人がいるだろうか。その人の話や考え方を聞いて、それを文字や言葉にして世に届ける。もしもあなたにそんな相手がいるのなら、それができる仕事が商業ライターだ。

 商業ライターの仕事は、誰かの伝えたいことを言語化して、伝えること。ここで言う「誰かの伝えたいこと」とは、それこそインタビュー対象者の気持ちかもしれなければ、食べ物や製品、スポットの魅力かもしれない。

 そしてそれらを言語化して誰かに伝えるために大事なこと。それは事前のインタビューや取材による、原稿の素材集めだ。

 しかし素材とは一口に言ってもその種類は様々ある。取材対象者に聞いた話や具体的な数字、現場で見たこと感じたことのほかに、5W1H(どこで、だれが、いつ、なにを、なぜ、どのように)などもインタビュー原稿を構成する素材に含まれるだろう。

 そしてそれらの素材を組み合わせた先に原稿がある。素材の全体から書くこと・書かないことの取捨選択(編集)をして、次に順番(構成・流れ)を考える。結論までイメージできていれば、なお良いだろう。

 ここまでが完了して、やっと「書く」作業に入ることができるのだ。さあ、準備は整った。次はいよいよインタビュー原稿を書く作業だ。

 するとあなたはついキレイでオシャレな文章にしようと努力してしまうかもしれない。しかしここに商業ライターとしての落とし穴がある。

 インタビュー原稿を仕上げるうえで、美しさや上手さは二の次と言っていいだろう。最も気にするべき部分は、受け手がそのインタビュー原稿を読んだときに「わかりやすい」と感じるかである。

 講師のえずさんは「商業ライターとしての原稿の書き方」として、以下の3つを挙げた。それは①第三者として書くこと(黒子に徹する)②読者に意図を読み取ってもらうのではなく、答えをズバリ書くこと③具体的な素材を盛り込むことだ。

 「誰かの伝えたいこと」と「読み手」の間でパイプになることが商業ライターの役割だ。だからこそ商業ライターは時に無機質な存在として、「自分の伝えたいこと」ではなくて「誰かの伝えたいこと」を優先する必要が出てくる。

 「誰かの伝えたいこと」をわかりやすく届けるために、オシャレな言い回しや難しい四字熟語はジャマな要素となり得ることもあるだろう。商業ライターは書いて終わりではなくて、それを読み手にきちんと理解してもらうことで、はじめて仕事が成り立つのだと僕は思う。

 では、そのようなインタビュー原稿を書く前に考えておくべきことは一体なんだろうか。

 「わかりやすさ」とは受け手の視点で語られるものだ。そのため「わかりやすさ」を求めるためには、受け手のことを考える必要がある。誰(どんな人)が読むのかや、文体はどうするか。この記事で何を伝えたくて、読んだ後の読者にどうなってもらいたいか。このような読者目線を、商業ライターは「わかりやすさ」のために考えておくべきだ。

 「伝えたいことがある誰か」と「読み手」。その両者に寄り添った文章を心がけることで、はじめてパイプとしての役割を果たすことができるのではないだろうか。

 しかしここまで聞いても、未だインタビュー原稿を書いたことのない僕たちは、なにからどのように書き進めれば良いのかわからないかもしれない。

 そんなときは、あなたが理想だと考える記事を分解して、その分析をしてみてほしい。どんな流れでどのようなことが書いてあるか。よく使われるワードや文体のイメージなど。それらが理解できれば、あとはその記事をマネしてみよう。学びはマネるところからだ。きっとそこにインタビュー原稿の書き方に関するヒントがたくさんあるはずだ。

 講座では実際に記事を書いてみるワークもあった。お題は「好きなお店」に関する情報を第三者として客観的に書くというもの。目指すのは「読者がそのお店に行きたくなる」記事であり、僕は理想とする記事をマネてワークに取り組んでみた。その結果気がついたことは、マネできる「型」があるだけで、原稿がとても進めやすくなるということだ。

 それは文章の流れから、素材の活かし方まで。特に紙媒体では使用できる文字数にも厳格な指定があるため、その媒体で先人のライターたちが残してきた記事の数々をマネることは、駆け出しの商業ライターにとって大きな助けとなるだろう。

 実際に書き終えた後には、推敲と音読をしてみることも大切だ。

 推敲では誤字脱字のチェックはもちろんのこと、分かりにくい表現や同じ表現の繰り返し、表記統一、不要な部分を削る作業なども求められる。また、音読することによってその原稿のリズム感を掴むことができるため、より読みやすい文章にすることができるだろう。

 これらを整えた後に、その原稿をクライアントや編集者に提出することができる。しかしここでも忘れたくはないのが「わかりやすさ」だ。

 原稿を提出する先にいる人間は、一番はじめの読者だと考えていいはずだ。彼らが読者である以上、彼らにも「わかりやすい」ものを届ける必要がある。ここでいう「わかりやすさ」とは、その媒体であなたの記事が載ることをいかに提出先の人間にイメージさせることができるかということだ。原稿の見た目やその媒体における記事のレイアウトなども考慮することで、あなたの記事がその媒体に載ることを「わかりやすく」イメージさせることができるはずだ。

 ここまでの過程を経て、やっとあなたの記事は読者のもとへと届く。あなたの記事を読んで感動する人やタメになったと思ってくれる人もいるだろう。しかし同時に意識しておかなければならないこともある。

 それは世の中には、文章を読むことが苦手な人もいれば、ただ情報を知りたいだけだという人もいるということだ。また、文章が最後まで読まれないことだって少なくはないはずである。

 あなたがもしも商業ライターとしてやっていきたいと考えるならば、このようなことを意識したうえで、「どんな原稿にも心を込める」ことが大事だと、えずさんは言う。

 僕はこの話を聞いて、商業ライターには「書かせてもらっている」という意識が必要なのだと感じた。

 当たり前のことかもしれないが、商業ライターという仕事は「伝えたいことがある誰か」と「読者」の両方が揃ってこそ、成り立つ仕事だ。そしてそれはつまり、どちらのことも考えた記事を書く必要があるということだと思う。

 だからこそ、商業ライターは「伝えたいことがある誰か」の想いを最大限に汲み取り、それを一人でも多くの「読者」に届けようとする創意工夫をするべきだ。きっとそのような工夫を凝らすことこそが、個人でも発信が可能な現代における、商業ライターの価値にもつながるのではないだろうか。

 最後に。原稿は締めの言葉が大切だ。他にもいる受講生の方々のレポ記事もぜひ読んでみてほしい。たとえ同じ講座を受講していたとしても、締めの言葉一つでこの講座に対する違った印象や個性が発見できるはずだ。

 書く前から読者に届くまで。心を込めて創意工夫し続けることで、良いインタビュー原稿はつくられる。


                             浅野凜太郎


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