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農業は究極のミスコンだ

長野に行って、お手伝いというにはあまりにも力になれないながら農業体験をしてきた。

朝は4時に起きて夜明けの5時からレタスを収穫。朝ごはんを青空の元で食べながら、倉庫に運ばれるレタスを眺める。

コンテナに綺麗に並べられたレタスたち。こうやって出荷されるんだな。大事に並べられて…そう思って写真に収めていた時、農家のおじさんのひとりから衝撃的な言葉をかけられる。

「あ~これはボツのやつだな」

ボツ?!この朝日に照らされてキラキラしている「美味しそうな」レタスが?!

ひとつを手に取って見せられた

─ほら、ここ汚れてる。(写真真ん中の切り口のところ)これがダメ。

これだけ?!これだけで、出荷する時点でアウトなの?私は驚きを隠せなかった。なんせ、どのレタスも普段見るものよりも「明らかに美味しそう」だったから。

他にも、「切り口がナナメ」なのはだめ。
「葉に穴が空いてる」からダメ。
「小さいサイズは規格外になる」から今日の出荷先にはダメ。

いろんな理由で「避けられた」レタスがそこには集まっていた。

─ほんのわずかと思うだろ?でも実際スーパーで買う時は、ちょっとでも綺麗なヤツを選ぶじゃん?そういうことなんだよ。

グサッときた。

今美味しそうだと見ている私は農業体験をした後だから勝手に生産者目線でレタスを見ていた。過酷な暑さの中で、たくさんの人が手塩にかけて育てたレタス。わたしも微力ながら手伝っただけで我が子のように可愛くて仕方がない。
土から作り、苗を植え、水をやり肥料をやり、そうして育てても半分はうまく成長しない。

だから当然多少の傷があろうとも、出荷できるように成長できたレタスたちは立派に見える。その中でも値段がつくのは特に大きく成長したもの達のみ。そんな選ばれしレタスはどれも誇らしい。当たり前だ。

一方で、ここに来る前の買い物をする私。虫がついてるのは絶対に嫌。生で食べるものだから綺麗な方がいい。ちょっとでも傷がついてるとなんか嫌。葉っぱに穴が空いていたり汚れに気づいたら別のものを手に取ってまたチェック。なるべく新鮮なものを。なるべく綺麗なものを。─完全に審査員目線。

選ぶ時はそこに並ばなかったレタスのことなんて気にもとめない。並んでいるレタスの中で評価をし、見比べる。それもまた至極当たり前なことだ。店頭に並ぶまでの過程を見たこともない人に、ここに来るまでに捨てられたレタスのことを想像しろ!と言うのは無理がある。

だから、「選ばれなかった」レタスを見た時に私はショックを受けた。時々"いわくつき〇〇"をみて「この程度なら全然買えるのになんで値引きされちゃうんだろうね」なんて思っていた感じとは比べ物にならないくらいの、農業界の厳しさを目の当たりにした衝撃はあまりにも重かった。

綺麗が当たり前。少しでも欠点があればつつかれる。減点される。そして並べられたもの同士で比べられる。この感じ人間で言うと…そう、ミスコンみたいだと思った。学祭が近づくこの時期に毎年各大学で候補者が発表されて、オフィシャルのツイッターやインスタがそれぞれ開かれる。と同時にたくさんの人の意見がそこらじゅうに飛び出してくる。

何番がかわいい。こんな特技がある。彼氏がいる。男遊びが。性格悪いらしい。そこまで可愛くない。私結構推してたんだけどがっかりだなー。

情報が増えれば増えるほど、誰かの評価を上げるために、誰かの評価を下げる基準ができる。

レタスもそうだ。価値をあげるために、大きさの基準を設ける。すると、必然的に「基準から外れる」レタスが発生し、それらの価値は下がる。今までなら同じレタスとして売られていたはずのものが、価値のあるものと無いものにわけられる。残酷だが現実で、その方が生産者に利益がでて、購買者にとっては都合が良くなる。

なんて厳しい世界なんだろう。
人間よりも厳しいかもしれない。そこには「値段」が発生するから。人間のミスコンにお金の価値はつかないけれど、レタスにははっきりと一つ一つに値段がつく。覆されない評価。過程は考慮されることはない。そして、沢山いいものが出来た時は「安い値段がつく」というまさかの革命つき。こんな大富豪みたいなルールあっていいのか。

もっと、農業というものづくりの仕事に価値が見出されるべきだ。こんなに愛をこめて育ててもらって選ばれて並んでいるスーパーでさらに厳しい目で選んだ野菜たちを美味しく食べてあげなきゃ、野菜が報われない。厳しい審査戦争に勝ったミスコン優勝者が冷蔵庫で腐るなんてそんな最期は可哀想すぎる。

レタスひとつとってそうなのだ。
私たちが食べている食べ物は、みんなそうやってお皿の上にやってきて、口に入ったら次は私たちの体をつくるものなのだ。

なんて尊いんだろう。
いただきますに泣いてしまいそうだ。
ちょっと考えすぎな気もするし、だんだんバカっぽくなってきたけど、ひとつ言えるのは

大切に育てられた食べ物はとびきり美味しい!

朝日に照らされるレタスに囲まれながら食べた採れたてBLTサンドはなんの味付けも無かったのに、今まで食べたどのサンドイッチよりも美味しかった。本当に、美味しかった。
食べることが好きなわたしが言うんだから、間違いない。

今日あなたが食べたモノは、誰がどんな風に育てたのでしょう。ここまで運んできた人がいて、並べた人がいて、作ってくれた人がいて。

そこに、私たちはお金という価値を持って対価を払っているのだけれど。─それって本当に適正なんだろうか。

少しでも安いものを求めている普段の自分と矛盾した考えを持たざるを得なかった。それくらいびっくりした朝だった。

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