見出し画像

農業ベンチャーでのお話【6】:トマトが風邪をひいた

こんにちは、農業ベンチャー企業を退職し、余生を前借り中の主婦 K Yoshieです。
閲覧いただき、ありがとうございます♪

今日はパートとして働き始めて2か月くらいたった頃、トマトが病気になったお話を綴っていこうと思います。


白い粉

トマトの収獲やパッキング、葉かき。
ルーチンで行われる管理作業はある程度できるようになってきて、作業がますます楽しく感じられるようになっていた。

葉かきをすると、トマト独特の青臭い香りがする。
好き好きはあるだろうが、私はこの香りが大好きだ。
目の前の葉をどんどん切り取り、前へ前へと進んでいく。

光の加減で、葉を切り取ったときに、不意にホコリが立ったのが見えた。
なんか違和感を感じた。

さっきまでは、慣れない作業を正確にすることだけに集中して、手元の葉の付け根ばかりを見ていた。
でも突然、今、植物体全体をちゃんと見る目にバージョンアップした。

葉が白くなっている。
あ、この葉っぱだけではない。
あっちも、こっちも、、、
見ると葉の表面に粉砂糖のような白い粉が、あちこちに積もっている。

社長:『うどん粉病かなぁ』

ネットで検索してみる。
乾燥と多湿の繰り返しで発症する病気らしい。

当時の自分は、ハウスで毎日手入れをしていれば、病気や虫の心配がなく、露地でやるよりも無農薬で育てるのは簡単だ、と思っていた。
無知は恐ろしい。。。

うどん粉病が発症していた樹は、一定の場所に偏って存在していた。
日当たりがよく、ハウスの入り口通路に面した場所。
日中は一番よく日が当たり、乾燥が激しい場所。
夜間は隙間風が入り、寒くもなる場所。
なるほど、、、
病気が出るにはちゃんと理由があるんだ、と思った。

病気を引き起こす菌は、空中になんぼでもいる。
ハウスの中にも、外の空気の中にも。
それを無菌室のような状態になんてできるはずもない。

菌がいる前提に立って、罹患させない管理をする。

うどん粉病は【植物にとっての風邪】のようなもの
ヒトと同じで、風邪に負けない体力をつけ、風邪をひきにくいような適切な環境を整えてあげる必要がある。

汚染された葉の摘除や農薬散布といった対処療法だけではなく、根本治療、つまり【急激な乾湿差をつけない】管理が求められる。
ハウス内の環境を適切にコントロールする。

病気をきっかけに【環境制御】という大きなキーワードに行き着いた。


気温と湿度(参考)

中学校の理科で習った、飽和水蒸気量とか、あの辺りの話です。
農業って理科の実践の場だなぁと、農業に従事してみて、つくづく思います。

気温が高くなると、空気中に含むことができる水蒸気量、【絶対湿度】が増えます。

ハウスでは、たいていは【気温が高い=日射量が多い】ことになるので、気温が上がると光合成も促進されて、蒸散も多く起きるようになります。

なので、
気温UP → 光合成UP → 蒸散UP → ハウス内の絶対湿度UP
となります。

でも、夕方になり、日射量が減少していくにつれて、ハウス内の気温も低下していきます。

すると、
気温Down → ハウス内の絶対湿度Down  → 空気中に含みきれなかった余分な水蒸気が【結露】として葉や茎、果実などに出てくる → 水滴を拠点に菌が繁殖 → 病気が目に見えるようになる

という感じで、、
一日のハウス内の温度差が大きくなるほど、結露のリスクが高まり、菌の繁殖リスクも高まります。

このため、日中は高温になりすぎるのを避けるように、換気を行ったり、遮光用のカーテンを天井を覆うように施用したりします。

逆に、夜間は冷えすぎないように暖房機をつけたり、天井などのビニールにあえて結露させて、その水をハウス外に排水するなどします。

初秋や初春が特に結露が起きやすく、管理がとても難しい時期です。
この時期にハウス栽培をされている農家さんは、結露が起きないように、慎重に管理を工夫して栽培をされています。



この記事が参加している募集

#仕事について話そう

110,502件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?