借力(チェーリー)
こんばんは。今、メキシコのグアダラハラは夜1時です。
1週間がまた終わりました。みなさんは、どんな1週間をお過ごしでしたでしょうか?
僕は今週からまた仕事に終われる相変わらずの日々を送っています。
「借りる力」と書いて、
中国語ではこれを
「借力(チェーリー)」と
読むそうだ。
別に今日は中国語講座をしようというわけではない。
この言葉の意味について最近よく考えているので、今日はそれについて書きたいと思う。
この言葉は卓球から来ている。
中国は卓球が国技の国で、世界ランキングもずっと1位。
去年の東京五輪の卓球の試合を見ていた方も多いんじゃないかなと思うが、混合タブルスで日本人初の金メダルを獲得した水谷隼・伊藤美誠ペアの活躍が記憶に新しい。
しかし、日本人がオリンピックという大舞台で中国人選手に勝利をあげるというのは並大抵のことではない。今までに何度も苦渋をなめてきた。
とにかく中国人選手はミスが少ない。卓球の基本的な技術にしっかりしている。劣勢でも、逆転勝ちをするポテンシャルを備えている。
自分も学生時代は卓球をしていたので、今でも卓球の試合を見ると、胸が熱くなるものがある。
卓球は、自分にとっても思い入れのあるスポーツなのだが、その技術を表す言葉の一つが
「借力(チェーリー)」
である。
卓球は相手とボールをラケットで打ち合うスポーツだが、自分があまり力を入れず、相手が放ったボールの威力を借りて打ち返す技術のことを
「借力(チェーリー)」
と言う。
ちなみに、自分が力を出してボールを打つことは
「発力(ファーリー)」
と言うそうだ。
意味も漢字からイメージができるので、とても分かりやすい。
発力と借力。
最近、仕事をしているときに、よくこのことを考える。
自分の仕事の中で、
「発力」は0から1にする作業だと思っている。つまり、一つの日本語のクラスをテーマを決め、どんなふうに進めていくかの順番を考えたり、どうやって何を伝えていくかの部分をデザインしていく作業である。
「借力」はクラスをすることにはするのだが、誰か他の先生が前に使った教材やパワーポイントを使ってクラスをすることである。もちろん多少自分なりにアレンジすることはあるが、ベースがもうすでにあるものを使っている。
僕は「借力」をすることがあまり好きではなかった。それは"自分のもの"ではなく、"だれかのもの"という感じがあるからだ。やっぱりだれかが使ったものを自分も拝借して使うということにどうしても抵抗がある。
まるで卓球の試合で相手から来たボールを威力を借りて得点をしようとしている選手みたいだ。
時間がかかってもいい。少しテーマが稚拙でもいい。何とか自分のやり方だけでクラスができないものだろうか。
すごく「発力」にこだわっていたような気がする。
しかしながら、いつもいつもそんなにアイデアが井戸水のように湧いて出てくるわけではない。だから、クラスの準備とかに丸一日とかかかっていた時もあった。
休みの日も返上して、何とか自分のオリジナルのクラスがしたい。
何とか自分が力を出して放ったボールで得点がしたい。
そう思っていた。
しかし、それではいつまで経っても、効率が悪いばかりで仕事が回らない。
実際、今年から通常の学校で行うクラスに加え、個人クラスもやっている。
さらに、Spotifyでラジオ番組もやり始めたので、とてもじゃないが、毎回そんなに「発力」はできなくなってしまった。
そう考えてみて気がついたのだが、
「借力」に
お世話になってみようと思った。
要は、毎回のクラスのゴールをどこに持って行くかでずいぶんと見方が変わってくる。
例えば、クラスのゴールを
「この文法を覚えたら、○○ができるようになる」とか
「この漢字を勉強したら、□□が読めるようになる」などのように、
具体的で分かりやすいものにすれば、あとはそこまでの道のりが直線か回り道かという話である。
直線がもう先に用意されているんだったら、学生がそこを通るようにクラスをしていけばいい。
その方が簡単に速く勉強ができるからだ。
何もいつもいつも「発力」にこだわる必要はないのだということに最近ようやく気がついた。
そのことに気づいて、最近はどんどん「借力」を使うようにしている(笑)
みなさんは、「発力」派ですか?それとも、「借力」派ですか?
日本語教師をする傍ら、Spotifyでラジオ番組を作っています。
よろしければ、下のリンクから聞いてみてください。
先週はモンゴルの方とお話ししました。
こちらは一人しゃべりの回です。
では、また次回。
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