見出し画像

あたし、小市民よーん(小市民ケーンと掛けてみたけどわかりにくい)


大阪の実家で、親のスネかじりまくって生きてた20歳くらいの頃、
関西では知る人ぞ知る、手相と顔相の占いの先生に観てもらったことがある。先生のもとを訪れた人みんなが口を揃えて「すごい」と言うので、気になって予約してみたのだ。普段は人気でなかなか予約が取れないらしいが、ちょうど運良くキャンセルが出たとかで、電話をしてその日のうちに滑り込めた。


住所を頼りに向かった先は、大阪・ミナミのど真ん中にある、ラブホテルじゃないのにやけに卑猥な外観のビジネスホテル。もうちょっとワット数上げたらいいのにと思うくらいに薄暗い廊下を進んだ突き当たりに、指定の部屋があった。インターホンを鳴らすと、中から「どうぞ」とおっさんの野太い声。おそるおそるドアを開けたら、「そのおっさんのにおい」としか言いようのない、煮詰まりまくった重めのスメルが部屋の中からぼわんと漂ってきて、僕はおちょぼ口で最低限しか息を吸わないようにしながら「今日はよろしくお願いします」と超高速早口でなんとか挨拶。先生は、汗でびっちゃびちゃの西田敏行みたいなオッサン。ちなみにこの冬一番の寒い日でした。

席に通される。

先生は僕を見るなり開口一番、

「あんたはまだ眠ってるな」

と、汗をふきふきしながら言い放った(声が大きくてマジ飛沫)。

そして「でも、あんたは目が覚めたら、僕と一緒の人種やで」 と、先生は続けた。

「あんたはいずれ東へ行く。東の方が合ってる。上京してから人生が始まる」
「あんたは小説とか物語とか、文章を書くのが向いてる」(おっさんも小説を書いているらしく、占いは「ネタ集めにやってる」って言ってた)

質問もしてないのに立て続けにそう言われて、全く思い当たる節のない僕は「はぁ」とか「へぇ〜」とか、ぼんやりした返事をしながら話を聞いていた。でも、改めて思うとこわい。なぜなら、言われたことが驚くほど今の自分に当てはまってるから。やっぱりあの先生はすごかったんやなぁ(いろんな意味で)。

でも、先生から言われたことで、納得できずにずっと引っかかっていた言葉がある。

「あんたは小者(こもの)や」

というひと言だ。

「あんたは大きい事はできひん。小さく生きる。小市民や」
、と。

その時は、
ふん、何言うとんねんおっさん! あたしは有名になる人間なんやで、有名になって、紅白の審査員で呼ばれるんや!(←今考えると謎すぎるが、当時は本気でそう思ってた)
小市民なわけあるかい!!! って、心の中で反論した。

でも、あれから、ひとつ、またひとつと、その通りになっていくおっさんの予言。
そうなるたびに、
「あのおっさんはあたしのことを小市民呼ばわりしたからなぁ、予言が当たったんじゃなくてきっと偶然やな」
と、おっさんの占いをなんとか必死に否定した(ちなみに、紅白の審査員はとっくの昔に諦めました)。

でもね、最近つくづく思うのです。

あたしって小市民やわ〜、って。

占星術師のマドモアゼル・愛先生の「月の欠損」という考え方を当てはめてみても、
月星座が射手座の僕は
「大きいことをしようとするが、ことごとくできない」
という診断になるそう。

あたし、有名にならなきゃ、って、なーんか思い込んでたかも。これ観念。
もっとできる、もっとやれる、って。それも思い込んでたマジ勘弁。(ここヒップホップ調でどうぞ)

あたしって、悲しいかな、「小さいこと」しかできないのね。

「いやkaiさん十分広げてるやん! 大きく行動してるやん!」って思わはります?

いやいや、自分の中では近所の公園を走ってる気分なの。
あたし、国立競技場で両手挙げながら大歓声のなかグリコ並みに走れるつもりでした。

でもやっぱりそんなの無理なのね。息が続かないし、なーんか、できない。ほんと、続かないし、できないの。
「はて、そもそもなんであたし有名にならなきゃいけないんやっけ?」って、やっと最近我に返りました。

誰かに認めてもらいたかった?
親を喜ばせたかった?
自分で自分を褒めたかった?

その全部でもあるような気もするし、そうじゃない気もする。

ひとつ原因があるとしたら、まぁ、過去生やろうね。過去生の記憶。カルマ。
有名にならなきゃって必死だった、もしくはすでに有名だった過去生でもあるんでしょう。
その記憶が、今世の僕の思考回路をねじ曲げる。
「こうしなきゃ」は、たいがい過去の鎖。


あたし、特別な人生はいらない。

特別な事はなくとも、毎日が穏やかで、平和で、
ちょっとした事で嬉しくなったり、寂しくなったり、
何かで感動して泣いたり、
イレギュラーな事でちょっと慌てたり、
でもまたいつもの感じに戻って。

愛する人と、美味しいねぇ、とか、眠たいねぇ、とか、言い合って、
たまに噛み合わなかったり、でもやっぱりしっくりきたり、

「ありがとう」と「ごめんなさい」と「大丈夫?」と「よかったね」の、繰り返しの毎日。


そういう毎日がいい、

その延長に、あたしのやるべき事が、負担にならない程度の量、取り組めれば十分。


そんな風に思うの。


20年くらい経っちゃったけど、おっさんに言われた事、ほぼ全部当たってたということをここに認めます。

紅白の審査員にはなれなかったけど、あたしは今、幸せです。(魔女宅風に)


新しい時代、いよいよ始まります。

(エンディングは荒井由実です)



2020. Dec
Photo & Writing by kai

昨年末、kaiのオンラインサロンの会員さんへの会報のために書いたエッセーを掲載しました。



■ kai / official web site
https://k-a-i.info/

■ kai / Instagram
⑴ kai_kamakura / 活動、告知など
⑵ k_a_i_journal / パートナーKenjiとの鎌倉暮らしの日々

■ 僕のパートナー・久嶋健嗣のnote
https://note.com/kenjikushima




kai をサポートしてくださる心優しいあなた様に、とびきりの幸せと喜びが押し寄せるよう、魔法をかけますね♪ ルルルルルルルルルルルルルルルルル.......♪