CDジャケットの美学#3:GreeeN『第九』
久しぶりの投稿。
最近本格的にグラフィックデザインを学び始め、その界隈の勉強に熱が入ってきたので、以前から細々と続けていたCDジャケット研究を再開しようと思った所存。
限りなく自分のためだけに書いてる記録用記事なので、あんまり読んでても楽しくないかも。あしからず。
今回取り上げるのはこれ。
GreeeeNの「第九」。
GreeeeNて今までの人生で一回もちゃんと聴いたことなかったんですが、このジャケットはApple Musicで偶然見かけた瞬間「おっ?」となった。
こういう意味深でいろいろ連想させられるジャケットは好き。
ということでジャケットの背景情報と、魅力の言語化をしてみたい。
アルバム情報(ざっくり)
・発売日:2019年9月25日
・GreeeNの9作目となるアルバム。
・ジャケットのデザインを手掛けたのは、木村カエラやあいみょんのアートワークも手掛けるアートディレクターのとんだ林蘭さん。
なるほどだから「第九」ってわけですね。シンプルなネーミング。
ちなみにとんだ林蘭さんのHP、ぶっ飛んでて面白い。アート界隈の人はこれくらいはっちゃけててほしい、という凡人の浅はかな期待を裏切らないわけのわからないセンス笑。好き。
それでは魅力を言葉にしていこう。
見た目のインパクト
まず何より、ひと目見たときのこのインパクト。目玉焼きの黄身のオレンジがかったヴィヴィッドな黄色の視覚的な強烈さ。
持論ですけど、ジャケットづくりのひとつの定石として「パッと目につくかどうか」があると思う。CDショップで、数あるCDの中から興味を持ってもらうには、まず何よりジャケットに目を留めてもらわなきゃいけない。
その点ではこのジャケットは「なんじゃこりゃ?」と思わず立ち止まってしまう効果が十分にある。
まあ、GreeeeNほど有名になれば、足止め効果を無理に狙いに行く必要はないんだろうけど。
しかし、話広がっちゃうけどストリーミングのインフラ化でCDショップに足を運ぶことが少なくなってきている昨今、「パッと見のインパクト」ってジャケットにどこまで求められてるんだろう?
あ、でもストリーミングの世界でも新しい音楽を知ろうとするときにジャケットのインパクトから入るってのはあるか。となるとスマホの小さな画面で見なきゃいけないぶん、よりわかりやすく刺激的なデザインが求められるんかな。
とにもかくにも、見れば見るほど味わい深い、みたいなスルメ系ジャケットも好きだけど、こういう思わず立ち止まってしまうインパクトあるジャケットも好き。
あと、ジャケットをデザインしたとんだ林蘭さんのHPを見ていると、「目玉焼き」っていうのは彼女のひとつのお気に入りモチーフみたい。いろんなアートワークに登場している。
そんな作者の色が感じられるのも、ジャケットの魅力の一つ。
「9つの目玉焼き」が指すものとは?
しかしこのジャケット、完全視覚的インパクト重視の出オチ的作品かと思いきや、眺めれば眺めるほど奥深い示唆を含んでいます。
たとえば、よく見ると単に目玉焼き9個並べただけでなく、それぞれが糸で縫い合わされている。
目玉焼きのひとつひとつが「GreeeeNが今まで出してきたアルバム」だと考えると、それらを糸で縫い合わすという表現には「それぞれのアルバムやその中の曲たち、もっといえばGreeeeNの今までの道のりが、連綿と続いてつながってきた『ひとつの』歴史なんだ。」という思いがあるようにも読み取れる。
そういえば、このアルバムを遠目に見ていると、目玉焼きがまるで一つの細胞で、それらが繋がり合って複数の細胞から成る大きな「命」を形作っているようにも見える。
そういえば、目玉焼きも元はといえば成長すれば鶏になるはずだった「命」そのもの。
そこまで考えると、目玉焼きをモチーフに選んでいるのも単にインパクトを求めただけでなく、「音楽という細胞から生まれる大きな命」を表現する一つのアート表現なのだろう。
うーーん、面白い。
まだまだ続く「命の縫い合わせ」
そう考えると、目玉焼きどうしを縫い合わせたあとの糸が切られずに、針に繋がれたままというのもとても示唆的だ。
これは、「GreeeeNの作曲活動がまだまだ続いていく」こと、そして「音楽という命を燃やす行為が続き、大きくなり一つの大きな命を形作っていくこと」への示唆なのかもしれない。
……言い過ぎたかもしれない笑。
でも、それくらいいろんな想像ができる、とっても奥深いジャケットであることは間違いない。
所感
なんだかGreeeeNがちょこっとだけ身近に感じられた。
ジャケットを好きになることで、それを作ったアーティストまで好きになれる。
それもジャケット研究の醍醐味の一つ。
これからも続けてくぞー。
(毎日じゃなくても止めなければいいんじゃい!)
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