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浜田敬子さんに取材「働く女性と家事」

100人居れば100通りの家事の形がある。
そんな家事を、世代、性別、職業を超えてインタビューし、色々な視点での家事を考えていく、家事恋インタビュー。

共働きが増えている中、女性の方が家事の負担が多いことが少なくない。
これからの社会では家事と仕事の両立が求められていく。そこで家事をどう工夫していくといいのか、社会の最前線で女性の働き方を見てこられた浜田さんに取材をさせて頂いた。

浜田敬子さん:1966年生まれ、ジャーナリスト。上智大学法学部国際関係法学科卒業後、朝日新聞社に入社。前橋支局、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、99年からAERA編集部へ。2014年に女性初のAERA編集長に就任した。17年に退社し、「Business Insider Japan」統括編集長に就任。20年末に退任。現在は、Business Insider Japanエグゼクティブアドバイザーの他、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」などのコメンテーター、ダイバーシティーや働き方改革についての講演なども行う。著書に『働く女子と罪悪感』(集英社)。

代行サービスで「時間を買う」

(私)浜田さんは日頃どのように家事をこなされていますか?

料理は好きなので気分転換になりますが、負担に思う掃除は人にお願いしています。

(私)代行サービスを使っているのですね。

よく「頼む費用がもったいない」という声を耳にしますが、負担と感じながら家事をしていた時間が、子どもとの時間や仕事の時間に置き換えられるので、時間を買うと考えれば全く無駄ではないかなと。
一緒に働いていた後輩たちにも代行を頼むことに対して、罪悪感は持たなくていいと伝えています。

(私)最近は代行も1つから頼めるようになりましたし、共働きだったり忙しい時に便利ですね。一方で代行サービスを頼めない方もいらっしゃると思っていて。その場合は、どうすればいいのでしょうか。

家事を、1人で抱え込み過ぎないことだと思います。夫がいるのであれば夫と分担し、子どもがいるのであれば子どもにも参加させ、家族みんなで協力し合う。嫌いなものは手を抜いて、好きなものは息抜きにやったりと、完璧にこなそうとしないことも大切だと思っています。

(私)家事を完璧にこなすのは、大変ですよね。

全てを完璧にこなそうとするから、ストレスに思う人が多いのではないでしょうか。

家事とは家を運営すること

(私)浜田さんに取材させて頂くにあたって、記事を拝見したところ、「夫に家事を交渉するといい」とお話されていました。どのように交渉すると良いのでしょうか。

それが難しくて出来ないからみんな悩んでいると思います。
私が以前編集長を務めていたAERAで、家事を全て書き出してみたことがあったんです。
書き出して、夫と妻どちらがどの家事を担っているのかマーカーを引いてみると、目に見えてわかるんですね。男性が思っている家事って料理、洗濯、掃除などわかりやすいものが多いのですが、それは女性が担っている家事のごく一部なことも多い。
夫が「これもやっているあれもやっている家事を凄いやっている。」と言っても、「それはごく一部ですよ」と。
それぞれの家庭で家事の内容や量や違うと思うので、どんな家事があるのか、1度話し合ってみるのもいいと思います。
まず、家事ってこんなにあるんだよと、知ることが大切。そこから1つずつでもいいからやる家事を増やしていけるのが理想じゃないでしょうか。

(私)なるほど、家事を1度すべて書き出してみるのは面白いですね。

家事って、家を運営するようなものです。例えば、家計の管理、子どものスケジュール管理、調味料や洗剤などの残り分量の管理などなど、夫には「見えていない家事」は想像以上に多いのです。家の運営にどんな項目があるのか、まずはそれを2人で把握するところから始めるといいかなと思います。

男性の家事の考え方


(私)浜田さんの旦那さんは、家事に参加的なのでしょうか。

そうですね。
私が育休から復職する時に、交代で夫が3ヶ月育休を取得し、その間に家事が飛躍的に上達しました。特に料理。最初は数品のおかずを作るのに、数時間かかっていたものが、今では冷蔵庫にあるもので手早く数種類のおかずを作れるようになりました。
お互い家事が出来ると、出張時に事前におかずを作りだめて行く必要もないので、負担が減りますよね。

(私)出張の時の負担が減る。働く女性からの視点で凄く新鮮です。
旦那さんは育休を機に、家事のスキルを習得されたとのことですが、小さい頃から男の子も家事を身につけることが大事だと思いますか。


はい。今の20代男性の家事能力が高いのは、中学生の頃に家庭科の授業があったことも影響しているのではないかと。家庭科で「煮る」「焼く」など、ある程度の常識を習いますよね。若いうちに経験をしておくことが大事だと思っています。

(私)女性の働き方とともに家事分担などを数多く取材されてきた浜田さんの実感を伺ってみたくて。男性の家事観は、時代によって変化してきたと感じていますか。

今の40代以上男性は、専業主婦の妻に家事を任せっきりの人も多いですが、30代以下はだんだん意識が変わってきていると感じています。
今15歳になる娘が保育園に通っていた頃は、朝の送りは夫、お迎えは妻と分担している家庭も多かったですが、今は週に何日かはお迎えも夫、という家庭が増えていると聞きます。
お互い忙しくてやらざるを得ない環境に置かれ、家事をやらざる得なくなればできるようになります。
家事は能力の問題ではなく、やれば誰でも出来るんです。

(私)結婚した時に、「旦那さんは外で働いてお金を稼いでくるから、奥さんは家事をしよう」と決めたとしてもいつ関係性が崩れるか、何が起きるか分からない。
家事を仕事として家を運営してきた女性が、いきなりシングルになると大変ですよね。

離婚してシングルマザーで子どもを育てていた友人がおり、経済的に大変だったと聞きました。人生いつ何が起きるか分からないですし、お互いに仕事しながら家事も両方で協力してやる体制を作れたほうが、どちらかに経済的依存もせず、何かがあってもカバーしあえると思います。

(私)私も1度は働く女性になってみようと思います!
ところで、浜田さんは専業主婦になりたいと思ったことはありますか?

一度もないです。仕事は私のアイデンティティでもあるので。

(私)今年の夏から家事インタビューをしてきた中で、日本では家事の多くを女性が担っていると感じました。以前、アメリカに住む方にインタビューをした際、家事は夫婦50%50%と聞いて惹かれて。浜田さんにとって、理想的な家事分担ができていると感じる国はありますか。

特に韓国と日本は、女性が多く家事を担っていますよね。
他の国は、こんなに女性が家事を多く担っていることはないですよ。
そもそもの働く時間が短いというのも影響していると思いますが、北欧はもっと進んでいます。

(私)ジェンダーの指数にも出ていますね。

日本人は、女性があまり主張しないですよね。職場でも家庭でも。
今の若い男性で家事や子育てをやりたい人も多くなってきている中で、女性側が「家事・子育ては女性がやるもの」という先入観を持ちすぎると、結果的に男性のチャンスも奪ってしまうことになります。
もし自分一人で家事や子育てを担っていて、大変、しんどいという思いがあるのなら、まずはその思いを夫やパートナーに直接伝えて、その大変さを理解してもらい、もっと分担してもらうようにしたほうがいいと思います。

〈インタビューを終えて〉
私は無意識に女性側の視点から多く家事を見ていた。
女性の方が家事の負担が多いのは、事実。
社会の最前線で女性の働き方を見てこられた浜田さんの視点は女性側だけでなく、男性側もからも考えていた。
男性も女性が家事を想像以上に担っていることに気付く必要があるし、女性側も不満を発言小町に書くのではなく、主張をする必要がある。
主張が出来るかどうか・・・は最後はその家庭によるが、お互い様なところもあることを知った。
家事に関する取材から、ジェンダーや貧困など色んな問題も聞くことができ、貴重な時間であった。

お忙しい中、インタビュー本当にありがとうございました。


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