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記者が挑んだ あばら家リフォーム【12】きこりと化した1カ月
50年もたてば苗木だって高さ10メートル級の大木に育ちます。2020年4月のDIYスタート当時、あばら家はまさに、そうした巨木に囲まれていました。
いいことばかりではない樹木群
仙台平野では屋敷林の「居久根(いぐね)」が有名ですが、家の周りに大きな樹木が立っているのはいいことばかりではありません。事実、あばら家の場合、長年にわたって屋根に降り積もった落ち葉が腐葉土となり、雑木まで生えていました(第6話参照)。枯れ枝もたくさん落ちてきて、その重さで屋根瓦が破損。雨漏りの原因となったとみられています。
リフォームも大事だけれど、この木々をどうにかしなければ―。伐採を決意しましたが、すぐに問題が立ちはだかりました。費用と、時期です。
伐採するにも人件費がかさむ恐れ
乾いた状態の木片ならば軽いですが、生木、しかも大木となればかなりの重量です。根元から切る方法だと、倒れる先に建物や電線があったら傷つけてしまい、損害賠償を迫られることにもなりかねません。このため、大木であればあるほど道路を封鎖したり、リフトの付いた重機を手配したりする必要があり、人件費がかさんで高額になるのだそうです。
あばら家でも電線を引き直す際、東北電力が邪魔な木を切ってくれたのですが、根元から三つ股になった木のうちの1本をカットしただけ。同じ木なのだからと、ついでに切ってくれるよう頼んだのですが、十数万円取られました。周辺では、巨木を切ってもらったところ100万円近い請求があったという話も聞こえてきます。
伐採する時期も配慮が必要
伐採は時期も大切です。当たり前ですが木は春に葉を付け、秋にその葉が枯れます。つまり夏場の樹木は葉っぱの分だけ重くなるし、処分する手間も増えるということです。枝一つ程度ならそう変わりませんが、大木ともなればその重さはばかになりません。このため伐採は葉を付ける前の冬にやるのがセオリーなのだと言われます。
それじゃあ、ということで、冬枯れを待って自分で伐採することに。もちろん、樹木の伐採なんて知識も技術もありませんから、網戸の時(第3話参照)と同様、取材で専門家に聞いてみることにしました。所属する生活文化部は、創作活動をしている方に愛用の道具を通して作品世界について語ってもらう「創作現場 私の相棒」というコーナーを担当しています。チェーンソーアートに取り組んでいる方にお話を伺いました。
「先っぽは風と体重でぐらぐら」
チェーンソーアートにもさまざまなやり方があるそうですが、取材した方はまず樹木の伐採を請け負い、切りだした丸太を刻むという創作スタイルです。ロープを使ってするすると上っていき、樹木を上から順に切っていく「玉切り」という方法を採用していました。
「先っぽに行けば木の直径は10センチもないよ。風と体重でぐらぐらだよ」
…。まねをするのは、すぐやめました。
玉切りでなければ10メートル級の大木など、どうにもなりませんが、比較的背の低い木ならば根元から切る方法で倒せます。建物など傷つけたくない物の反対側に「受け口」という切り込みを入れたら、その逆からチェーンソーを当てていくやり方です。
「追い口」と呼ばれる、この逆側からの切り込みを10センチほど入れると、次第に「メキッ」という音がしてきて、木が受け口側に倒れていきます。倒れる方向に人や物がないか確認しながら、慎重に切断を続けます。
チェーンソーに悪戦苦闘
「ボキボキボキボキッ!」。木が倒れる時は本当に大きな音がします。その後に「ドーン!」と派手な音が響いて地面に転がります。あばら家がある辺りは樹木が林立しているので、倒れる際に他の木にもたれかかってしまうこともありました。扱いが粗雑なためチェーンがたるんでしまったり、エンジンの熱でやけどしたりと悪戦苦闘した末に、低木は葉が生える前の1カ月ほどであらかた片付けることができました。
伐採した樹木も無駄にできません。チェーンソーでさらに細かくカットし、ピザ釜(第5話参照)のまきにしていきます。ピザを1回作ると、だいたい一束のまきを消費します。まきはホームセンターで買うと一束300~1000円と結構いい値段がするので、これだけ大量に木が生えているのならば使わない手はないと思うのでした。
周りには「究極の地産地消だ」と言い張っていますが、けちなだけかもしれません…。
最後に伐採の様子を動画でご紹介します。チェーンソーアート、そのうちやってみようかな。(生活文化部・桜田賢一)
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