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「役者は一日にしてならず」夏八木勲編

春日太一さんの著書「役者は一日にしてならず」を読んだ感想を書いています。

私の中での夏八木勲さんは、シブいおっちゃん、怒らせたら怖そう、というイメージで、真っ先に思い浮かんだのは刑事役。どこで見たのか、刑事さんだった気がします。こうして書くとなんだか印象薄そうですけど、とんでもない、夏八木勲と聞いてすぐ顔が目に浮かぶ。

インタビュー記事の冒頭を読み進めてゆくと、将来の確固たる目的もないままに、親友の奥さんから強く勧められて文学座研究所のオーディションを受けたら合格。
しかし、パントマイムとか朗読とか即興の芝居をするのが気恥ずかしくて、あまり出席せず…。

不思議ですねぇ。

人生の不思議さみたいなものを感じます。
多分、この研究所へ、心血注いで通っていた輩もたくさんいると思うんです。
パントマイムも朗読も一生懸命やってた人がいるはずなんです。でも、その方々がみんな大スターになっているわけじゃない。
それぞれの人生で、それぞれの選択をして。

私は高校の時に放送部だったんですが、地区大会で3位をもらってウキウキしながら全国大会へ出場したら、箸にも棒にも掛からなかった。
それから放送とは縁が切れていましたが、ひょんなことからまた放送の分野に関わるようになり、FM局で番組を持っている。
あの頃、私よりも一生懸命に放送と組み合っていた人も、大会で優れた賞を取っていた人もいたけれど、それがそのまま将来に繋がる訳じゃない。

だから今、やりたいことがうまく行かなくて挫けている青少年に伝えたいのは、
「一生そうじゃないぞ」
ということです。
未来は読めない。
読めないからこそ、希望がある。
流れに沿って、気持ちのままに生きるだけでいい。
くじけすぎないように。……余談でしたが。

夏八木勲さんの話に戻ります。
夏八木さんは、フランス🇫🇷のソルボンヌ大学へ留学するのが夢でした。
しかし、大学とアルバイトと演劇をしながら学長の推薦をもらうことは難しかった。と同時に文学座研究所の卒業公演があって、そこで夏八木さんに割り当てられた役は、ほんのチョイ役だった。
真面目に参加してないし、当たり前ではあったんですけど、このままでは悔しいという気持ちが残ったそうなんです。それで、今度は三年間の俳優座養成所へ入りました。

この俳優座養成所の同期がものすごいメンバーで、そしてここでのエピソードも興味深くて。
とにかく夏八木さんは真面目に出席していないんですよね。アウトローという雰囲気。
夏八木さん談
「『俺は俺でいいんだ』ということを三年間かけて気づいていったんです」
そして、俳優座の先輩たちの舞台稽古を近くで見られたことで、これは面白い世界なのかもしれないと、そういう現場の匂いが役者を続けさせてくれた.…。

なんだか、演技とか、演劇というもの、それから演劇をやっているヒトからの、目に見えないパワーのようなものに引っ張り込まれてるようにも感じます。
そんな風な世界にいる人々が羨ましくもあります。

その後東映京都の映画プロデューサーさんからスカウトされて契約。凄いです。
でも、全然求められている演技ができず、何度も何度も取り直し、稽古、共演者の方々にも付き合ってもらったり。はたまた後から出てくるエピソードでは、乗馬や殺陣の話などが語られていて、そこに夏八木さんの謝罪の言葉が折々差し込まれていて、
一朝一夕に出来たのではないことを感じます。

「『映画の世界は、そうたやすくねえぞ』
と鍛えられたような気がします」

五社英雄監督との、意気投合エピソードは、それまでの重苦しい日々を晴らしてくれるような面白さがありました。

そして千葉真一との交流についての話の流れで、夏八木勲の肉体美についても触れられていたのですが、

「肉体というのは俳優の基本中の基本ですからね」

とおっしゃっています。
普段から、あまり鍛えようとは思っていなかった私は、別に俳優になろうとは思っていませんが、やっぱり肉体は大切だと思いました。
夏八木さんは千葉さんに誘われてJACのトレーニングにも参加した事もあったり。
鎧を着る時の姿勢の話等々も。

とにかくまずは体を鍛えておくことと、
役のセリフに入る前にその人物の背景を理解する事。
あと、苦手なことは何度も何度もやること。
これだな、と思いました。
いやあーーーー、後悔の念があることさえも尊い。
そう、こんなに実績を残している人でさえ、後悔はある。

私の人生の後悔も、あって当たり前だな、
と…思えました。

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