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博報堂子会社不正から考えるIPO

博報堂DYホールディングスの子会社で27億円もの従業員不正が発覚しました。

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 博報堂プロダクツ元社員(2021年1月29日付懲戒解雇)は、2016年からの4年間にわたって同社名を騙って金券及び商品券の発注を行い、入手した金券及び商品券を現金に換金し、当該発注の代金を支払うために金券及び商品券の発注と現金への換金を繰り返していました。また、換金により得た現金の一部を元社員が個人的に使用していたことを確認しております。
 当該発注は、同社の業務とは関わりのない、元社員による不正な詐欺行為ないし背任行為ではありますが、民法の表見代理または使用者責任に基づき、同社としての発注先への支払い義務があることが顧問弁護士への相談等により確認されたため、同社にて金券及び商品券発注先に対する未払い分の支払いを行うことといたしました。
 この結果、同社の損失額の合計は約27億1千万円となり、同額を同社において特別損失として計上することといたしました。

J-SOX上の対応はどうなるでしょうか。期末日までに是正改善した上で運用評価するのは難しいと思いますが、その場合は、開示すべき重要な不備に該当し、内部統制は有効でないという結論を記載した内部統制報告書が提出されることになります。

※2021/6/30追記
2021/6/29に提出された内部統制報告書には、開示すべき重要な不備として記載されていません。期末日までに改善されたか、そもそも重要性がないということかもしれません。なお、本稿の内容は、個別の事象に影響されるものではなく、既上場会社とIPO準備会社との実務上の差異について違和感を述べたものなので、そのまま掲載しております。

一方で、上場維持に関してはあまり問題にならないです。毎年数十社が開示すべき重要な不備があるとしています。税務研究会によると、直近1年間では38社が該当しています。

これは、上場廃止基準がかなり緩やかに設定されているからです。

a.特設注意市場銘柄の指定要件に該当するにもかかわらず、内部管理体制等について改善の見込みがないと当取引所が認める場合
又は
b.特設注意市場銘柄に指定されている間に、内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと当取引所が認める場合
又は
c.特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、内部管理体制等について改善がなされなかったと当取引所が認める場合

内部管理体制については、誤解をおそれずに言えば、一応でも(場当たり的にでも)改善したとしてしまえばよしとされています。

投資家保護を考えると、多少問題があっても上場を維持した方が良いという価値判断ですね。

翻って、IPOを考えてみましょう。

IPO審査では?

上場準備に携わったことがある方なら分かると思いますが、主幹事証券や証券取引所の審査では、内部管理体制について厳しくチェックされます。

博報堂の今回の事案のようなものが発生した場合、上場スケジュールの見直しは不可避ですね。是正改善の上、それなりの期間、運用状況を見る必要があります。

なので、そもそも上場申請期にこんなことが起きないように内部管理体制は早め早めに整えておくわけですが、人手が足りない中で、これはなかなか大変です。

ということで、どうでしょう?

お手本となるはずの上場会社、それも大手企業がこんなんで、自分たちのやってることって何なの?

こう思う方がいても仕方ないかなと。だからといって、適当でも良いよねなんて言うつもりはありませんが…心情的には理解できるかなと。

お仕事をする上では割り切ってやるしかないんですが、自分もIPOに関わらせていただいている中で、このもやっとした感覚はなかなか晴れません(笑)

※広告代理店の体質的なこともあると思いますが、話の引き出しとして博報堂の事例を使わせていただきました。

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