私が探したのは読みたい本じゃなくて、読むための方法でした。
本を読むのが苦手でした。
嫌いじゃないんです。苦手なんです。
最近そこそこ読めるようにはなってきましたが、やっぱりほかの人よりは時間がかかります。
今まで読んでこなかった分、書くときも時間がかかります。
そんな私の”読書”の話をきいていただければと思います。
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小学生の頃、母は兄と私に言いました。
「1週間に1冊でいいから、図書館で本を借りなさい!」
心の中でムリ!って叫びました。声に出してしまうと絶対に怒られるのでグッとこらえましたが。(母は強し。勝てるわけがありません)
私は本を読むのが苦手でした。
小学生になると、周りのみんなはジュニア小説を読むようになります。甘酸っぱい恋愛ものを小説にしたものや、空想科学読本、高学年のときは『5分後に意外な結末シリーズ』なんかが流行っていた気がします。
しかし、私がついていけたのは『かいけつゾロリ』まででした。
小さな紙の中に、隙間なくきれいに文字が敷き詰められている。どうにも頭に言葉が入りませんでした。見慣れない漢字がたくさんあって、もう文字というより、変な記号としてでしか頭は捉えてくれませんでした。
すごく気になって読み始めた小説でも、結末は友達に教えてもらっていた気がします。
それでも、母に言われたからには読むしかありません。
友達におすすめしてもらった『5分後に意外な結末シリーズ』は4分ぐらいで諦めました。あと1分、我慢しておけばよかったと今では思いますが。
このままでは。
私は考えました。本を借りなきゃいけない。でも、読めない。読みたい。読める本はないだろうか。小説が無理なら漫画、いやでも図書室に漫画なんか。
あっ。
唯一、図書室にある漫画がありました。
『学習まんが人物館シリーズ』でした。
野口英世、マザーテレサ、トーマス・エジソン、たくさんの人が本棚に待っていました。
1週間に1冊。私は名前も聞いたことないような人でも手に取って、読んでいました。
その人はどんな人なのか。何をどう考えたのか。どう壁を乗り越えたのか。
あの伝記シリーズが私の人格形成をしたのかもしれないなと、たまに思います。
最終的に私は、小学校にあった何十冊ものシリーズをすべて読みつくしました。
(母は漫画でも”伝記”ということで許してくれました)
小6の時、私の担任の先生は大の絵本好きでした。
教室の窓際に並べられた段ボールでできた本棚にはたくさんの絵本が並んでいました。レオ=レオ二、ヨシタケシンスケ、絵本の中にあるくだらない日常が私の意味のある1日を作っていました。
読むことは苦手でしたが、私は読む方法を自分なりに探してました。
きっと、好きでしたから。
中学生になると朝の会前の10分間、”朝読書の時間”がありました。
図書館で借りるか、家から持ってくるか。
ハードカバーの本はある程度読めるようにはなっていましたが、文庫本はやはり時間がかかります。
中学校の図書館は小学校の頃より小さく、置いているほとんどが文庫小説でした。なので、家から持ってくるしかありません。でも、家に本はあまりありませんでした。
読めないなら、そうだ、勉強しよう、と思いました。
幼稚園から英会話教室に通っていた私は丁度英検に挑戦しようと思っていました。家から持っていったのは英検の対策本。単語や穴埋め式のクイズなんかがたくさん載っていました。
周りは静かに本を読んでいる中、私はブックカバーをして頭を働かせていました。
もちろん、先生に気づかれました。
「何を読んでいるんですか?」
「英検の本です」
「受けるんですか?」
「はい。今度4級でもと思って」
「それは、その、本ですか?」
「本じゃないですか。逆にこれは本以外の何なんですか」
中1のできる、精一杯の言い訳でした。
本を忘れて来てしまったときは、国語の便覧を読みました。詩や俳句、百人一首。たくさんの美しい言葉がありました。その時の言い訳は「便覧は教科書じゃないんで、本ですよね」でした。
やはりよく思わない先生もいて、中2にあがるタイミングでルールができました。
先生は誰が悪いとは言いませんでしたが、完全に私のせいでしょう。
なんでだろう、なんで、文庫は苦手なんだろう。
自分なりに出た結論は”隙間”ということでした。
ある程度の隙間があれば、なんなく読めます。ただギュッと敷き詰められると抵抗がある。
文字が大きく、隙間がある本。それなら読めるのではないかと思いました。
そんな本かつ、私の好きな内容で、読みやすい読み物。
私はそこから2年間『ラダーシリーズ』と呼ばれる洋書のシリーズを読みました。
簡単なものは中1で習うような単語だけで、難しい単語の意味は巻末に付録として載っています。洋書なら隙間もあって、英語の勉強をしながら、読書ができるわけです。我ながら、いい考えだったと今でも思います。
「何読んでるんですか?」
「小説ですよ」
「え、英語じゃないですか」
「ちゃんと読み物なんで。ルパンの傑作選ですけど何か」
「いや、なんでもないです」
してやったりと思いました。何人もの先生にドン引かれましたが、誰も注意してくることはありませんでした。
(先生、生意気で本当にすいませんでした。反省しております)
今は本を少しずつ読む練習をしながら、読みやすいビジネス書だったりをちょこちょこ読んでいます。
長くなってしまいましたが、私の好きな本を一冊、紹介します。
『Winnie-the-Pooh クマのプーさん[新版]』
先ほど書いたラダーシリーズの1冊です。みなさんご存知のくまのプーさんの洋書版なのですが、英語で読んでやっとわかることがたくさんあります。(日本語訳するとよくわからない小ネタで溢れてるんです)
ちょっとプーさん!と笑えてきます。あれ、こんなに面白かったっけ?と。立ち戻って読んでみる、これが洋書の良さでもあります。
プーさんが詩を披露する場面があるのですが、その一部を。
木曜日まで続くのですが、(金曜日を言う前に止められます)なんだか、読んだときにほっとしたんです。
単語自体は中1で習うものばかりですが、どうにも上手く訳せないこの文章、訳したくないこの文章にぎゅっと心を掴まれるというか。
訳してしまえば何でもないただの言葉なのに。
大丈夫。
プーさんが放つ浅そうで深い言葉の数々が、そう思わせてくれました。
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本を読むのが苦手な私。
本が嫌いと言っている方の中には、読むのが苦手=嫌いになっている方も多いのかなと思います。
読む方法なんて、いくらでもあります。
電子書籍を利用して文字の大きさを変えたり、オーディオブックで聴いてみたり。いっそのこと絵本を買ってみたり。
本とは、読みたくなるもの。
ホントは、読みたくなるもの。
小さなしあわせは、そんな小さな一歩から始まる気がします。
KaiTO
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