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子どもとお金の話をしていますか?

 子どもとお金の関係は、家庭教育において重要なテーマのひとつです。子どもがお金について学ぶことは、将来的な自立につながるだけでなく、人間形成にも大きく影響します。子育て中は、教育費だけでなく、住宅ローンや食費など、お金がとてもかかる時期です。けれども、子どもにお金のことを話すことは、親にとっては苦しくて簡単なことではありません。
 だからこそ、親と子どもの間で、「お金」のことを話すことは大切ではないでしょうか。今回は、実際に子どもへわが家の家計のことを伝えたご家庭の事例を紹介します。どのタイミングなのか、どのように話したのか、ぜひ参考にしてください。
 お金に対する考え方は、文化や環境によっても大きく異なります。けれども、子どもにとっては、自分の家庭におけるお金の使い方が一番身近な実例・・であり、親がお金をどのように扱っているかを知ることで、子ども自らのお金に対する考え方に大きな影響を与えることでしょう。

家計のピンチを乗り切れたのは、家族で予算を考えたから(Aさんの場合)


 Aさんご夫婦は、40代でそれぞれの両親を見送りました。それぞれの両親との別れは、小中学生の息子2人の教育費がかかる時とも重なり、精神的、時間的にも経済的にも大変な時期でした。
 息子2人は、3歳からスイミングスクールに通い、選手コースに属しています。シーズン中の土日は毎週のように大会があり、出場費、強化合宿など2人合わせて年間50万もの支出に。

住宅ローンに介護、教育費・・・

 結婚して10年は、出納帳に収支を記帳していたというAさん。地域で開催された家事家計講習会で、『羽仁もと子案家計簿』を知りました。最初の3年は、Aさん一人で予算を立てていましたが、不意の支出を減らすには家族の予定の把握がかかせないと、家族から折に触れ、行事予定のほか、今なくて不自由なもの、来年必要なものなどを話題にしていきました。それらを実現させるたいと、「予算」について迷ったり悩んでいる親の姿を見て、家族も予算を考えて暮らすことを理解するようになったといいます。
 二男が小学校に上がると、1年の決算を家族で囲んで生活を振り返り、翌年の予算を考えるまでに、ステップアップ! 二男が小学生の頃、思いがけず水球の全国大会出場の切符を手にしました。いろいろ経費を計算してみると自己負担額8万にも上りました。それを見た二男は、「予算にないから、僕は行けないよね」と半ばあきらめて言ったそうです。
 急な大きな出費は、確かに予算を取っていませんでした。けれども「いざという時のために準備しているお金」を以前から貯蓄として予算に取っていたので、大会に行くことができました。
 4人の親の介護や見送り、住宅ローンと、出費が重なったときも、安心して家計運営ができたのは、家族で「わが家の家計」を共有していたからとAさんは振り返ります。

大学進学を前に子どもたちに家計を知らせました(Bさんの場合)

 子どもにお金の話をすることを躊躇する家庭もあるかと思いますが、わが家はそんなことは言っていられませんでした。
 長男の大学進学を考え始めたことから、経済状態をいつも正直に話すようにしてきました。長男は県外の大学への進学を希望していましたが、親としては地元の大学でも十分に学べることと思い、家計簿を示しながら時間をかけて話し合いました。当時は住宅ローンがあり、教育準備金として備えてきたつもりでしたが、現実に年を追うごとに膨らんでいく教育費は想像を超えていました。
 長男には奨学金のことを話し、わが家の経済状況とも考え合わせて提案したところ、素直に受け入れてくれました。翌年、大学に進学した長女も最初から奨学金のことを考え、それぞれ卒業後、約280万円を自分で返済していくことを納得しての進学となりました。それでも、2人とも遊学のため、教育費の月予算は42万円、1年で500万となります。
 わが家の家計簿は、いつでも誰でも見ることができるようにしています。子どもたちも「予算」ということがわかってきているようで、娘はある日「私の衣服費はあといくら残っているの?」と聞いてきました。
 長男は、「奨学金の返済を思うと、ムダ遣いはできない。毎日の食事作りには苦労するが、外食はあまりしない。家にいるときは無頓着だったが、夜更かしをすれば光熱費が跳ね上がることもわかった。進学するとき、家計全体の話を聞いたが、自分もお金の使い方について考えられるのだと、両親に認めてもらえたようで、うれしかったし、知ってよかったと思う」。
 長女も、「家の経済について、知らせてもらってとてもよかった。親の経済的な負担を軽くしたいと思っているので、奨学金はありがたい制度。就職して早く返したい。アルバイトをしている友人が意外と少ないのは、仕送りが十分あるということ? 私は、買い物は夕方からの割引品を利用したり、おにぎりをつくって、朝食やお弁当にするなど、工夫している。小さな出費も、気がつくと大きな額になると実感した」と、振り返っています。

まとめ:お互いの予定を聞くことから、または、習い事の月謝からでも

 いきなり、わが家の家計を公開されても、子どもも戸惑うだけ。まずは、Aさん家族のように、予算を立てるときに、来年の予定やほしいもの、新調したいものなどを聞きあうことから始めてみてもいいのではないでしょうか。
 今回紹介した2家庭以外にも、子どもたちを交えて予算について話し合いをもったCさん。「4月から全寮制の私立中学に進学することが決まった長男は、父親が子どもの教育費を備えるために、自分のこづかいを減らして貯蓄にあててきたと知り、気持ちに変化があったようです。それまで父親が多忙で一家団欒の時間が持てず、父子の間に距離があることを感じていましたが、長男もこれまであまり実感できていなかった父親の愛情を感じ取ったのか、私にはいいにくいことを父親に相談したりするようになって、親子の会話が増えました」。予算会議には、思わぬ効果もあるようです。
 例えば、習い事に子どもが「いきたくない」と言った時に、「月謝払っているんだよ。1回〇〇円!」と話してしまうことはないでしょうか。ただ、その場で感情的に話してしまっても、なかなか子どもに本意は伝わりません。
 今回の2家庭の場合は、進学であったり、習い事で大きな出費が続くような場面をきっかけに子どもにかかるお金について話し合いましたが、普段からわが家の家計簿を見せる機会がありました。
 進学の際には大きなお金がかかるので、それをきっかけに話し合う家庭は多いかもしれませんが、すぐに実感を持って受け入れられる子どもは多くないかもしれません。そう考えると日頃の生活の中でお金について親子で共有することは大事です。習い事や学習塾、冬期・夏期講習などにも高額な費用が必要です。普段の生活の中で、わが家のお金にも限りがあることを、話してみてはどうでしょうか。

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