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安倍晋三、「従一位」の意味

安倍晋三氏に従一位大勲位菊花大綬章・頸飾が与えられた。

(8月23日追記。下がリンク切れになったので、上のリンクを追加)


「従一位」が叙位(位階)、「大勲位菊花大綬章・頸飾」が叙勲(勲章)だ。


位階は、奈良時代の律令制導入以来続く、日本の最重要の「人事」といえる。

基本的には宮廷での序列、天皇との距離を表す。

位階には、正一位から少初位下(しょうそいのげ)までの30階があった。今は、従八位までの16階だ。

五位未満と五位以上で大きな差があり、五位以上は天皇自身が決めていた。

そして、正真正銘の貴族と呼べるのは三位以上だった。

(遠山美都男他「人事の日本史」参照)

現在は、「一位」は天皇自身が決める「親授」、二位から四位までは「勅授」などとされる。


最高位は「正一位(じょういちい・しょういちい)」だが、戦後に叙任者はいない。

戦後の事実上の最高位「従一位(じゅいちい)」叙任者は、以下のとおり。


戦後の「従一位」叙任者(いずれも没後)

牧野伸顕(内大臣) 生前「正二位」
松平恒雄(初代参議院議長) 生前「正二位」
幣原喜重郎(総理大臣) 生前「従二位」
鈴木貫太郎(総理大臣) 生前「正二位」
吉田茂(総理大臣) 生前「正三位」
佐藤栄作(総理大臣) 生前「従四位」
中曽根康弘(総理大臣) 生前「従六位」
安倍晋三(総理大臣) 生前「無位」

安倍氏の場合、生前に「無位」であったことが目立つ。

ただ、中曽根康弘の「従六位」なども戦中の叙任であり、戦後は、生前叙位叙勲そのものが時代に合わないとされた事情がある。

安倍の祖父、岸信介はどうだったかというと、戦中(昭和18)、国務大臣になった時点で「正三位」になったが、その後は動いていない。やはり戦犯被疑者になったのが影響したのだろうか。没後叙勲では、安倍晋三らが得た最高位「大勲位菊花章頸飾」につぐ、「大勲位菊花大綬章」が与えられた。

安倍氏の父、安倍晋太郎は無位のままのはずだ。

いずれにせよ、安倍晋三氏は、大叔父の佐藤栄作に続いて、これ以上ない叙位叙勲を得た。

位階「一位」を独占する家系は、日本史上は藤原家や徳川家などしかいない。位階から見ても、安倍や麻生太郎(高祖父の大久保利通、祖父の吉田茂が従一位)の家系は、現代の藤原家のようなものだろうか。



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