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第36話 怪談『すべては闇の中』(BJ・お題 万怪談)


(この話は、カードゲーム『万怪談』のリプレイです)


大掃除の話です。

とある家族が一軒家に越してきた。築二十数年の家です。庭付き。縁側みたいのがある。やや古い作りの家ですね。平屋でまあまあ使い勝手はいい、と言う感じの家があったので、買ってやってきた一家。親子それからおばあちゃんがいる、そういう五人家族のお家でした。

そこにしばらく暮らしていたわけなんですけれども、ある日、訪ねて来た、虚無僧と言うんですかね、べつに被り物はしていないですけれども、托鉢のようなことをいまだにやっているような地域だったんでしょうね。そういうお坊さんが来て、幾許かのお金をもらって、代わりに簡単な説教とかをするなんてことがあるらしいんですよ。そこに来たお坊さんが、

「おや、ちょっと悪い相があるね、このうちにはね」と。

何か嫌なことを言われるな、と。嫌なところに越して来ちゃったな、なんて思っているわけですけれども。

で、またそういうことがあるわけですね。同じ宗派の、若い人も年老いた人も来るんだけれども。特に老いた人が、

「奥に座敷がある。そこに悪い相があるね」

と言う。

これは、こういう風に言って、何かお金せびるためと思っていたそうなんですよ。夫婦でそういう話をしてた。ところが「いちばん奥の座敷だ」「いちばん奥の座敷だ」ということで、不思議なことにいつも決まって同じ場所なんです。

で近所に聞いてみると「うちはそんなことは言われたことない」と。この家だけなんですよ。しかも年配の人は、「奥の座敷」と指摘する。月に一回ぐらい来ます。


十二月頭くらいですね。托鉢僧ですから貧乏生活をして汚いわけですね。その中でもとりわけ年老いた感じの腰の曲がった人が来て、また言われるのかなと思ったら言われた。

「この家の、奥の座敷の床下に、よくないものが埋まっている」とはっきり言うんですね。

もうこれはまずいなと、さすがにそこの女性は思って、

「もう祓って行ってください。それなりのものをお包みしますから」

ということで、家の中に案内したんですね。もてなして、奥の座敷に行きかけたところで、

「うあああああ、わ、私は帰る」と、大慌てなんですよ。すごい形相になるんです。「とにかくどうにかなるだろ」

「いや、私たちではどうにもなりませんよ」

「いや、どうにかしろ。とてもじゃないが手に負えない」

と引き止める間もなく帰ってしまったんですねえ。


で、非常に後味が悪いな、なんて思っていたわけなんですけれども、そのうち托鉢が、なんかあったのか苦情が来たか、だんだん数がなくなって、ぱったり来なくなったんです。それで数年もすると忘れてしまった。

それで忘れてしまって年の暮れに大掃除をしたわけです。

今まで気味が悪くてというか、たまたま手をつけていなかった奥の座敷。その掛け軸をめくったところになんか小さな穴があいている。

あれー、穴が空いているのを掛け軸で隠してたんだな、と、何気なく手なんか入れてみる。すると布で包まれたものがあるぞと、取り出してみると、包帯でぐるぐる巻きの何か。気になって開きます。すると非常に小さな裸ん坊の小さな人形ですね。こけしみたいだけどちゃんと手足がありますね。

そのお腹の部分に爪で引っ掻いたような傷が沢山ついていたんです。それで思い出したんですね。「よくないものというのはこのことかなと」

でもよく考えてみてください。床下に埋まっている、って言ってましたね。じゃあ床下にも何かあるんじゃないかと。

畳を返して見ることができるようになっていたんですね。それを掘り返してみると、やっぱり包帯でぐるぐる巻きのものが一杯あるんですよ。で気になってほどくと、おんなじところに傷跡がある。次々見つかります。気持ち悪くなります。

丁重に巻き直して、例のお坊さんのいたところじゃないんですけれど、お寺に行って、何某かの供養は受けるんですけれども。形ばかりの供養で、本当に供養になったのかどうかとも思うんですが。


で、その後なんですけれども、新しくその家に子供が生まれましたが、与える人形、与える人形のお腹を爪で引っ掻いてしまうんですね。そうすると誰か必ずお腹を怪我するんですね。

ある日それがはたと止まるんですね。どうしたかと言うと、その人形を包帯でぐるぐる巻きにして床下に埋めると止まるということに気づいたんですね。


以来、そういう人形を次々と床下に埋めましたが、結局は引っ越してしまったという話でございます。


このように世間には理屈で説明できないことが山のようにあるのです。

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