さむりり

オタクの備忘録。

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最近の記事

井上真偽『アリアドネの声』を読んで

 見えない、聴こえない、話せないという3つの障害を抱えた1人の女性が、巨大地震に被災し、地下の危険地帯に取り残されてしまう。崩落や浸水の影響で地下への侵入が不可能な中、一台のドローンによって彼女を安全地帯に誘導する。  このあらすじに惹かれてこの本を読み始めた。ドローンは超ハイスペック、健常者であればこのミッションはなんて事のないものだっただろう。しかし、見えない、聴こえない、話せないとなると難易度は爆上がりする。作中でもこの難しさについては細かく描写されている。  ここで、

    • 小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んで

       『猫を抱いて象と泳ぐ』のあらすじは、「大きくなることは悲劇である」を箴言を胸に11歳の身体で成長を止めた少年、リトル・アリョーヒンはカラクリ人形を操りチェスを指す。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。と言うようなものだ。  本作の登場人物は、「仕方のないことへの諦め」みたいなものを各々持っている。例えば、リトル・アリョーヒンのチェスの師匠のマスターは、肥満によって自身の家であるバスの中から出ることが困難で、外に出ること

      • 雨穴『変な家2』を読んで

         『変な家2』のあらすじはこうだ。その日、私は11冊の資料を持ち、知人の設計士が住むアパートに向かって歩いていた。一見、それぞれの資料は無関係に思えるかもしれない。しかし、注意深く読むと、一つのつながりが浮かび上がってくる。  前作の『変な家』は入居者側が重要人物だったが、今作は家を売る側の都合が肝要である。建設業者が儲かるためにはどうすれば良いのか、黒いところが見えてくる。一つの企業の隆盛と没落が11の間取り図を繋げている。  間取り図を見ると思っているよりそこに住む人の生

        • 安倍公房『砂の女』を読んで

           『砂の女』のあらすじはこうだ。砂丘へ昆虫採取に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める部落の人々。果たして男は砂穴から脱出できるのか。という話である。  全体を通しての感想は難しい、この一言である。この作品が昭和37年に刊行されたというのも影響しているかもしれない。文体が現代文と少し異なってるため多少の読みづらさ

        井上真偽『アリアドネの声』を読んで

          武田綾乃『愛されなくても別に』を読んで

           『愛されなくても別に』は、『響け!ユーフォニアム』シリーズの著者である武田綾乃先生の作品だ。筆者は同シリーズのファンでそこをきっかけにこの作品を知った。本書は、学費と生活費のためにアルバイトで月20万円稼ぐ主人公、宮田陽彩が、父親が殺人犯と噂される江永雅と出会ったことで始まる。  2人の関係性は黄前久美子と田中あすかに似ていると感じた。シスターフッドとという言葉を知らず例えるならこの2人が1番当てはまっていると感じたからだ。木村水宝石とかいて「きむらあくあ」と読む人物が現れ

          武田綾乃『愛されなくても別に』を読んで