道路の上で命を落とした動物たちへ

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 約二週間、各地を巡る旅に出ていた。旅の途中、必ずと言っていいほど見かけたのは、車に轢かれた動物たちの姿。出会った時は、停まれる場所であれば、出来る限りその動物たちを、道路脇のなるべく離れたところへ避ける。他の動物たちの二次被害を減らすためだ。これは以前、尊敬する写真家である半田菜摘さんと撮影をご一緒させていただいた際に行われており、感銘を受けて以来、私も真似させていただいている。

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 轢かれてしまった動物は本当に様々だ。エゾタヌキ、キタキツネ、エゾリス、シマリス、エゾシカ、アオダイショウ、イエネコ……。今回見た一部だけでもこれだけの種類の動物が轢かれており、これに昆虫や野鳥も含めると、いったいどれだけの種になるだろうか……。

 私は安全に停車できるすべての場所で、ロードキル、つまり、轢かれ命を落とした動物たちの現場の写真を、「記録」として撮影した。改めて見返すと、轢かれる場所が種によって違うということを、写真という記録を通して改めて実感した。

 例えば、一番最初の写真はエゾタヌキだ。彼らは峠や山と畑や牧草地の境目付近で最も多く被害に遭っている。二枚目はキタキツネ。街中や街外れ、特に道の駅やコンビニに近く、人から餌を貰えるところで被害に遭っているのがほとんどだった。同じイヌ科の動物でも、被害が大きい場所はこれだけ違うのだ。

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 意外だったのはアオダイショウなどヘビが轢かれるところ。今回見かけたのは三ヶ所だったが、すべて川のそばの温泉宿の近くだった。

 写真は撮影していないが、エゾシカが轢かれた現場も複数目撃した。道路脇に張られたばかりの美味しそうな芝がある場所、道路脇が広く、背丈が低く柔らかそうな草地、そして峠の沢や谷沿いの、いかにも獣道がありそうな場所。轢かれたシカの一頭は、まだ息があったが、脊髄を損傷したのか全く立つことができず、足掻きもがいていた。

 その他にも、野鳥をはじめ本当に多くの動物が、道路の上でその命を落としていた。今回見たロードキルを合わせると、見たものも含めると63件。二週間で見た数だとしても、決して少ないとは言えない数字だろう。

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 これらはすべて車に乗った人の手で殺めてしまった命の数だ。そのなかには生まれたばかりの子猫や、今年生まれ親元を離れたばかりのキタキツネ、轢かれた我が子を守るため、命を落としたエゾタヌキもいた。この現実を目の当たりにして、あなたはいったいどんな印象を受けただろうか。

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 北海道では車はなくてはならないものだ。隣町に行くだけで車で一時間、電車が走る場所はほとんどなく、バスも日に四本程度しか走っていない場所なんか、よく見かける。車に乗るなとは言わない。私も車を失えば、北海道での生活はできない。ただひとつ、今走っている速度を少し落として、動物の注意看板がある場所は、動物が道路に飛び出してこないかと注意しながら走ってほしい。

あの注意看板はただ設置しているのではなく、過去に命を落とした動物たちからの、車を運転するすべての人へ向けた「仲間を守る」ためのメッセージなのだ。

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 この北海道という広い大地の上で、ともに生きる様々な動物たち。これからも彼らとともにこの地で生き、その姿を見続けられるように。そして、次出会うときは、生き生きと森を駆ける本来の姿が見られるように、この地で生きるひとりの仲間としてこの文章を綴ります。

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