小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んで
『猫を抱いて象と泳ぐ』のあらすじは、「大きくなることは悲劇である」を箴言を胸に11歳の身体で成長を止めた少年、リトル・アリョーヒンはカラクリ人形を操りチェスを指す。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。と言うようなものだ。
本作の登場人物は、「仕方のないことへの諦め」みたいなものを各々持っている。例えば、リトル・アリョーヒンのチェスの師匠のマスターは、肥満によって自身の家であるバスの中から出ることが困難で、外に出ること