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【35】着物記者歴30年のライターも驚く「究極のきもの」とは? 動画できました篇

「蚕から糸へ、糸から着物へ」プロジェクト!
《私たちのシルクロード》 第35回 動画できました篇

お蚕さんから糸を作り、染めて織って着物に仕上げる――この全工程をレポートした「蚕から糸へ、糸から着物へ」プロジェクト。
それは《私たちのシルクロード》でありました。

前回、第34回「山鹿集結篇」をアップしてから1ヶ月余り。大変お待たせいたしました。予告より遅れましたが、ようやく動画が完成いたしました。その間、新聞記事などにも掲載されましたので、併せてご報告いたします。

■私たちの思いを動画に

「明日の巨匠」のお世話にはなりましたが、女優さんやアナウンサーの方が語るわけでもない「自作自演」の約10分です。まずはどうぞご覧ください!


ポトンと落ちた雨の滴(しずく)。

スクリーンショット (7)

滴がたくさん集まって、勢いよく流れる川になった――。

スクリーンショット (8)

「私が育てた繭が、吉田美保子さんの織られた着物になったら・・・」
花井雅美さんの小さなつぶやきから始まったプロジェクトでした。

中島愛さんが加わってメンバーが決まり、それぞれの仕事によって、お蚕さんが繭となり、糸が引かれ、染めて、織られてゆく過程を、喜び合いながら見つめて、出来上がった「Blue Blessing」という名の着物。熊本の湧き水や清流をイメージして創作した着物ができあがりました。

動画冒頭の清流は、お蚕さんが育った「お蚕ファーム」の近くを流れる岩野川です。この情景に私たちの思いを託しました。

着ている着物にも思いを込めて

スクリーンショット (4)

上写真で左端の吉田美保子さんがお召しの着物は、吉田さん作「シャイニング フィールド」です。きれいな澄んだ色で、すがすがしい高原のイメージを織り成した着物です。帯も自作で、「おもちゃのチャチャチャ」シリーズの1作。丸や三角が弾む、締めているだけで元気が出てきそうな帯です。実は長襦袢の染めも、吉田さんが手掛けています。「あれ、そうだったの?」と思われた方は、ぜひもう一度動画をご覧くださいませ。

右端の安達が着ているのは、絽の色無地で、最後の方にリンクした「婦人画報デジタル」サイトに連載中の「着物問わず語り」に詳細を記していますが、ここではよく見えない帯あげが吉田美保子さんの作です。「どんなのかしら?」と思われた方も、ぜひもう一度動画をご覧くださいませ。

■強力な協力者

この動画を制作してくださったのは、前回でもご紹介した崇城大学芸術学部デザイン学科の吉井優作さん。甲野善一郎先生のゼミから推挙された「明日の巨匠」です。

「いやあ、けっこう大変でした」と振り返りながらも、初めて接する世界をよく理解し、私たちの思いを受け容れて制作してくださいました。

下の写真中央が吉井さんです。何年か後には、その名が広く知られる人物になっているので、よろしくね。

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また、この動画制作にあたっては、一般社団法人熊本県蚕糸振興協力会、山鹿・湯の端美術会ほか、お蚕さんのふるさと山鹿の方々からも有形無形のご支援をいただきました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

■新聞にも掲載されました!

前回の第34回で、山鹿での「Blue Blessing」お披露目会が新聞社の取材を受けたとご報告しておりましたが、2021年8月18日の「熊本日日新聞」朝刊に掲載されました!

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イメージカットとして、上に写真を掲載しましたが、「記事の大きさ」が伝わりますでしょうか。A4サイズに入りきらないほどの大きな記事にしてくださいました! 詳細は、以下の熊本日日新聞電子版をご覧くださいますようお願いいたします。

実はこの新聞記事、望外といえるほど多くのうれしい反響をいただいています。でも、それはね、分かるような気がします。インパクトのある大きな記事にしてくださった記者の猿渡将樹さん、上司デスクの方のご理解とご配慮、写真の撮り方、この大きな要因の2点に加えて、力説したい要因があります。下の写真をご覧ください。(ご本人の許可をいただいています)

熊日取材 (2)

「写真が語る」とは、このことではないでしょうか。安達のマシンガントークを全身で受け止める、熊本日日新聞記者・猿渡さんの後ろ姿。これまで着物の世界にはほとんど触れてこられなかったにもかかわらず、私たちの短い説明をじっくり聞かれ、音を立てるように理解してくださいました。

そうして書かれた記事本文の「みごとさ」といったら。

記事には私見ひとつなく、新聞記者の目で客観的に、必要な情報が、選び抜かれた言葉で、端的に表現されています。私ね、自分も書く仕事をしているから分かるのですよ。この方が、この文章を書かれるまでにどれだけの努力をされたか。「氷山の一角」のように、目に見える文章の背景に、見えない情報量と熱意がなければ、なかなか人の心に届きません。

私は、ここでひとつ「プロの仕事」を学ばせてもらったように思いました。

■再び語る

さて、これまでさんざん語り尽くしてきた「蚕から糸へ、糸から着物へ」プロジェクト!ではありますが、安達が「婦人画報デジタル」サイトで月に1度連載させていただいている「着物問わず語り」でも、本プロジェクトについて再び語りました。この日に着た着物のことについても言及しております。例によって長いので、お時間のある時にでもどうぞ!

そして、同連載の前の回に掲載した記事も、よろしければご高覧ください。小学2年生の子ども達が生活科の授業の一環で、花井さんの「お蚕ファーム」を訪ねたことをまとめたものです。お蚕さんを育て、理解しようとする子ども達の姿、また、指導する先生の姿勢にも胸打たれました。


■最後に気づいた「マジ神」

本連載の第11回で「マジ神の人々」と題して、花井さんの養蚕を支える強力な協力者の方々について書きましたが、ここ数日、私も「マジ神」に出会いました。「感じた」とでもいいましょうか。

今回お届けした動画は、当初8月半ばにはアップできると思っていました。しかし、動画制作に慣れない私たちのこと、ずれこんでしまいました。期日通りにできないのはフリーライターとしては致命的であると思い、noteの「つぶやき」欄で、お詫び申し上げ、見通しをお伝えしました。

その小さな欄に「いいね!」をいただき、また、思う以上のビュー数に達しました。これは叱責というより、都合良く「励まし」と受け取りました。それの、なんとありがたいことでしょうか。「もしかして、待ってくださる方がいらっしゃる」そう思うだけで心があたたかく、勇気百倍の気持ちになりました。

そして、動画制作の最後は、目に見えない後押しを受けたような気がしました。本記事第35回の冒頭に、雨の滴から始まった、川の流れの写真を掲載しましたでしょ。その大きな川の流れは、この連載を読んでくださった方々の、目には見えないご支援の思いで作られたのだなあと思って配置しました。この《私たちのシルクロード》は「旅の道連れ」に支えられてきたことを実感し、そこに「マジ神」を見たような気がしたのでした。

心より御礼申し上げます。

■なんと、次号予告!

「今回でひと区切りとなり、次に更新されるのはいつの日になることか。」
皆さま、そのようにお考えのことと思います。私たちもそのように思っておりました。しかし、ここで次号予告をいたします。

2021年11月頃。第36回「動画・英語&中国語版できあがり篇」(仮)をアップしたいと企画しています。「この動画は日本だけでなく、世界的にも価値あるものではないか」そんな声が聞こえました。(←誰?)

そこで、この動画の日本語字幕を、英語と中国語に翻訳した2バージョンを作成することになりました。強力な協力者を得て、これからその作業に取りかかります。アップ予定は11月頃ですが、遅れたらごめんね。

特に目新しいことをお届けする第36回ではないかもしれないけれど、それまでに起こった出来事などもご報告したいと思います。

と、いうことで、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

*「蚕から糸へ、糸から着物へ」プロジェクト《私たちのシルクロード》に関するお問い合わせは、下の「染織吉田」サイト内「お問い合わせとご相談」にご連絡をお願いします。


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