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立憲民主党は「護憲」を捨てられるか

今度の参院選で、立憲民主党は、なるべく安全保障から「暮らし」「経済」問題に、話を逸らそうとしている。それは、すでに報道された選挙公約案で判明している。

そうは言っても、間もなく発表されるであろう公約で、9条護憲にどれだけコミットするか、注目している。


もちろん、参院選だけで国会の議席が決まるわけではない。

しかし今度の参院選の意味は、

日本維新の会か、立憲民主党か、

国民が、どちらを野党第一党に選ぶか、という点にあると思う。


それは、「保守2大政党」か、「保革2大政党」か、どちらの道を進むのかの選択でもある。

国民は、自民党一党体制がいいとは思っていない。政権交代可能な政治体制がいいと思っている。

各種調査によれば、維新と立憲は支持率において互角だ。

だが、維新の方に勢いがある、というのが多数派の見方だと思う。


なぜ維新か。まだ得体のしれない政党である。

立憲民主党ではないから、という消去法が多いのではないか。

それは必ずしも、保守かリベラルか、という選択ではない。

この世界情勢下では、「立憲共産党」に政治を担わせるわけにはいかない、と考えるからではないか。

維新は公約に改憲を入れる。

護憲派の立憲よりも、改憲派の維新の方が、まだしも国防を考えていると思える。

それも、リベラルか保守か、とは関係ないのだ。


「護憲」はリベラルな課題ではない。

それどころか、ある特定の国防観を全国民に押し付けている、という点では、価値観の多様性を前提とするリベラルの理念を裏切っている。

そして、9条解釈論で政治資源を浪費し、国防についての実質的な議論を妨げ、世界情勢に柔軟に対応できない、という不利益を国民に与えてきた。

それについては、井上達夫氏をはじめ、リベラル側から何度も何度も警告していた。

改憲して、現に存在する軍隊の存在を認め、実質的な国防論議をすべきだ、と。そうでないと、政権を担う政党とみなされない、と。


改憲して、軍隊の存在に責任を持ち、その上で、「平和外交優先」とか「軍備は最小限」とか「アジア中心」とかの防衛姿勢を国民に問えばいいのである。

護憲か改憲か、という不毛な争いではなく、どのような安全保障体制を選ぶのか、将来的に日本を世界の中でどう位置づけるのか、そういう議論をしてほしいのだ。

そして、軍隊の存在を前提として、基地負担の軽減、兵士の人権保障、徴兵の公正化、良心的兵役拒否の法制化など、リベラルとしての課題に取り組むべきだった。

しかし、それをしなかった。

「護憲」と言っている方が楽だったからだ。

左派マスコミ、朝日・毎日と一緒に、政府・自民党を批判していればよかった。自民党が改憲を言うほど、野党は「護憲」を言わねばならなかった。

そこで、今回のウクライナ情勢となり、これまでの「護憲政党」の怠慢がはっきりして、劣勢となっている。


リベラルな層は、本当は、保守2大政党ではなく、保守VSリベラルの2大政党の方がいい、と思っていた。

しかし、「護憲リベラル」が、その思いを裏切ってきたのである。

共産党はすでに9条護憲を重点政策として打ち出している。この情勢で、「自衛隊は違憲だが使う」という、まさに井上達夫のいった「お前を認知しないが、お前は俺のために死ね」をいう、兵士の人権などハナから考えない共産党などと声を揃えて「護憲」を叫ぶのか。

それがリベラルなわけはない。ただの無思考・無責任であり、立憲民主党のいう「まっとう」の真逆の政治だと国民全員に思われて仕方ない。


まだ間に合うかもしれない。リベラリズムと「護憲」は関係ない、ということを、早急に認識してほしい。

小沢一郎も枝野幸男も改憲派だったはずだ。政権交代を目標とするなら、なぜ「護憲」を見直せなかったのか。なぜ政権交代という「お株」をむざむざと維新に奪われるのか。

今度の選挙で、国民のリベラルな層が立憲民主党を決定的に見限り、維新に流れたら、取り返しがつかないかもしれない。残る支持者は左翼だけである。


今度の参院選で公約に「護憲」を入れたら、もう駄目である。

立憲民主党の泉代表は「安全保障から逃げない」と言いながら、「市民連合」の要請する「9条改悪反対」を明確に退けていない(「改悪」が悪いのは恒真命題だろう)。

共産党、「市民連合」、辻元清美のような党内左派を抑えられるとは思えない。

左派は、安保法制を「戦争法」と言って盛り上がった過去も忘れられないだろう。

防衛論を「戦争か平和か」のような詐欺的議論に変えようとするだろう。

日本は米国産軍共同体と戦争を企てているといったDSも真っ青の陰謀論にすら訴えるだろう。

そうして、せいぜい2割くらいの票を取って、満足するのだろうか。


左翼を切り捨て、改憲に明確に舵を切れば、初めて政権交代可能なリベラル政党と国民にみなされ、その上、改憲で保守層と中間層の取り込みを図ろうとした維新に一泡ふかせて、お株を奪い返せる。

そうなるよう祈りたいが、まあ駄目だろう。



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