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記者が挑んだ あばら家リフォーム【3】「廃屋からの脱皮」

キツツキが開けた穴、見たことがありますか?

都市部に暮らしていると、めったにお目に掛かれませんよね。それが、山あいにあるとはいえ、ウチのあばら家の軒下や外壁にはキツツキの穴が無数にありました。東日本大震災後、それだけ長い間、人が寄りつかなかった証しなのかもしれません。(生活文化部・桜田賢一)

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業者さんの力で天井や床、トイレがきれいに生まれ変わったウチのあばら家。ただ、これらはいずれも屋内のことです。屋外に目を向ければ、キツツキの穴はもちろん、塗装がはげた外壁が目に付き、青いトタン板もむき出しのまま。廃虚マニアの方々が好みそうな外観をさらしています。

コロナ避け自然へ?

経費節減のため、ここからは自分の力で再生しなくちゃいけません。2020年4月末に業者さんから引き渡しを受けると、ゴールデンウイークを利用して早速、素人リフォームをスタートさせました。

世は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言下。あばら家付近は普段、人けがほとんどないのですが、その頃は車やバイクが近くの道路を引っ切りなしに行き交うようになっていました。陽気に誘われて外出したのはいいけれど、密集が懸念される都市部を避け、あばら家近くの蔵王山系を目指したのでしょう。あれから1年が過ぎた今も、天気のいい日は多くの車両が通り過ぎます。ウイルスは人の流れを確実に変えました。

想像以上に手強い荒れ地

さて、リフォームの件に戻ります。まずは建物を取り囲むささやぶや雑草などの撤去です。

費用圧縮が至上命令ですから、とりあえず100円均一ショップで除草剤を購入しました。あばら家は山の中にあるので土地だけはやたらと広く、必要量をそろえたら30本以上に。最寄りのお店の棚から除草剤が消えるほどの量でした。なのに、効き目はほとんどありませんでした。何年も人の手が入っていない荒れ地は、想像以上に手ごわい相手です。

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仕方なくホームセンターで電動草刈り機を入手。さすがに100均の除草剤100本分以上の値段がするだけあって、ささも雑草もみるみるなぎ払っていきます。ところが、調子に乗って地面すれすれまで刈っていたところ、地面から飛び出た石に刃が当たって回転軸がゆがみ、たった数時間で壊れてしまいました。

後で知りましたが、こういった荒れ地では飛び石の恐れもあるため、金属製の丸刃より樹脂製のひもを回転させる方式の方が安全な場合があるそうです。泣く泣く機械を買い直し、ひもも追加購入し、数日間かけて何とか前庭をきれいにしました。

ぐらぐらと揺れるはしご

続いて外壁です。

50年近くも風雨にさらされ続けた板壁は、塗装が完全にはげ落ちた状態です。そこで外壁専用の塗料とローラー、はけで東西南北の4面全てを塗装。高所は柄の長いローラーでも届きません。5メートル級のはしごを用意し、塗料を付けたはけを口にくわえてはしごを上り、塗っては降り、塗っては降りを繰り返しました。ぐらぐらと揺れるはしごの上での作業は恐怖でしかなく、ちょっとした高所恐怖症になりました。

廃屋から山小屋に昇進

次は「青色」を取り除く作業です。

古い家はトタン板が使われているケースが多いものです。ただ、あの青色は廃屋っぽさを余計に醸し出すので、青い雨戸を外し、青い軒も壁と同じ茶色に塗りました。なぜか青い繊維が用いられていた網戸も、今風の黒い繊維の物に張り替えました。

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所属する生活文化部の担当の一つに、さまざまなトピックを生活者視点で扱う「+W」という紙面があります。そこで網戸の張り替えをテーマに記事を書いたことがあり、取材にかこつけてホームセンターで習った張り替えテクニックが生きました。

やぶと化していた庭を整え、外壁を茶色に再塗装。廃虚っぽさにつながる青色を排除したことで、廃屋から山小屋くらいには昇進した気がしました。

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しかし、キツツキの穴、あれだけは直せませんでした。もう、はしごに上りたくなくて…。

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