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受験生の冬


会社帰りの私はコーヒーを飲みながら本を読んでいた、駅からほど近いビルの中に入っているミスタードーナツのお店。

「コーヒーお代わりいかがですか?」

「お願いします」

お店の人からすすめられるがままにお代わりをいただいて、本に眼を落とす、
しばらくすると隣の話し声が耳に入ってきた。

「コーヒーお代わり無料なの?俺知らんかった」

高校生男子二人組は随分前から滞在しているらしく、お皿の上には何も載っておらず、コップの中は空っぽで氷さえ残っていなかった。
受験生に違いない、それらしい題名のたくさんの参考書が机の上に散らかってる、私は思わず隣に座っている彼らに声を掛けた。

「そうだよミスドはコーヒーお代わり無料、
カフェオレとロイヤルミルクティもお代わりできるからね」

「ありがとうございます」

「いい事知ったよな俺ら」

そう言うと彼は参考書の表紙に赤いペンで、
コーヒーとカフェオレとロイヤルミルクティーはお代わり無料、ただしホットだけ。
そう書き込むとぐりぐりと丸で囲みしげしげと眺めている。

その様が可愛らしくて応援したい気持ちになった。

長時間の滞在はご遠慮下さい、そうお店には注意書きがある。けれど静か過ぎずうるさ過ぎない場所は勉強捗るよね、うんわかる。
お小遣いは節約したいだろうから、無料と言うキーワードに反応してしまうのも無理はない。


高校生男子ならドリンクはアイスを選ぶのは自然な選択だよ。
コーヒーの美味しさにハマるのは、もう少し大人になってからかもしれない、その様子を見て優しい表情になってる私がいた。

今現在私は、彼らより自由に使えるお金がある、ドリンクだって選べる、それなのに限られたお小遣いの中でやり繰りしている彼らが羨ましくなった。


これから受験シーズンに突入だ、
体調を崩さず桜咲く春がやって来るといいね、心からそう思った。


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