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日本は武漢にならない〜日本と中国を単純比較してはならない

 厚生労働省によると、現在国内でのコロナウイルス感染が確認された人は2月24日時点で850人だ。この中で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗ってた乗客の感染者が691人、チャーター機で武漢から帰国した人が14人と、国内で感染が確認された人が145人だ。日本での感染者は日に日に増えているが、それよりも増えてるものがある。それは人々のコロナウイルスの大規模蔓延に対しての恐怖であり、東京や日本全体が「武漢化」する恐れだ。ただ、自分の意見からすれば日本「武漢化」の可能性は低い上、日本と中国の状況を単純比較をしてはならないと思う。

 まず最初に、中国の医療事情は日本とかなり異なる、そしてそれが中国(特に武漢など)での大規模蔓延の一つの理由でもある。中国と日本で医療サービスへのアクセスがかなり異なる。自分は普段日本(東京)で住んでいるが、風邪をひいたりした際にすぐ近くのクリニックや診療所へ行ける。人が多くて並んでも1時間やそれ以上を越す事は滅多に無い。その上、日本では高度な医療サービスを比較的安価な値段で受けられる。日本人にとってはむしろこの様な医療制度が当たり前だが中国では違う。中国の病院は日本と比べたら医療技術が劣る上アクセスがよく無い。

 自分は上海に15年近く住んできたが、上海のローカル病院にはほぼ行った事がないし、行きたくない、なぜならふざけてるぐらい並ぶからだ。近年多少の改善はあるが、それでも1時間や2時間並ぶ事は当たり前だ。中国の病院に行く際、朝一でまず「挂号」という整理券を取らなくてはならない、そこからその番号が呼ばれるまで病院で待機する。待機場は病院というよりは日本の銀行みたいな感じだ(番号を表示するパネルとカウンターが前にあってズラリと椅子が何列かに並べてある)。そしてそこから、番号が呼ばれたら診察室に入るが、病気や症状の種類によっては採血や検査などでさらに時間が取られる(検査・採血で並ぶ→検査結果を待つ→医者の検査・採血後診察→薬を処方して貰う為に並ぶ→やっと帰れる)。中国でも最も発展してる上海でもこの様な状況である以上、武漢など比較的発展が遅れている地方の状況は予想できる。もちろん日系や外資系の病院はある、だが高額な為普通の中国市民は普通行かない。平時でもこの様な状況に置かれる中国の病院だから緊急時はもっと混乱する。こんかいの武漢で発生した新型コロナウイルスも、病院での感染が多いとの見方がある。この様な高度な医療技術がない上、診察するのに長時間病院内で待機するので、新型コロナウイルスにかかってなくても病院内で感染する確率が一段と上がる。そもそも武漢では病院が足りず、1月頃は朝から長蛇の列が並ぶ始末だった上、政府も急遽信じられないほどの速度で簡易的な病院を建てた。日本は高度な医療技術があり、医療サービスへのアクセシビリティーがいい。その為、中国の様な病院内での感染が大規模に起こる事はまず無い。日本の病院は無駄な待機時間もない上、感染予防対策が万全に行われていて、医療技術も高い

 日本人の健康意識は世界的に見ても高い。例えば、日常的にマスクをつけるのは日本人しかいない。中国ではマスクを着用する習慣はない。マスクを着用する際は、感染予防っというよりはどちらかと言うと空気汚染対策の為だ。手の消毒や手洗いうがいなどの些細な予防対策も日本人の生活習慣に深く根付いてる(むしろ日本人の予防対策は他の国に比べて神経質過ぎるぐらいだ)。デパートやレストランなどでもアルコール消毒液などを常備しているとこも多い。それだけではなく、日本は「家庭の医学知識」(初歩的な健康や病気についての知識)が高い、これも日本の平均寿命が長い一つの理由でもあると思う。この様な一見単純で当たり前な予防対策が実際大規模蔓延を防ぐ。中国では皆んなにマスクを着用してもらうだけで政府も一苦労な上、国民一人一人の健康に対しての意識と知識は日本ほどではない。日本の様なもはや病的に神経質な国民性と健康や病気についての知識の普及は必ず効果を見せる。

 そして最後に提起したいのが決してそこまで関係がないと思われるメディアリテラシーやデジタルリテラシー(特にニューメディアに対して)の問題だ。実はそれらは中国での感染蔓延に深く影響を及ぼしてる可能性があると思う。中国は近年急速なネットインフラの普及により、誰もがスマートフォンなどの電子製品を使いこなす様になった(自分も70歳近くの祖父がフォトショップを巧みに使いこなすし、ネット配信を頻繁に見てることに驚きだ)。Wechat(中国版のLINE)やWeibo (中国版ツイッター)などで簡単に全ての情報が手に入る様になった、だが中国のメディアリテラシーやデジタルリテラシーはどう考えても追いついてない(特に高齢層で)。それによってフェイクニュースは中国で非常に大きな問題になっている。今回の新型コロナウイルスの大流行でも色んなフェイクニュースを自分は目にした。日々家族とやりとりをするWechatのグループチャット内でも祖父や祖母などが色々どこから来たか分からない、どう見ても胡散臭い情報をシェアしてた。確認したところその大半がフェイクだった。今のデジタル時代、情報は「質」を問わず瞬時に拡散する、そしてそれが「伝言ゲーム」の様に理解する人の主観的な認知により「変形」する。新型コロナウイルス発生直後の中国は「パニック状態」だった。ネットはフェイクニュースで溢れていた。そしてそれが恐怖を扇動して社会の混乱を生んだ。人々は恐怖のあまり、些細な症状でも病院に駆け込んみ、感染していない人々にウイルスがうつってしまった。これは日本でも気をつけなくてはならない。間違った情報の一人歩きが混乱を呼び、特にネットの様な開かれた「封鎖的空間」ではそれがより「信じやすい」ものとなる。

 日本での感染者は残念ながら今後も増え続けるだろう、ただ過剰な恐怖とパニックは逆にさらなる混乱を増やす。最近ネットでは政府の水際対策の甘さ、「ダイヤモンド・プリンセス号」に対しての対応やウイルス検査の拒否に対して批判噴出している。批判と同時にウイルスへの恐怖があちこちで聞こえる。ただ忘れてはならないのは、この様な緊急事態だからこそ今以上の冷静さが必要とされる。ウイルスに対しての過度な恐慌と、ネット上での無数のユーザーによる恐怖感情の共鳴は事態を更なる混乱へと導いている。日本政府の対応はどうであれ、日本国民は既に色んな面で日頃から感染予防についての基礎知識や習慣が身についてる。それを冷静に実践し、普段以上に気をつければ、そう狂気的に恐れる様なものではないと思う。日本が武漢の様になるのはまずあり得ない。逆に、過度な恐怖心が想像上の悲劇をうみ出してしまう。


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