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【演劇】サド侯爵夫人(サラダボール)

 2024年2月18日(日)、こまばアゴラ劇場で、サラダボール公演の『サド侯爵夫人』を観劇しました。なかなかまとめるのが難しく、筆が進まなかったのですが、記録を残します。

■公演概要

(1)日程・会場等

  • 日程:2024年2月10日(土)~2月18日(日)

  • 会場:こまばアゴラ劇場@東京

  • 上演時間:約3時間(全3幕/2幕と3幕の間に15分間の休憩あり)

(2)スタッフ・キャスト等

  • 作:三島由紀夫

  • 演出:西村和宏

 インターネットで、こまばアゴラ劇場のページなどを見ると、西村和宏さんは、香川県(四国)を拠点として活動する演出家で、サラダボールを主宰されているとありました。サラダボールは、演出家・西村和宏が、古典戯曲から現代戯曲まで様々なジャンルの作品を上演する「場」とあります。

(3)あらすじと出演者等

18世紀末のフランス、虐待と乱行を繰り返し、貴族の身でありながら投獄されるサド侯爵アルフォンス。
それでもなお貞節を貫き、夫に尽くすサド侯爵夫人ルネに、世間体を重んじる母モントルイユ夫人は、(アルフォンスとの)別れを迫る。
やがてフランス革命が勃発し、混乱の世が訪れる中、アルフォンスの釈放が決定する。

チラシから引用。()内は補足。

・ルネ(サド侯爵夫人):高橋なつみ
・モントルイユ夫人(ルネの母親):鈴木智香子
・アンヌ(ルネの妹):永山香月
・シミアーヌ男爵夫人:横関亜莉彩
・サン・フォン伯爵夫人:申瑞季
・シャルロット:ほりゆり

■感想

(1)6人の女性たちによる会話劇

 登場人物は、サド侯爵を巡る女性たち6人です。サド侯爵は、彼女たちの会話の中には出て来ますが、登場はしません。
 6人の女性たちがそれぞれ持つ意味については、新潮文庫の後半に、三島由紀夫の解説がありましたので、引用します。一義的に意味を固定させかねないので、私個人としてはあまり好きではない分類ですが。

サド侯爵夫人・ルネは「貞淑」。厳格な母親モントルイユ夫人は「法・社会・道徳」。敬虔なクリスチャンのシミアーヌ男爵夫人は「神」。性的に奔放なサン・フォン伯爵夫人は「肉欲」。ルネの妹・アンヌは「無邪気、無節操」。家政婦・シャルロットは「民衆」を代表するものとして描かれ、これらが惑星の運行のように交錯しつつ廻転し、すべてはサド侯爵夫人をめぐる一つの精密な数学的体系となる。

「跋」(『サド侯爵夫人』)、新潮文庫P220〜P221

 美しい言葉と論理で、6人の対立が続きます。全三幕ですが、二幕後半のルネとその母親の言葉の応酬が一つの山場であったように思います。
 新潮文庫の裏表紙に以下の記載がありました。

炙り出される「エロスの咎」、「貞淑な妻」の本意とは?

新潮文庫の裏表紙

 私は、この場面で「貞淑」とは何か考えさせられました。どれだけ自分の欲求を表にだすか、あまり欲望をおし留めると、気取っていると受け取られかねません。
 現代でも、「肉食系」「草食系」と言われることもありますが(少し古いか)、どれだけ自分の本能を出すかの問題のように思いました。

 肉食系と思われるサン・フォン伯爵夫人やアンヌについては、衣装に革が使われている部分もあり、観劇前に自分が想像していたより、ハードだったように思います。

(2)ラストシーン

シャルロット「サド侯爵がお見えでございます。お通しいたしましょうか。」

新潮文庫より

 ラストシーンで、サド侯爵・アルフォンスが釈放され、ルネの部屋を訪ねてきます。そこで、ルネはどのような判断を下すのか、重要な部分であり、伏せておきます。

 私個人としては、納得出来る(しっくりくる)結末でした。結論よりも過程が大事というか、現実がどうであれ自分の気持ちが大事というか。

 私も3時間あまり舞台を観ていたのですが、最後は舞台と一体化し、サド侯爵が舞台に出てこないこともあり、「私がサド侯爵です。」と自分が、帰還したサド侯爵のように思えました(笑)。
 これは私個人の解釈ですが、舞台を観ていた人で(男女を問わず)同じような感覚を持った人はいなかったかな、と考えたりしました。

 全く別の文脈ですが、ルネの台詞の中に、「アルフォンスは、私だったのです。」という言葉もあり、同一感が芽生えるような気もしました。

■最後に

 季節は春になり、新年度が始まろうとしています。会社に着て行っているスーツが擦れ切れている部分もあり、お金はかかりますが、安いものでも買い替えないといけないかな、と舞台を観終えた後に思いました。

 本日は以上です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。写真は、舞台で鏡(ミラー)が多様されていたこともあり、「鏡」で検索し、しのよしのさんの画像を使用させて頂きました。こちらもありがとうございました。

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