[読書感想文] 宝島の冒険的興奮
宝島を読みました。これで三度目です。
古典小説と言われますが、その硬派な表紙や名前からは考えられないほど、エンターテイメントに満ちた素晴らしい作品です。主人公ジムの目線から語られる冒険物語は、現代のマンガやゲームから得られる面白さの原型なのではと思うぐらいです。
宝島と私の縁は、小学三年生から始まります。絵本に飽きた私が、書店の子供本コーナーをうろうろしているのを見かね、母が福音館の「宝島」を買ってくれたのです。
クリーム色の表紙。二丁の火打石拳銃を海賊に向ける主人公の、掠れた銅版画。分厚いページ。正直に言えば、あまり面白く感じませんでした。一見無機質に思える翻訳や渋い銅版画の挿絵もその要因だったでしょう。
福音館の宝島は、それから二度と開かれることはありませんでした。後に、売ってしまったからです。
転機は、昨年のことです。不意に頭の中で、昔歌った曲がせつなげにフラッシュバックしたのです。
『さあ行こう 夢に見た島へと 波を超えて 風に乗って 海へ出よう』
検索しますと、それは70年代のアニメ「宝島」の主題歌でした。昔、音楽の授業で歌ったのです。
物語のあらすじは全く覚えていなかったのですが、なぜかこの曲を聞いて、イメージとしての海洋冒険が浮かび上がりました。海賊、潮風、港の喧騒、船乗りたち。
それで、図書館の宝島を手に取ったのです。
とてつもなく面白い物語でした。さらっと描かれる登場人物たちの深い人間性、十八世紀イギリスの時代背景、宝の島に、銃撃戦。『大人を少年に戻らせてしまう』のもうなづけるほどの興奮でした。
あまりの熱中ぶりから、私は岩波文庫の宝島を購入しました。それで、三回目を読んだのです。
この話の教訓は、『本を捨てるな』ということです。かつて面白くなかった本や、今面白く感じない本でも、後で読んだら面白くなることがあります。昨今は、メルカリ・ヤフオクなどで本をすぐに売ってしまう人がいるとのことですが、私はもったいないなと思ってしまいます。
良い本に巡り会えて、私は幸せです。
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