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takanoyama
歯を食いしばるな!
歯医者さんから「ブラキシズム」という単語を教わった。
bruxism ___歯科的に問題がある「歯ぎしり」のことだ。
それが高じると「咬耗症(こうもうしょう、attrition)」となる。
歯と歯が不適切にこすれあい、ボロボロになる。
私には、その恐れがあるという。
それはあれですよ、歯医者さん。
私は苦労の多い人生を送ってきた。
貧乏な生まれで、
田舎から上京し、
40年間、宮仕えの不条理に、
歯を食いしばって耐えてきた。
歯を食いしばって頑張ってきた。
それで歯を食いしばるのが習慣になったのでしょう。
と私の人生の苦難を、歯医者さんにひとふし訴えようと思ったら、
「固いものを食べるのが好きじゃないですか?」
と医者が聞く。
「ナッツ類とか」
「ああ、ナッツ類は好きですね。酒のつまみはだいたいナッツ類です。あれはライザップ的にもいいし」
「それがあんまりよくない」
と医者は言う。
この問題のある人は、固いものをよく食べるそうだ。
ガム、スルメ、昆布などもよくない。
「固い食べ物が歯にいい、と思っている人がいる。間違った考えです」
私はその間違った思想を持っていたかもしれない。
固いものをガシガシ噛み砕いて食べるのは気持ちいい。
ていうか、
歯を大事にしてきたのは、固いものを、いつまでも食べられるようにしたいからだ。
歯は大事にしろ。でも、固いものは食べるな。
ということだと、なんのために歯を大事にするのか。なんか話がちがう、という気がする。
「ともかく、意識的に、できるだけ歯を食いしばらないようにしてください」
はい、歯を食いしばらないように、歯を食いしばって頑張ります。
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