かい。

第一回ひらづみ文学賞佳作を頂戴しました。 「鈍色(にびいろ)の蛍」 純文学や詩を描いて…

かい。

第一回ひらづみ文学賞佳作を頂戴しました。 「鈍色(にびいろ)の蛍」 純文学や詩を描いてます。 よろしくお願いします。^ - ^♡

最近の記事

「簪華のお噺」

「簪華(かんざしばな)の       お噺(はなし)」    善平長屋の造りは二軒ずつで、薄い板一枚隔てた隣の様子が見える様に伝わって来る。 日当たりも建て付けもあまり良くない部屋には絶えず隙間風が入り込み、秋口には昼間でも羽織る物が欲しくなる。 鶴瓶(つるべ)落としの瞬く間の黄昏れに、忙し気に狭い往来を行き交う足音を聞きながら、修太郎は黙々と傘貼りに勤(いそ)しんでいた。 どこからか、夕餉(ゆうげ)の味噌汁の匂いが漂って来る。 危うく鳴り掛けた腹の虫の音を、ぐいっと力任せ

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      契り

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      • 「イヴの待ちぼうけ」

        「聖夜(イヴ)の待ちぼうけ」 キッチンで大きな物音がした。 鍋を落としてしまったのだろう、同時に短く甲高(かんだか)い叫び声が聞こえて来た。 「─ママ、だいじょうぶ?」思わず立ち上がり掛け、さやがそう声をかけると、 「うん─」とだけ生返事が聞こえただけでまた忙(せわ)しない包丁使いが鳴り響いた。 「─チャンネル、変えといてよ。時間になったら」ガスコンロのバーナーが強くなる音に混じって念を押すように母が言った。 テレビの横にあるデジタル時計は六時半になろうとしている。 「─マ

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          七色の告白

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        「簪華のお噺」

          「茜色のひまわり」

          「茜色(あかねいろ)の        ひまわり」 「─ねえ、あかねちゃん、ここんとこ毎日、遊ばないね─」学校帰りに、遊ぶ約束を交わしている同級生の輪の中からそう声を掛けられた。 茜は立ち止まり振り返ると、 「ごめんね。ちょっと用事があるの」そう応え笑った。 もうじき待望の夏休みになる。 蒼空に描かれた下り調子の飛行機雲の先に遥か上空の陽射しを受け白く光る小さな機体の緩やかな動きを目で追いながら、足速に校門を出た。 『─遊びに行くなら、家に一度帰ってからにしなさいよ』頻繁に

          「茜色のひまわり」

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          初梅の日

          恋の詩の朗読です^ - ^♡

          初梅の日

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          花筏(はないかだ)

          恋の詩の朗読です^ - ^♡

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          「風の想いびと」

          「風の想いびと」  風は、神の子だ。 物心ついた時、煌(きら)めく波間を漂っていたから多分海で生まれた。 家族も仲間もいない。 いつも独りぼっちだ。 神の子は、他にも「地」「水」「火」「空」がいるが皆、姿が見えるのに自分だけ目に見えぬことを不足に感じていた。 「地」は喩えば花樹草に彩られ、「水」は場所や流れ方でその魅せ方を変える。「火」も折に触れ、花の形(なり)を借り夜空を美しく演出したり、「空」は雨上がりに虹の橋を架けたり、夕暮れを取り取りの色に染め、やがて夜の帳(

          「風の想いびと」

          「石竹のお噺」

          「石竹(せきちく)の    お噺(はなし)」  雨上がりのある日、遠目にだが心地良さげに東風(こち)にちろちろ揺れる紅い花に初めて気づいた。 時折、羽を翻(ひるが)えして紋白蝶(もんしろちょう)が止まり話しをする。ころころと小鳥の囀(さえず)りの様に軽やかな花の発する声が可愛らしく以来、密かに想いを寄せるようになった。 自分は何故硬い石なのだろう─ ごつごつした自身の見た目が恨めしく、そう遣(や)る方のない気持ちを擡(もた)げながら、可憐な紅い華を見つめる日々が続いていた

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          我儘(わがまま)の幸せ

          恋の詩の朗読です^ - ^♡

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          「漫画の神様」

           「漫画の神様」  住宅街の奥ばった場所にあるディスカウントショップは平日は閑散としている。 疎(まば)らな買い物客の中で家族連れは壮一たちだけで、流れている店の宣伝のアナウンスが馴染みのあるジングルを伴い賑やかに店内に反響していた。 「─見るだけばい」そう貧乏家の常套句(じょうとうく)を口にすると、娘たちは素直に頷いた。 「フラワーロック」がアナウンスに敏感に反応しては休む間もなく踊っている。 剽軽(ひょうきん)なダンスは店が開店した当初から記憶にあるからもう三年以上前か

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          「枕の見た夢」

          「枕の見た夢」  陽が落ちた後も喧しく油蝉が鳴いている。 止まっている銀杏の樹の近くを通り過ぎようとするとぴたりと聲を止め、短い鳴き声を残し街灯の明かりに向け飛び立って行った。 闇の中、一直線に羽ばたき電球に体当たりするとばちばち、と爆ぜた音と同時に地面に落ち、今度は鈍い気味のよくない羽音をざらざらアスファルトに擦り合わせた。 まだ三歳になったばかりの二女がベビーカーから羽音のする方を指示し、 「─あ、」と高い声を上げた。 「─ なんやおまん、目ぇええなあ─」妻のさやが笑い

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          芳(かお)りの宛名

          恋の詩の朗読です^ - ^♡

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          「狐の嫁入り」

          「狐の嫁入り」  その年の夏は厳しい暑さで、早朝から油蝉が競う様に喧(かまびす)しい鳴き声を響かせていた。 家の裏外にある井戸のポンプ前には既に母がいて、 「─まあだ、井戸水が。だめだよ、冷でげど腹壊す」そう言いながら、紐に備え付けのアルマイトのコップに伸ばした指を手で制し、 「麦湯、作ってあっぺ」眉を顰(ひそ)めそう付け加えた。 「─いやだよ。まだぬりいんだもの」唇を尖らせ勝人(かつと)が反発しもう一度コップに指を伸ばすと、今度は強く手の甲を叩かれた。 「─てッ─!」小さ

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          向日葵の恋文

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          半分こにしよう

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