新総裁は「マスゴミ」を変えられるか
自民党総裁選が面白いのは、候補者がどうしても国家ビジョンの話をせざるを得ないからだ。
英紙フィナンシャルタイムスも、自民党総裁選について、「党内の妥協の産物ではなく、国家ビジョンを示せるリーダーを」と説いた。
マスコミにとっては、それが困る。
マスコミがあまりしたくない話がある。天皇制と憲法9条だ。現下で国家ビジョンの話は、この二つに(間接的であれ)触れてしまう。
私もマスコミにいたが、マスコミが使うコメンテーターには条件がある。天皇制と憲法問題に積極的な発言をしないこと、そして、マスコミ批判をしないこと、だ。
これらに言及せず、漠然と「社会が悪い」とか、与党自民党の悪口だけを言ってくれる人が都合がよい。
こうしたマスコミの姿勢が、他の諸々のこと(紙に固執してデジタル化を遅らせたことなど)とともに、日本の民主主義の発展を阻害してきた。
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総裁選報道が過熱するとともに、毎日新聞などの旧体制メディアを中心に、早速、「切り取り」発言での与党批判、そしてモリカケ桜に話を戻そうとする動きが始まっている。
こうしたメディアは、ふだん、官庁や役所にいる共産主義シンパや反保守層からのタレコミに頼って仕事をしている(それだけではないにしろ)。だからそれは、彼らに対する義理立てでもある。
しかし、それ以上に、総裁選の話題が、天皇制や憲法9条に及びそうになるのが怖い。この二つの話題になると、マスコミ人の脳内は、少し大げさに言えば恐慌状態になる。
「さよなら朝日」という本を書いた朝日の記者が、「憲法9条が平和を守ってきた」とか「高校野球は健全で純粋だ」とかいった、一方的価値観だけで記事を書かされること、いつの間にかそれに慣らされてしまうこと、についての違和感を語っていた。
戦後日本の「意味の縛り」が、国家ビジョンについて語ることへの忌避感をマスコミに植え付けているのだ。
だから、総裁選で候補者が語る「国家ビジョン」は、マスコミによって濾過され、曖昧化されるだろう。候補者も、それが分かってくると、曖昧なことしか言わなくなる恐れがある。
そして、今月いっぱいは、総裁選の話題の副旋律のように、いつもの、麻生太郎などの「失言」の「あげつらい」と、モリカケ桜の「アベガー」を、われわれは聞かされることになるだろう。
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安倍晋三の功績の一つに、既成マスコミ、とりわけ左派メディア(朝日・毎日・東京など)に妥協的でなかったこと、それでも政権を長期に保持できると証明したこと、が挙げられる。
これまでの首相は、とにかく表面上は、主流マスコミに逆らわず、妥協的であった。安倍は、麻生と共に、そうした姿勢を変えた。
これまで政治権力がマスコミと妥協してきたのは、マスコミが「民意」を代表していると思われていたからだ。しかし、マスコミの言うことを聞かない安倍が選挙で勝ち続けたことは、既成マスコミがもはや「民意」の主宰者ではないことを示した。
安倍も、麻生も、マスコミに敵対的なのは、主流マスコミに痛い目に合ってきたからだ。
今では忘れられているが、第一次政権時の安倍は、とても若かった。52歳だったのだ。史上最年少、戦後生まれ初、だった。
今の総裁選に出ているどの候補より若い。河野ですら58歳である。
当時のマスコミ各社社長よりはもちろん、編集局長や政治部幹部よりも若かった。こういうことは、これまでなかったのだ。
こうした世代交代を許せなかったのは、政界の長老たちよりも、マスコミの上層部だった。
第一次政権の時、安倍はすごく意気込んで国家ビジョンを語った。
しかし、マスコミ内部ですぐ聞こえたきたのは「安倍は生意気だ」「挨拶にも来ない」といった声だった。
安倍には、朝日の「NHK番組介入問題」記事で、盟友の中川昭一と共にひどい目に遭わされたという思いもある。妥協したくなかった。
若い宰相は結局、マスコミにイジメ抜かれて、第一次安倍内閣は倒れた。
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しかし第二次内閣になると、状況が少し変わった。この間にマスコミの政治的立場はより弱くなり、安倍への態度も昔よりは丁寧になった。
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その状況は、ネトウヨの叢生(群がり生じること)を許し、安倍が調子こいてネトウヨとイチャイチャする事態を招いた。なぜ安倍はそうなったか。左派メディアへの恨みの深さだろうが、最終的には安倍の心の問題としか思えない。
安倍は、マスコミとの対決姿勢は良かったが、それが、戦後のタブーを破った国民的議論には繋がらなかった。ネトウヨとの蜜月が良くなかった。国家ビジョンを広く論じるためには邪魔になったからだ。
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マスコミとの関係について、次の総裁は、安部の先の段階に進んでもらわなければならない。
妥協的ではないが、ある程度マスコミと協力態勢を築けて、国家ビジョンについて、広く国民的議論を喚起できる人になってほしい。
その過程で、マスコミを変えてほしい。
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